「もうイチョウは持たないです」専門家が神宮外苑の再開発を悲観するワケとは?
お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜13:00~15:30) 4月28日の放送は、岩波新書から発売している『緑地と文化──社会的共通資本としての杜』の著者である、中央大学研究開発機構・機構教授の石川幹子氏を招き、明治神宮外苑の再開発について伺った。
大竹「前回は、3年ほど前にご出演いただきました。その時のトーク内容は、「東京都のやり方は強引で姑息である」、「東京大空襲を生き残ったイチョウもたくさんあるのに」、「首都圏直下型地震が起こったらどうするのか」、「この暴挙を止めるには多くの市民が声が必要です」と、そのようなお話を伺いました。この3年の間に神宮外苑はどうなったのか、簡単にご説明していただけますか」
石川「皆さん頑張って色々声を上げていただいたんですがエスカレートしています。何も解決していない。多分もう理性が働いていない。第一期だけで3000本の樹木が伐採されます。100年以上経った大きな木がチェンソーで一瞬ですからね。それに鋼鉄の壁がありますので、マスコミの方だけにはちょっと見せていただいてるんですけども市民には見えない」
大竹「そうですね。あそこは囲いがありますからね」
石川「国立競技場の上に『空の杜』というのがありまして、そこから見えるんです」
大竹「ああ、なるほど」
石川「それで、もう丸裸です。ですから、本当に今日はこちらでお話をさせていただけることがとってもありがたいことなんです。エスカレートしているこの理性を失った状況をなんとかしたいという思いでここにおります」
大竹「坂本龍一さんも、文化人の方も反対して、この番組に出ている武田砂鉄さんも、このことに関してずいぶん番組で伝えたと思うんですが、今日まで来て。確か神宮外苑は、歴史的にも世界的にもかなり大事な公園らしいですね」
石川「かなり、というかオンリーワンです。私はこういう専門なものですから世界中を見ていますけど、こういう公園はどこにもないです。内苑と外苑がセットになっていて裏参道で結びついているんですね。その内苑はやはり素晴らしい森で。心を静めるところで。お伊勢さんも、ただお参りするだけじゃなくて、お餅を食べたりしますよね。それと同じで、外苑は運動したりみんな楽しんで。日本古来の聖なる空間と、それから楽しみとがセットで。こういうところはないです。世界遺産クラスです」
大竹「いろんな災害があった時でも、あそこは市民の避難場所にもなるところですよね」
石川「そうです。今、開発をしていらっしゃる日本の大企業は、造成するときにも先頭に立っていらっしゃいました。関東大震災では被災者住宅を作って、とても立派なことしてらっしゃるんです。ですから、ご先祖様がたかだか100年前に心を込めて社会の皆さんの幸福のためにお作りになったところをどうして? 曾孫さんぐらいなんでしょうかね。少しご先祖様のお心に耳を傾けられて、大地震が起こったら大変ですから、安全な公園を粉々にしないでほしいなと思います」
大竹「完成したところが想像できないんですけども。銀杏並木はとりあえず残るんですが、246から入っていく左側には130mのビルができる?」
石川「190mです」
大竹「ええ?」
石川「190mと、185mと、80mと、ホテル付きの野球場になります」
大竹「イチョウの木を見下ろすような」
石川「イチョウの木は一番高いのが23mです。ですから、その5倍、6倍ものビルが建って、一応、イチョウは残すということですけれども、隣に(笑)」
大竹「そうですよね」
石川「神宮球場を作りますから、地下杭を40m打つわけです。そうすると地下水脈が遮断されますよね。それと今、地球温暖化で真夏日が増えてるんです。そうすると、巨大な熱の塊がすぐそばに来る。ただでさえ熱いので、イチョウは弱ってるんですよね。木を残しても周りに熱源が来るわけなので、もうイチョウは持たないです。これは大変なことです」