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【ふじのくに芸術祭2024障害者文化芸術部門】 表現者が刺激し合い、質を高め合う

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は11月27日から静岡市駿河区の県立美術館県民ギャラリーで開催中の「ふじのくに芸術祭2024障害者文化芸術部門」を題材に。会期は12月1日まで。「ふじのくに芸術祭2024写真展」と同時開催。 2018年の障害者文化芸術推進法の施行を受け、障害者による作品発表や地域との交流促進が図られている。静岡県は2021年度に策定した文化振興基本計画に、障害者の文化芸術活動推進を盛り込んだ。 計画には、それまで別々に開催されていた「ふじのくに芸術祭」と「障害者芸術祭」の一体化が記されていた。今回はそれが初めて実現されたことになる。

文化芸術は障害のあるなしによらない、普遍的な営みである。文化活動と福祉の垣根を低くすることで、表現者が互いに刺激し合い、質を高め合うことにつながる。 県民ギャラリーでは、いわゆる「障害者」の作品と、公募写真展の秀作が地続きで展示されている。考えてみれば、写真展の応募者の中に「障害者」がいても何ら不思議はない。障害のあるなしは作品の良しあしと相関しないという、当たり前の事実に気づかされた。「障害者芸術文化芸術部門」の展示作品で個人的に特に心打たれたのは、まずアマンダさんの「無題」。青と白の絵の具が溶け合い、混じり合い、干渉し合いながら何か大きなうねりを生み出している。今にも動き出しそうな画面の迫力に息をのんだ。

赤池僚也さん「ゾウ」にも引かれた。ブルーの背景にオリジナリティーあふれる造形のゾウ。着彩とモチーフの変形のセンスがいい。抽象化されてはいるものの、ゾウの表情や思考が伝わってくる。

田中拓実さん「超密Ⅵ」も胸に迫るものがあった。描いているのはカツオだろうか、マグロだろうか。そしてこれは版画だろうか。面と線が白黒ではっきり浮き出る画面の中に、レインボーの背びれを持つカジキが浮き上がる。陳腐な表現だが、「カッコいい」の一言だ。

上原礼二さんの風景画「源流」もいい。岩肌の陰影と絵肌の凹凸の相乗効果で、不思議な視覚体験を得られる。限られた色で、このおとぎ話のような空間を作り上げるのはさぞや難儀しただろう。アーティストとしての苦心と、絵を描く喜びの両方が伝わってきた。(は) <DATA>■ふじのくに芸術祭2024障害者文化芸術部門〈西部会場〉会場:クリエート浜松(浜松市中央区早馬町2-1)会期:9月28日(土)~10月6日(日)※会期終了〈中部会場〉会場:県立美術館県民ギャラリー(静岡市駿河区谷田53-2)会期:11月27日(水)~12月1日(日)〈東部会場〉会場:プラサヴェルデ(沼津市大手町1-1-4)会期:2025年1月22日(水)~26日(日)〈「ふぁいんだー」作品公募展〉会場:県立美術館県民ギャラリー(静岡市駿河区谷田53-2)会期:12月4日(水)~12月8日(日)

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