昇進とは? 昇格との違いやメリット、昇進する人の特徴を解説
収入やモチベーションのアップにつながる昇進。なかには、昇進を目標に仕事に邁進している人もいるのではないでしょうか。一方で、チャンスがあっても昇進したくないと考える人も増えているようです。
今回は、昇格との違いやメリット・デメリット、昇進できる人の特徴など、昇進を目指すにあたって知っておきたい基礎知識を徹底解説。あわせて、昇進しないことで生じるリスクや昇進を断る場合の伝え方についてもお伝えします。
<INDEX>
昇進とは?
昇進と昇格の違い
昇進の基準
昇進のメリット
昇進のデメリット
昇進できる人の特徴
昇進するためにやるべきこと
昇進のあいさつのポイント
昇進祝いのポイント
昇進しないことのデメリット
昇進を断る場合の伝え方
まとめ:昇進を断る場合は、転職を考えるのも選択肢の一つ
昇進とは?
昇進とは、社内で成績や能力を評価されて、職位が上がることを指します。職位が上がると、社内での地位が高まり、より責任の大きな仕事や部下の管理・育成などを任されるようになります。また、職位が上がるにつれて給与も上がるのが一般的です。
職位の具体例
なお、一般的な企業には次のような職位があり、数字の順に地位が上がっていきます。
1.一般社員
2.主任
3.係長
4.課長
5.次長
6.部長
7.本部長
8.常務取締役
9.専務取締役
10.代表取締役社長
このうち、係長または課長より上の職位を管理職と呼びます。
昇進の目的
企業が社員を昇進させる目的はいくつかあります。一つは、昇進によって待遇を上げてより重要な仕事を任せることで、やる気のある社員のモチベーションを高めることです。さらに、努力して成果を出した社員を適正に評価する機会を作ることも重要な目的です。
そのほか、社員のまとめ役となる管理職を育てる、優秀な人材の育成につなげて競争力をアップするといった目的もあります。
昇進と昇格の違い
昇進と似た言葉に「昇格」があります。昇進は職位が上がることであるのに対し、昇格は等級が上がることを指します。昇格の仕組みがある企業の多くは、職能資格制度という等級制度を取り入れています。
職能資格制度では、社員の能力のレベルに応じて、1級、2級、3級……と等級づけを行います。等級が上がると、給与が上がるのが一般的です。ただし、等級が上がって昇格しても、職位が上がることはあまりありません。
昇進の基準
社員を昇進させるかどうかを判断する際の基準は、企業によって異なります。ここでは、一般的な昇進の基準の例を紹介します。
人事評価
人事評価とは、社員の能力や実績、働きぶりなどを評価する仕組みのこと。評価の項目は、企業によってさまざまです。評価結果は、昇進のほか、ポジションや報酬の決定にも使われます。
目標の達成度
企業によっては、目標管理制度(MBO)における目標の達成度を、昇進の基準とする場合もあります。目標管理制度(MBO)とは、社員が自ら目標を設定し、上司とともに目標達成に向けたプロセスを管理する仕組みです。
試験・面接
社員の昇進を決めるにあたって試験や面接を実施する企業もあります。対象となる社員に求められる能力や資質は職位によって異なるため、試験や面接の内容も職位ごとに異なります。よくある試験のスタイルは、適性検査や小論文です。
勤続年数
「入社3年以上」といった勤続年数が昇進の基準になる場合もあります。年功序列制の企業によく見られる昇進の要件です。
上司からの推薦
ほかの基準を満たしたうえで、さらに上司が書いた推薦状が求められる場合もあります。推薦状には、部下の実績や長所、部下がその職位にふさわしいと考える理由を記載するのが一般的です。
昇進のメリット
社内で昇進して出世することは、ビジネスパーソンにさまざまなメリットをもたらします。主な昇進のメリットを見てみましょう。
給与額がアップする
昇進すると、基本給がアップするのが一般的です。職位によっては、基本給のアップに加えて役職手当が付くこともあります。
権限が大きくなる
昇進して主任や管理職になると、より裁量権が大きくなり、自分で業務の進め方や対応方法を考えて判断・決断する機会が増えます。それまで些細なことで上司の判断を仰がなければいけないことにストレスを感じていた人は、ぐっと仕事を進めやすくなるでしょう。
経験値やスキルが高まる
