BATジャパン、「たばこハームリダクション」テーマにフォーラム 政策形成の重要性を指摘
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BATジャパン)は、「日本の公衆衛生と政策の新たな道を探るフォーラム ~持続可能な日本の未来の創造に向けて~」を2025年4月23日に開催した。
フォーラムには、政策立案者、医療関係者、業界関係者らステークホルダー80人以上が参加。「スモークレスな世界」を目指してカギとなる「たばこハームリダクション(害の低減)」について意見交換が行われた。「たばこハームリダクション」に根ざした政策形成について訴えた。
「たばこハームリダクション」世界での取り組み事例
日本のたばこ業界を取り巻く環境は変化してきた。紙巻たばこから、加熱式たばこへの移行が進んでいるからだ。BATジャパン調べによると、24年時点で販売数量ベースでは、全たばこ販売数量のうち45.2%が加熱式たばこ。25年末までには、加熱式たばこの市場シェアが紙巻たばこを上回る予想されるという。BATジャパンによれば、「日本は世界で初めて、加熱式たばこを通じて市場の過半数がスモークレス化する見込み」という。
フォーラムでは、BATジャパン社長のエマ・ディーン氏が、加熱式たばこの税率が見直されることに触れ、日本の「スモークレスへの前進が後退してしまう可能性がある」とした。そのうえで、同社の意識調査をひきあいに、「約70%の回答者が、加熱式たばこは紙巻たばこよりも健康リスクが低い可能性を秘めていると認識している。加熱式たばこがより手に取りやすい価格で提供されれば、紙巻たばこからの切り替え意向は160%になるというデータも出ている」とした。
続いて、世界各国で取り組まれている「たばこハームリダクション」の事例が取り上げられた。たばこハームリダクションとは、たばこのハーム(害)をリダクションする(減らす)ことを意味する。
ニュージーランドでは、ベイプ製品(電子たばこ)への取り組みを通じ、紙巻たばこの喫煙率が12年の16.4%から23年には6.8%へと低下。同国ではベイプ製品が望ましい代替手段であると位置づけるとともに、未成年者へのアクセスを防ぐ適切な規制なども「計画的な政策を展開している」という。
スウェーデンでは、紙巻たばこの喫煙率は12年間で50%以上減少し、24年には5.4%にまで低下した。成人喫煙者がオーラルたばこやニコチンパウチ製品など、スモークレス代替製品へとアクセスできる環境の整備を行っているという。
こうした事例を踏まえ、日本でも「たばこハームリダクション」を柱とした政策の導入が有力なアプローチではないかと指摘された。BATの最高企業責任者、キングズリー・ウィートン氏は「従来の『禁煙するか死に至るか』というたばこ規制のアプローチは変化しつつあり、たばこハームリダクションが現実的な代替策として浮上している。この考え方はすでに、世界各国の公衆衛生政策に取り入れられ始めている」と説明した。
科学的エビデンスに基づいた対話を
BATジャパンは、フォーラムと同に、スモークレス製品を支える科学的エビデンスと規制枠組みの進展をまとめた、情報リソース「Omni(オムニ)」の日本語版エグゼクティブサマリーを公開した。
Omni(オムニ)には科学的エビデンスに基づく内容を集約しており、エビデンスに基づいた社会的対話のプラットフォームとなりうるものだ。フォーラムでは、Omni(オムニ)が理念とする「エビデンスに基づく変革を促進するための、開かれた包摂的な対話」を体現するパネルディスカッションも行われた。
その中で、「国民の健康を考えるハームリダクション議員連盟」会長の自民党・田中和德氏は、スモークレス製品に対する「リスクに応じた課税と規制の必要性」を強調した。元厚生労働省医政局長の武田俊彦氏(岩手医科大学 医学部 客員教授)は、たばこハームリダクションを「たばこ使用に伴う健康リスクを低減することに焦点を当てた、革新的な政策的アプローチ」とした。
パシフィック・アライアンス総研所長の渡瀬裕哉氏(早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員)は、「喫煙がもたらす社会的・経済的損失は、すでに国にとって大きな負担」「スモークレス製品の価値を活かしつつ、公衆衛生にも資する合理的な財政政策が求められている」などと指摘した。
BAT リサーチ&サイエンス担当ディレクターのジェームズ・マーフィー氏は、スモークレス製品に関する根強い認識の溝があり、そのために慎重な見方がもたらされている現状に触れ、「ハームリダクションを推進するにあたって、医療関係者の皆様の果たす役割が極めて重要。地域レベルでの継続的な研究が蓄積されていけば、政策を担う皆様の判断を科学的に支える材料にもなると考えている」「懐疑ではなく、確かな科学的エビデンスに基づいた対話が進むことを期待したい」と話した。