米が高いなら「粟(あわ)」を食べればいいじゃない? 年貢に苦しむ農民の主食でおなじみ「あわ飯」食べてみた結果 …
『まんが日本昔ばなし』は1975年から1994年まで放送されていたテレビアニメ。「桃太郎」「かちかち山」といった童話のアニメーションを市川悦子が朗読するという、いま思えば相当シュールなつくりだったが、幼少期の私ならびに同級生たちは食い入るように観ていた。
さて当時、昔話のシチュエーションとして超ありがちだったのが“年貢の取り立てが厳しくて貧しい生活を強いられている農民が、米の代わりに「アワ」を食べている”というものだ。「アワってどんな味だろう?」と気になりつつ、食べる機会に恵まれないまま現在に至る。
米の価格高騰に全国民が震撼している今日このごろ……みんな、今こそアワを食べるべき時なんじゃない!?
・アワ情報少なすぎ問題
念のため近所のスーパーを3軒ハシゴしたが、当然のごとくアワは売られていなかった。
のでAmazonで注文した。市場に出回るアワは大きく「モチアワ」「ウルチアワ」の2種類である模様。しかしいかんせん情報が少なく、昔話の農民がどのアワを食べていたのかは、ググった程度じゃ分からなかった。今回は勘で「ウルチアワ」をチョイス。
これが……夢にまでみたアワ。
国産米と比べると、10分の1くらいのサイズ感だろうか。穀物だと言われなければスパイスかお菓子の材料だと思うかもしれない?
なおアワの炊き方については頑張って調べたのだが……日本におけるアワのポピュラーな使用法は “餅やお菓子などに加工する” “米に混ぜて炊く” “お粥にする” などであるらしく、100%アワのみを炊飯する方法に関しては、ほとんど情報が見つからなかった。
仕方がないので白米と同じ要領でアワを炊いてみることに。いちおう「アワとぎ」を行ったが、とぎ汁が発生していたかどうかは、よく分からない。
・アワ飯、あっさり炊き上がる
ところでアワといえば、まず思い出すのが「濡れ手でアワ」(慣用句)だろう。ためしに指を水で濡らし、アワの袋に突っ込んでみる。
想像したほどではないが、それなりにアワがくっついていた。以上、余談でした。
さて。炊飯器が「ピー」と鳴り、恐る恐るフタを開けると……
お!?
うまくいってるような、ないような!?
しゃもじで混ぜると、露骨に「ザクザク」と音がした。アフリカか、インドか、そのあたりのどっかの国で出てきそうな食べ物。穀物特有のいいにおいがする。
ジャン! こちらが純度100%のアワ飯になります!!!
・人生初アワ
それではさっそくアワ飯を食べていく。パラパラしているため箸で食べられるか不安だったが、意外と大丈夫。
さて結論として、純度100%のアワ飯を口にした人間は……
一瞬、こんな顔になるが……
数十秒後、こんな顔になります!
アワ飯には「粘り気」「ふっくら感」みたいなものが皆無。また非常にボソボソゴロゴロとしているため、普通の白米をイメージしていると瞬間的に「!?」となる。
が! アワ飯は噛みしめれば噛みしめるにつれ奥深く、優しく、なんともいえない風味が染み出してくるのだ。コレ、個人的にはめちゃめちゃおいしいと思う。米とは別モノなので単純に “ご飯の代わり” とはならないが、少なくとも私は「明日からこれが主食だよ」と言われても全然オッケー。それくらい好き。
アワ飯に興味を持った中澤記者も、最初はこの顔だったが……
最終的に完食していたので結果はお察しのとおりである。「歯の間に挟まるのと食べにくいのが難点だが、味はウマい。味付け海苔を巻いたらもっとウマくなった。いろんなアレンジができそうな食材」とのことだ。完全に同意。
・重要なおしらせ
ついでなので、アワのメジャーな使用法とされる「米に混ぜて炊く」も一応やってみた。
米2:アワ1の割合で普通に炊飯する。
うん。雑穀米ご飯みたいでおいしいし、当たり前だけど普通のご飯に近い。ただ純度100%のアワ飯を食べた後だと、だいぶ物足りなさを感じた。どちらか一方しか選べないのだとしたら、100%のアワ飯を食べてみて欲しい。
あ! 最後に、大切なことを言い忘れていたのでお伝えしよう。今回購入した中国産のウルチアワ、Amazonで最安のものを探した結果、500グラム650円だった。NHKによると4月13日の段階で米の平均価格は5キロ4217円。500グラムだと約422円となる。つまり……
【悲報】アワ、米より高かった。
かつて貧しい農民の主食であったはずのアワは、おそらく生産量の減少により、今や “意識高い人のたしなみ” ポジに昇格していたようだ。結果的に米価格高騰の救世主とはなりえなかったアワ。でもアワに出会えて私……本当によかったと思ってる!!!
参考リンク:NHK、Amazon
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
イラスト:いらすとや