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コラム【本州湾岸を反時計に一周】009 盛駅から三陸鉄道リアス線⑦ 2024年8月25日

鉄道チャンネル

※2019年4月撮影

トップ画像、宮古行は鵜住居駅を出発してすぐに鵜住居川を渡ります。震災時は、この川を高さ20mの津波が遡上したのですから想像を絶します。震災後、海際に巨大な水門が作られました。

少し登り勾配を進みます。トンネルが見えます。

※2019年4月撮影

大槌トンネル(25)842mです。

※2024年8月25日撮影

トンネルを抜けて、小槌川を渡ります。

※2019年4月撮影

震災前の風景が思い出せないほど更地が広がっています。

※2024年8月25日撮影

大槌駅も島式ホーム1面2線です。

※2024年8月25日撮影

鵜住居駅から4.0kmで大槌駅。

震災直後の大槌町の惨状が記憶に残っています。200人乗り100トンを越える新しい観光船が津波で内陸に150m入った民宿の2階の屋根に乗っているニュース映像に驚きました。19mの津波で4,000棟を越える家屋が倒壊しました。(いわて震災津波アーカイブ希望のデータ)

大槌町の人的被害は、死者1,233人、関連死を合わせると1,286人と膨大です。震災の前年、2010年(平成22年)の町の人口が15,277人でしたから住んでいる人の8.4%が亡くなってしまったのです。悲劇は、津波から逃げようとしていた町役場の方々が町長以下課長クラス全員が津波にのみ込まれてしまった為に地震後に行政機能が完全に麻痺してしまったことでした。岩手県の中心である盛岡からはクルマで数時間かかることもあって被害が外部に伝わらず孤立状態に陥りました。

改めて新しい旧山田線(現リアス線)を通ると、ほとんど残っていなかった路盤が作り直され新しいレールが敷かれていることに深く感動します。JR東日本さんがとてもいい仕事をしています。

※2024年8月25日撮影

駅名標。愛称は「鮭とひょうたん島の町」。大槌湾に浮かぶ蓬莱島がひょうたん島のモデルと言われています。

「ひょっこりひょうたん島」はNHK総合放送で1964年(昭和39年)東京オリンピックの年に放送が始まりました。筆者は小学2年生でした。1969年(昭和44年)まで5年間も続いたので放送終了時に筆者は中学生になっていました。原作者の故井上ひさしさんは東北の山形生まれです。「吉里吉里人」を書いたのも井上さんでした。それは吉里吉里駅の時に書きます。

※2024年8月25日撮影

ひょうたん島をイメージした屋根が特徴の駅舎。大槌町観光交流協会の観光案内所があります。

※2019年4月撮影

大槌駅を出発して、大槌川を渡ります。南部鼻曲鮭(なんぶはなまがりさけ)の産地として有名な川です。

※2024年8月25日撮影

勾配を上がって、

※2019年4月撮影

吉里吉里トンネル(26)805mです。

※2024年8月25日撮影

トンネルを抜けると海(船越湾)が見えました。

※2019年4月撮影

吉里吉里駅が近づきます。

※2024年8月25日撮影

大槌駅から3.4kmで吉里吉里駅に到着します。駅舎が新しくなっていますが、駅の佇まいは震災前と変わりません。

※2024年8月25日撮影

駅名標。愛称は「鳴き砂の浜」。

※2024年8月25日撮影

2009年(平成21年)久慈駅から盛駅まで一気に乗った時に撮ったJR山田線時代の駅名標です。背後の樹木が同じです。

※2009年9月撮影

故井上ひさし氏の小説「吉里吉里人」は、筑摩書房が1973年(昭和48年)から刊行した雑誌「終末から」に連載されました。しかし連載の途中で雑誌は廃刊。改めて1978年(昭和53年)から「小説新潮」に連載され1981年(昭和56年)に単行本が刊行されました。雑誌「終末から」は季刊でしたが高校生の筆者は毎号読んでいました。連載の「吉里吉里人」が宙に浮いたままになって妙な気分でした。連載を読み始めてから何と8年目に書籍になりました。もちろんすぐに読みました。(笑)

日本政府に愛想を尽かした東北の寒村が「吉里吉里国」として独立する物語。何と原型は東京オリンピックの1964年(昭和39年)に井上ひさし氏がNHKラジオ小劇場に書いた脚本「吉里吉里独立す」でした。東京オリンピックの愛国的情緒が蔓延する中、不評だったそうです。

矢作俊彦さんの傑作小説『あ・じゃ・ぱん』(1997/新潮社)、戦後日本を東西に分断された国家として描く物語とある種双璧を成す快作だと思います。吉里吉里の駅名には、ある種の思い入れがあります。

吉里吉里駅を出るとリアス線は勾配を下って船越湾沿いを走ります。

※2019年4月撮影

浪板川を渡ると浪板海岸駅です。

※2019年4月撮影

吉里吉里駅からは1.8kmでした。

※2024年8月25日撮影

駅名標。愛称は「片寄せ波のサーフサイド」。「片寄せ波」は浪板海岸が震災前は「寄せる波はあっても返す波のない世界でも珍しい海岸」でサーファーが多く集まったことから。1994年(平成6年)浪板駅から改称されています。

※2024年8月25日撮影

次は6.4kmと駅間の長い岩手船越駅です。

(文・写真) 住田至朗

※三陸鉄道の許可をいただいて撮影しています。

※過去の写真はライター住田がプライベートで旅をした時のスナップ写真です。

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