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「仕事のルールを変えてしまう人」の話。

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「仕事のルールを変えてしまう人」の話。

つい先日、会食にて。

仕事はゲームみたいなもの、と言っている人がいた。


なるほど、と思ったのだが、ちょっと考えて、「いや……ちがう」という結論に達した。

というのも、仕事とゲームとは、根本的な違いがあるからだ。


*


例えば、こういう話だ。


ある広告会社では、新人たちに対して、配属を決めるための競争を課した。

3か月以内に、あらゆる手段で、新しいお客さんを開拓する。


受注のトップ層には、人気のある「クリエイティブ」の部署に回すことも含めて、希望の部署に配属してやる、というものだ。


この会社では、クリエイティブ職にも営業力を求めており、

「最も仕事を取れる奴が、最もクリエイティブである」

という認識をしていた。


真の仕事の能力というのは、中室牧子氏が述べる「主体性」「コミュニケーション能力」「やり抜く力」だ。

そして、それは「仕事のやり方がわからないとき」にこそ、発揮される。


「クリエイティブ職」は人気だったため、さっそく、競争が始まった。


毎日、電話をまじめにかける者。

先輩の営業のしかたを学んで、効率的に仕事を取ろうとする者。

縁故を使って仕事を獲得する者。

資料作りに時間をかける者。

マーケティングの勉強を始める者。


これは確かに、一種の「ゲーム」のようなものだった。


*


しかし、最も成果をあげた人間は、次のような仕事のやりかたをした。


まず、学校の後輩に片っ端から声をかけた。

そして、その中で、テレアポに協力してくれる人を見つけた。


そして彼は、彼らに少々、自腹で金を渡し、毎日テレアポをかけさせた。

自分はアポを取れたところに、営業に行く。

優秀な先輩のやり方を真似たのだ。


そして彼は見事に、圧倒的な成果を出し、トップを勝ち取った。

人を使う力と、機転が認められたのだ。


他の新人たちは、文句を言った。

「自分の力ではない。おかしいのではないか」と。


しかし、上層部は彼らに言った。

「そんなルールはない」と。


ただし翌年から、新人に負担がかからないように「自腹」は禁止になった。


*


ゲームと仕事は、大きく違う。


ゲームとは「ルール」があり、その枠の中で勝ち負けや、条件の達成を目指す行為だ。

ルールを変えることはできないし、ルール通りやらなければゲームそのものが成立しない。


それに対して、仕事には事実上、ルールがない。

いや、ないというと言いすぎか。

正確に言えば、ルールはあるのだが、事実上、ルールの再設定が認められている。


米国のコングロマリットの総帥である、ハロルド・ジェニーンは

「仕事のルールには従う必要があるが、ルールに従って考える必要はない」と言った。


実際、現場では仕事のルールというのは、その場の権力者によって付け替えが自由だし、上手くやれば「ルールを決める側」にもなれる。

これがゲームとの大きな違いだ。


実際、スポーツにおいても「卓越した選手と戦略」が、ルールそのものを変えてしまうことがある。

米国のプロバスケットボールなどは良い事例で、圧倒的な選手が出るたびに、ルールが変更されている。

例えば、かつて、「3ポイントシュート」は主流ではなかったが、ステファン・カリーらの活躍によって、3ポイントのラインの位置まで変わってしまった。


*


仕事は「ルールに従うヤツ」ではなく「考えたやつ」が成功する。

むしろ「ゲーム」と似ているのは、仕事ではなく「学校」だ。


ルールがあり、正解が用意されている世界。

ルールを変えてはいけない世界。

「ルールの中で、いかに効率よくやるか」

が求められれる静的平衡の世界だ。


そこは単純で、直線的な思考しか要求されない。

頭の良さというより、要領の良さが重要になる。


そういう意味で「学校」に最適化されてしまった人。ルールにならされてる人。効率よくルールをなぞろうとする人、「効率のいいやり方を教えてくれ」というような人たちは、仕事のそういう「複雑さ」に耐えられない。

「機転が利かないよね」

「学歴はいいみたいだけど、仕事は微妙だよね」

「主体性がないよね」

と言われる人の、出来上がりだ。


本質的には、ビジネスは、ほかがやらないこと、正解がないことをリスクを取ってやるものだ。

真の「能力」というのは、そういう時にあらわになる。

***


【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」88万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

◯Twitter:安達裕哉

◯Facebook:安達裕哉

◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書)

Photo:davisuko

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