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死んでも甦るのがゴーストだ!公開40周年「ゴーストバスターズ」が大ヒットした本当の理由

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1984年12月02日 映画「ゴーストバスターズ」劇場公開日(日本)

レイ・パーカーJr.による主題歌「ゴーストバスターズ」の貢献


映画『ゴーストバスターズ』が公開されて、はや40年。シリーズ最新作『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』がアニバーサリーイヤーに花を添えたのは記憶に新しいところ。それにしても、本作がこんなにも長い間、愛され続けるとは思ってもいなかった。理由はいろいろと考えられるが、そのひとつとして挙げたいのが、レイ・パーカーJr.による主題歌「ゴーストバスターズ」の貢献だ。

40年前の1984年はロックナンバーを集めた映画のサントラが空前の大ヒットを飛ばしていた時期。この年のビルボードの年間シングルチャートのトップテンには、じつに映画絡みの4曲がランクインしている。

プリンスの「ビートに抱かれて」(1位)は『プリンス / パーブル・レイン』で使用され、ケニー・ロギンスの「フットルース」(4位)は同名映画の象徴であったし、フィル・コリンズの「見つめて欲しい」(5位)は『カリブの熱い夜』をドラマチックに盛り上げた。これらに続き、レイ・パーカーJr.の「ゴーストバスターズ」は年間9位につけている。

おそろしくキャッチーな “ゴーストバスターズ!” というチャント


この曲が面白いのは、おそろしくキャッチーであること。歌メロがキャッチーなのは、上記のいずれの曲にも当てはまる。しかし、「ゴーストバスターズ」の場合は少々異なる。この曲で何よりもキャッチーなのは、メロディではないコール&レスポンスの、レスポンスの部分、すなわち “ゴーストバスターズ!” というチャントだ。もしもこの曲を知っている友人たちとカラオケに行く機会があるなら、試しに歌ってみて欲しい。友人たちが大声を上げるのは、確実にこの部分だから。

これが意味するところは、“わかりやすさ” だ。そして映画『ゴーストバスターズ』もまた、わかりやすいほどわかりやすかった。オバケは怖い、誰かに退治して欲しい、そんなときにオバケ退治の専門家チームが現われて時の人となる。これがコメディとして描かれていた。

日本でも大ブームを巻き起こした「ゴーストバスターズ」


そもそもハリウッド製のコメディは日本ではウケないというのが定説だ。アメリカンジョークは日本人には理解しづらいし、それを字幕で味わってもピンとこない。必然的に、日本では公開規模が小さくなり、アメリカほどの大ヒットにはいたらない。今では名作と呼ばれているコメディ『アニマル・ハウス』や『ブルース・ブラサース』にしても、公開時の本国の熱狂に比べて、日本ではイマイチ振るわなかった。

ところが、『ゴーストバスターズ』はアメリカと同様に日本でも大ブームを巻き起こした。アメリカ公開は1984年6月で、その大ヒットと歩調を合わせるかのように、主題歌はチャートを駆け上がり、こちらもヒットを飛ばす。日本での公開は12月だったが、時折しも『ベストヒットUSA』全盛期。アメリカでこんな曲がヒットしている!… という情報は夏の時点で伝わっていたし、12月にはそれが隅々にまで浸透していた。この主題歌の効果は大きい。結果、40億円を超える配給収入を計上。これは『ブルース・ブラザース』の5倍以上の成績だ。

余談だが、主題歌の日本でのヒットを受けて、日本語のカバーバージョンがつくられるのは昭和にはよくあったこと。当時のアイドル、渡辺めぐみは、この曲を日本語詞でカバー。片岡鶴太郎は今発表したら炎上確定の日本語詞で、「ゴーストブスターズ」(注:“バス”ではない)というとんでもない曲を生み出した。

マシュマロマンをはじめとするゴーストたちのどこか愛らしいルックス


映画に話を戻そう。もちろん、大ヒットしたのは主題歌の影響力だけではない。VFX大作としてのわかりやすさも功を奏した。人気キャラクターとなったマシュマロマンをはじめとするゴーストたちのどこか愛らしいルックスは主題歌に匹敵するほど印象に残る。ゴーストはホラー映画の定番だが、このジャンルもまた日本では大ヒットしづらい。

しかし、本作はコメディの要素が大きかった。落ちこぼれの科学者が奮起してゴースト退治の専門家になるという下克上展開もわかりやすい。つまり “楽しい映画” として日本の観客に受け入れられたのだ。そのような楽しさを求めて、筆者はシリーズを追い続け、どの映画も楽しんだ… と言えれば良いのだが、5年後に公開されたシリーズ第2作『ゴーストバスターズ2』(1989年)は、物語のテンションが明らかに落ちていた。

Run-D.M.C.による主題歌は前作のレイ・パーカーJr.を流用したノリの良いナンバーだったが、日本でラップが浸透していなかった時期に、あの “ゴーストバスターズ!” チャントほどのインパクトをあたえることはできなかった。結果、日本の配給収入は前作の半分以下に。アメリカでも物語のテンションの低さが伝わったことで、同様の結果に終わり、シリーズはここで一度、息の根が断たれた。

1984年版の主題歌をここぞという場面できっちり鳴らす21世紀版「ゴーストバスターズ」


しかし、死んでも甦るのがゴーストだ。2016年に製作されたリブート版『ゴーストバスターズ』は、ゴーストバスターズの面々を女性に置き換え、1作目の興奮を現代的にアップデートして焼き直してみせた。続く『ゴーストバスターズ アフターライフ』(2018年)は1作目を愛した観客には、涙なしでは見られない映画となった。

これらが成功したのは、作り手が1984年版『ゴーストバスターズ』に敬意を持って製作に臨んだから。子どもの頃に1984年版を観た世代が、21世紀にはクリエイターとして活躍しているのだから、それも必然だ。ちなみに『ゴーストバスターズ アフターライフ』の監督は、『ゴーストバスターズ』の生みの親であるアイヴァン・ライトマンの息子で、『マイレージ、マイライフ』などの良質のヒット作を生んだジェイソン・ライトマン。何より、これらの21世紀版『ゴーストバスターズ』シリーズは、1984年版の主題歌をここぞという場面できっちり鳴らす。これはもっともわかりやすい1作目へのリスペクトだろう。

1984年の日本の観客にとって本作が特別なものになったのは、12月という公開時期の効果もある。落ちこぼれの人間が悪霊に勝利するなんて、ありえない。しかし、クリスマスには奇跡も起こる。日本でヒットを飛ばしたのは、このような季節的な要因もあるだろう。マシュマロマンは超巨大雪だるまに見えなくもないのだ。とにもかくにも『コーストバスターズ』は、コメディ&ホラーという日本では売りにくいジャンルをブロックバスターに導いた、映画界の “奇跡” だったのだ。

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