皮膚をひっかく、髪の毛を抜くはただの癖ではないかも。「子どもの抑うつ症状」を早期発見するポイント3つ
臨床心理士・公認心理師のyukoです。大人も子どもも落ち込んだり食欲がなくなったりすると周囲の人が心配したり、うつっぽいのでは? と感じることが多いでしょう。しかし抑うつの症状は人それぞれで、必ずしも元気がなくなるだけではないんです。見落としがちな思春期の抑うつ感について考えてみます。
生活リズムの乱れや気分が不安定な娘が心配。
中2の娘が最近不安定な様子。些細なことでイライラしたり、夜更かしをして朝は寝坊してしまったり。体重を気にしていながらもお菓子を止められず食べ続けているのも心配。スクールカウンセラーに相談したら「抑うつ気味なのかもしれない」と言われた。落ち込んで引きこもっているわけではないのになんで抑うつといわれたのだろう。
小学校高学年から中学にかけて、今までとは異なる反抗的な態度を見せたり、情緒が不安定になりやすい子が増えていきます。
大人になるための体と心を作っていくための健康的な過程といえるでしょう。
しかし、そんなときに見過ごしやすいのが思春期の抑うつ感。
抑うつというとどんな症状が思い浮かびますか?
元気がない、食欲がない、眠れないなど、気分の落ち込みをあげる方が多いでしょう。
しかし、抑うつといっても症状は様々で、中には知っていなければ見落としてしまいそうなものもあります。
見落としてしまいがちな鬱の症状についてみていきましょう。
怠惰や反抗の背景には抑うつ感が隠れているかも?
忘れ物やミスの増加、成績の低下。
落ち込んでたり悩んでいると、注意力が低下して、忘れ物やミスが増えやすくなります。
また、集中力が低下して勉強がはかどらず成績が下がりやすくなるんです。
そのようなとき、さぼっているとみなして叱責したり、焦って塾や予備校を進めるなどの関わりは要注意。
勉強を「やらない」のではなく、「できない」可能性も考えていけるといいですよね。
また、集中したいのにできていないようであれば、無理に促すのではなく、一度話を聞いてみるのが大切です。
食欲や睡眠が変化する。
一般的に抑うつときくと「元気がなくなる、エネルギーが低下する」というイメージがあるのではないでしょうか。
しかし実際はもう少し複雑で、食欲が減退する人もいれば増進する子もいます。
「食欲があるなら大丈夫」と思ってしまいがちですが、落ち込んでいるときや脳の機能が低下しているときは、食べても食べても心が満たされない、満腹を感じられない場合もあるんです。
食欲があるかどうかだけではなく、「美味しいと感じられているか」という点にも目を向けるのが重要。
また睡眠に関しても、眠れない子ばかりではなく、寝すぎてしまう過眠傾向になる子もいるんです。
睡眠時間だけに着目するのではなく、「ぐっすり眠れた感じがあるか、起きたときにすっきりしているか」も確認してみてください。
些細なことでイライラしたり、敏感になる。
子どもの元気がないと親は心配しやすいのですが、いらだちを向けられたり八つ当たりされたりすると、子どもの不調を見逃しやすくなります。
鬱っぽくなると、神経が過敏になりやすく、少しの刺激で落ち込んだり、逆にいらだったりするんです。
そうすると身近な家族に八つ当たりしたり、キレてしまう子も多いんですね。
「怒る元気がある」と捉えるのではなく、「受け流す余裕がないのかも?」と考えてみるのも大切です。
また、爪で皮膚をひっかく、髪の毛を抜く、歯を食いしばるなど、身体に関わる行動の変化にも要注意です。
単なる癖ではなく、無意識的にも意識的にも自分を傷つけたり、刺激を欲してしまっている可能性があります。
ただ「止めなさい」と伝えるのではなく、止めたくても止められない辛さを受け止めていけるとよいでしょう。
表に現れている症状だけではなく、背景に隠れている辛さを理解していけるといいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師