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行政サービスはどんどん活用すべし! シニアへの行政サービスが、行政側にメリットがある理由

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行政サービスはどんどん活用すべし! シニアへの行政サービスが、行政側にメリットがある理由


「老後」について、不安なことを耳にする機会が多い昨今。老後とは本当に怖いものでしょうか? 保坂サイコオンコロジー・クリニック院長の保坂隆氏は、著書『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』のなかで、「老後ほど好きに人生を楽しめる時期はない」と言います。ただし、それには手元のお金をやりくりする力が必要です。具体的には、どのような点に気を付ければよいのか。やりくりのコツを見ていきましょう。


※本記事は保坂 隆著の書籍『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)から一部抜粋・編集しました。

※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

行政に頼るのは恥ずかしいことではない


私の患者さんに、71歳のひとり暮らしの女性がいます。要支援(多少の支援や部分的な介助が必要)の認定を受けていて、それほど多くない年金だけで暮らしているそうです。


経済的には余裕があるとはいえない状況ですが、いつも身ぎれいにしていて、医師の私から見ても健康状態はおおむね良好です。


髪もきれいにしています。あるとき、「いつもお元気そうですね。髪の手入れもよくしていらっしゃるようで」とお聞きしたことがあります。


すると、こちらの考えを見透かしたようにこう答えてくれました。


「役所がいろいろと面倒見てくれるんですよ。自分は足が悪くて遠くまで外出できませんから、役所が人をよこしてヘアカットまでしてくれます。いちおう何がしかの税金を払ってきたわけだから、使えるサービスはどんどん使おうかと思っています」


厚生労働省の「国民生活基礎調査」(令和3年)によると、高齢者(65歳以上)世帯の所得は、2014年=297万3000円、2018年=312万6000円、2020年=332万9000円と、いずれの年も全世帯の平均所得を大きく下回っています。また、高齢者世帯では、所得のうちの約
60%を公的年金が占めています。高齢者問題の専門家によると、近い将来、シニアの9割が生活困窮者になる可能性があるとのことです。


では、どうすれば、そんな事態を回避できるのでしょうか。


答えは、可能な限り行政サービスを利用することです。


最近は、どの自治体でもシニアに対する行政サービスに力を入れています。シニアのなかには「施しなど受けたくない」と言って、この手の行政サービスを拒否したり敬遠したりする人がいますが、これらのサービスは決して「施し」ではありません。ゆくゆくは行政のためになるサービスなのです。


病気やケガが悪化したり、寝たきりになってしまうと、行政の負担は限りなく大きくなります。逆に元気で暮らすシニアが増えれば、介護サービスや医療保険への支出を減らせます。つまり、行政サービスは、施しではなく、「転ばぬ先の杖」なのです。


こうした明確な理由があるのですから、遠慮したり拒否したりせず、使える行政サービスはどんどん利用すべきでしょう。行政サービスは自治体によって異なります。あなたがお住まいの地域の自治体にはどのようなサービスがあるのか、一度確認しておきましょう。調べてみると、「えっ!? こんなこともやってくれるの?」とびっくりすること請け合いです。

地域によっては紙おむつの無料支給も


前項でお話ししたように、行政サービスの内容は自治体によって異なります。詳しく知るには役所のホームページなどを見て確認するしかありませんが、ここでは比較的一般的と思われるものをいくつか紹介していきましょう。


・ゴミ出し支援


シニアのなかには「ゴミを捨てたいけれど、体力的に難しい」「うまく分別できない」などという人もいます。とくに地方では、ゴミの集積所が自宅から離れていることも多く、運んでいけない人も少なからずいるはずです。そんなときに利用したいのが「ゴミ出し支援」です。


たとえば、千葉県千葉市では、要介護認定1~5の方、身体障害者手帳1、2級の方、精神障害者保健福祉手帳1級の方、療育手帳○AまたはAの方、そのほか市長が必要と認める方のみで構成される世帯のゴミを、ゴミステーションまで持っていく支援を行っています。


・訪問理美容サービス


専門の理容師、美容師が出張してくれるサービスです。


横浜市を例にとると、おおむね65歳以上の要介護4または5に認定されている外出困難な方、または要支援、要介護1~3の方で心身状況・外出手段・居住環境等の状況を総合的に判断し、福祉保健センター長がとくに必要と認めた方が利用できるようになっています。


ちなみに横浜市の利用料は1回2000円(調髪またはカットのみ)ですが、各市町村によって利用できる条件や利用料金は異なります。


・食事サービス


その名のとおり、食事を配達してくれるサービスです。


大阪市の場合、単身またはシニアのみの世帯で暮らす65歳以上のシニアで、要支援1、2または要介護1~5に該当し、食事の調理が困難であること、または栄養改善の必要性が認められ、配食による安否確認が必要と判断された方が利用できます。さらに、会食の世話をしてくれる「ふれあい型食事サービス」も実施しています。もちろん利用料金はかかりますが、ひとり暮らしではどうしても栄養バランスが崩れがちなので、健康維持のためにはぜひ利用したいサービスではないでしょうか。


・紙おむつの給付制度


要介護高齢者の場合、紙おむつや介護食などの介護用品の支出が必要になります。そのため、大阪府堺市では、寝たきりや認知症シニアで、常時紙おむつの使用が必要な方に対し、紙おむつと交換可能な給付券(1カ月につき1枚、1枚当たり6500円上限)を交付しています。


こちらも、要介護者にとってはとてもありがたい行政サービスでしょう。

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