昇進すると、これまで経験する機会のなかった業務や大きなプロジェクトを任せられるようになるため、仕事の幅が広がります。また、業務を通して経験値が上がり、マネジメント力や部下を育成する能力、社内外のさまざまな関係者を相手に交渉や根回しをするコミュニケーション力など、幅広いスキルが高まることもメリットの一つです。
やりがいが増す
権限が大きくなって仕事の幅が広がった結果、成果を上げたときの達成感が大きくなり、今までより仕事にもやりがいを感じやすくなることも大きなメリットです。さらに、やりたいことにチャレンジできるようになったり、自分が育てた部下の成長を実感できたりと、新たな仕事の楽しさを発見できるかもしれません。
昇進のデメリット
昇進にはさまざまなメリットがある一方、職位が高い立場ゆえの苦労や大変さもあります。代表的な昇進のデメリットを紹介します。
責任とプレッシャーが増す
職位が上がると、権限が増えて仕事を進めやすくなりますが、そのぶん責任とプレッシャーが増すのも事実です。業務を最後まできちんと遂行しなければならない、業績を上げなければならないといったプレッシャーに加え、部下の仕事へのモチベーションを維持し、適切にフォローして育成していかなければならないという責任も生じます。
特に部署やチームの責任者である管理職になると、部下がミスをした場合には責任をとらなければなりません。なかには責任とプレッシャーの重さに耐えられない人もいるでしょう。
プライベートと両立しにくくなる
職位が上がると、より重要な仕事に関わるようになって、会議や社外の人とのミーティング、研修などに参加する機会が増えます。ときには緊急のトラブル処理に対応しなければならないこともあります。また、部下を持つ立場になれば、部下のフォローやサポートに時間をとられることもあるでしょう。
業務時間が増えた結果、家庭との両立がしにくくなったり、友人知人との交流や趣味の時間をとりにくくなったりすることも出てくるでしょう。
昇進できる人の特徴
昇進する時期が早いほど生涯年収が高くなることを考えると、「少しでも早く昇進したい」と考える人もいるはずです。ここでは、一般的に昇進しやすい人に見られる主な特徴を紹介します。
責任感とリーダーシップがある
特に多くの部下を束ねて管理・監督していかなければならない管理職にとって、責任感とリーダーシップはもっとも求められる要素です。上司の指示を待って言われた通りのことだけをする受け身な姿勢では、リーダー的な立場は務まりません。
一度引き受けたことは最後まできちんとやり抜くという意思の強い人や、チーム内で積極的に発言や提案をして率先して業務を進めていく人は、昇進の候補として推薦されやすいでしょう。
仕事に対する意欲が高い
昇進して職位が上がるということは、経営を担うトップ層に近付いていくということです。当然ながら、役職が高い人ほど視野が広く、仕事に対して意欲的な人が多い傾向にあります。上位の管理職は将来の幹部候補でもあるので、自分で考えて主体的に動ける人や、新しい事業のプランやビジョンを持っている人ほど高い職位に昇進しやすいのは、自然なことといえます。
決断力がある
管理職やリーダー的な立場になると、業務を進めるなかで大小さまざまな判断や決断をしなければならない場面が増えます。判断に迷ったり必要以上に時間をかけたりすれば、業務の進捗に影響し、部下に「頼りない上司」という印象を与えるかもしれません。的確に判断し、スピーディーに決断できることが有能なリーダーの条件といえるでしょう。
コミュニケーション力が高い
一般社員にとっても、周囲の人と円滑に関係性を築くスキルは必須です。しかし職位の高い社員は、社内外のさまざまな関係者と調整や交渉をしたり、トラブルに対処したりする機会も多いため、一般社員よりも高度なコミュニケーション力が求められます。また、リーダーや管理職として部下をまとめていくためには、相手の立場を考え、その意見に耳を傾けられる協調性も欠かせません。
昇進するためにやるべきこと
では、できる限り早く昇進するためには、どんなアクションを起こすべきなのでしょうか。
昇進に必要な資格やスキルを身に付ける
もっとも現実的でチャレンジしやすいのが、昇進に必要な資格やスキルを身に付けることです。まずは職場の人事評価制度を確認し、昇進の条件になっているのに自分が持っていない資格やスキルがあれば、取得を検討してみましょう。
仕事で成果を出す
昇進の基準の一つである人事評価で良い結果を得るには、スキルを高めて熱心に仕事に打ち込むことはもちろん、やはり目に見える成果を出すことが重要です。そのためには、会社や上司から何を求められているかを把握し、目標達成に向けて業務を計画的に進めていく必要があります。
職場で信頼関係を築く
より高い職位にふさわしい社員と認められるためには、人望も必要です。上司にも部下にも信頼してもらえるように、積極的にコミュニケーションをとって、良好な人間関係を築きましょう。昇進している人の行動や言動、仕事の進め方を真似してみるのもよいでしょう。
昇進のあいさつのポイント
なお、スキルや成果が評価されて昇進が実現した場合には、社内の関係者にあいさつをするとよいでしょう。朝礼などの場でチームや部署のメンバーの前でスピーチをする際には、「昇進の決定や評価への感謝」「新しいポジションでの目標」「メンバーへのメッセージ(協力のお願い)」の3点を盛り込むとまとまりの良いスピーチになります。
昇進祝いのポイント
同僚や上司、取引先の担当者が昇進した場合には、直接またはメールでお祝いの言葉を伝えましょう。加えて、昇進祝いの品を贈るのもおすすめです。相手との関係性や役職に応じて、好きなものや仕事で使えるものを選ぶとよいでしょう。
昇進しないことのデメリット
一方、近年では若い世代を中心に「昇進したくない」と考える人も増えているようです。内閣府が20代~60代の男女を対象に実施した「仕事での昇進」に関するアンケート調査によると、20代の時点で管理職につきたくないと思っている(思っていた)人の割合は、男性では56.3%、女性では82.3%でした。
しかし、企業に勤め続けながら管理職のオファーを断り、昇進しないままでいることにはリスクも伴います。昇進しないことでどのようなリスクが生じるかを紹介します。
※出典:内閣府男女共同参画局「令和4年度 新しいライフスタイル、新しい働き方を踏まえた男女共同参画推進に関する調査報告書」( https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/lifestyle_r04.html )
給与が上がりにくくなる
昇進のメリットの項目で解説した通り、昇進は昇給のチャンスです。昇進を重ねて職位が上がることで、年齢とともに給与額はしだいに増えていきます。昇進を断れば、給与が上がりにくくなるうえ、人事評価の結果によっては下がることもあるかもしれません。
将来の失業リスクが高まる
昇進を望まない人は、出世のために必死で成果を出そうと努力している人に比べるとスキルアップのスピードが遅くなりがちです。場合によっては、会社への貢献意欲や成長の可能性が低い人材とみなされ、企業が人員削減を決定した際の対象になる可能性もあるかもしれません。
転職しにくくなる
昇進を避け続けると、将来、転職しにくくなることにも注意が必要です。年齢を重ねているのに役職や管理職経験がないと、応募先の採用担当者に、スキルが低く、マネジメント能力を備えていないのではと判断される場合があるからです。
昇進を断る場合の伝え方
昇進のオファーを断る際には、適性や家庭の事情といった「昇進を望まない理由」を明確に伝えることが大切です。ただし、一度昇進を断ると、今後は二度とチャンスが訪れないおそれもあります。「今は昇進したくないが、将来、状況が変われば昇進したい」という場合は、オファーを断る理由や事情とともに、いつかはチャレンジする意思があることをしっかり伝えましょう。
まとめ:昇進を断る場合は、転職を考えるのも選択肢の一つ
昇進すると、収入がアップする可能性があるほか、権限が大きくなって仕事を進めやすくなる、仕事の幅が広がってスキルが高まる、やりがいが増すといったメリットがあります。昇進のチャンスをつかむためには、まずは日々の業務としっかり向き合って経験を積みながらスキルを磨いておくことが大切です。
ただ、昇進すればするほど責任が増すうえ、管理職にはマネジメント力や部下を育成するスキルも求められるため、自分には向いていないと考える人もいるかもしれません。昇進のオファーを断る場合は、それを機に転職を考えるのも選択肢の一つです。昇進のメリット・デメリットを理解したうえで、自分に合ったキャリアを選びましょう。