魚たちはいつどこで眠るのか? 眠る魚を観察するタイミング&方法とは
魚にも眠る(休む)時間があります。泳ぎながら休む、潜砂して休む、寝床で休むなど、種類によってその睡眠の様式は多様です。
「魚は目を閉じないけれど眠るのか?」「寝床をもつ魚と泳ぎながら休む魚」「水族館で観られる“おやすみ姿”」という3つの視点から、魚たちの休息方法をまとめました。
魚は目を閉じない?
人間をはじめとする哺乳類や鳥類、爬虫類など、多くの生きものは瞼(まぶた)を有しており、眠るときは目を瞑ります。しかし、魚類の多くは瞼を持たず目を開けたまま寝ています。
私たちは空気によって目が乾燥するため、まばたきをして涙で目を湿らせていますが、水の中で過ごすサカナたちは目が渇かないので、まばたきをする必要がないのです。
眠っている魚の特徴
では、眠っている魚にはどのような特徴があるのでしょうか?
研究では、魚が休息状態に入る際には「刺激に対する反応が鈍くなる」「通常の遊泳から静止姿勢に移行する」「休息後反応閾値が上がる」といった行動学的な指標が確認されています。
こうした“静止した姿勢”や“泳動の減少”によって、魚が「眠っている・休んでいる」と判断されているのです。
魚たちはどこで寝ているの?
水槽の底で休む金魚(提供:PhotoAC)
魚の休息スタイルには種類によっていくつかパターンがあります。
例えば、ベラの仲間。このグループに属するキュウセンは砂に潜って休むことが知られています。
また、ブダイの仲間は口から粘液を出し、外敵から身を守りながら休むことが知られています。一方、回遊魚であるマグロやカツオなどは、泳いでエラに海水を入れ続けないと呼吸ができないため、スピードを落として体を休めているそうです。
魚を飼育するアクアリストは、まさに水槽の底で休んでいる魚を見たことがあるかもしれません。水槽で飼育されている魚を観察すると、昼夜の照明の切り替えなどのタイミングで寝床に移動するような動きを見せることもあります。
最新研究では、サケ科に属する魚・ブラウントラウトについて、「典型的な河床に接触した静止姿勢が、睡眠行動の基準を満たす」ことが示されています。
水族館で魚の“おやすみ姿”を観察しよう
「休息している魚たちを観察してみたい」と思った人は、水族館に出かけてみましょう。
陽が落ちるタイミングに照明が調整されている時や、来館者が少なくなってきた閉館間際、夜の水族館に入館できるイベントなどはまさに絶好のタイミングです。
そういったタイミングで静かな水槽の中をそっと覗いてみると、それぞれ落ち着く場所で微動だにしない魚たちを見ることもできます。
眠っている魚たちを観察する際には、明かりが落ちた直後や餌を与えられた直後ではなく、落ち着いた時間帯に“動かない魚”がどこに居るか探してみましょう。
また、照明変化や来館者の声が少ない時間帯の展示も、眠っている魚の観察に適しています。
飼育している魚も、外出から帰って来た時や起床直後など、人間の動きへの反応が鈍いことがあります。それはまさに魚の寝ぼけている姿かもしれません。
眠っている魚を観察してみよう
このように、魚にも人間と同じく“眠り”に似た休息行動があるのです。目を閉じずとも、刺激に対し反応が鈍くなる、遊泳が減少する、特定の寝床に移動するといった形で“休みモード”に入ります。
この際、砂地に潜る魚もいれば、浮遊・遊泳中に休む魚もおり、そのスタイルはさまざまです。
水族館で観察する際には、照明や人の動きが少ない時間帯を狙って、魚の“おやすみ姿”を探してみてください。魚の世界の“夜の顔”に気づけると、新たな発見があるかもしれません。
(サカナトライター:せんば千波)
参考文献
新江ノ島水族館 えのすいトリーター日誌-魚の睡眠
海洋生物環境研究所、林正裕(2022)-魚類における脳波解析を用いた睡眠測定方法
ScienceDirect-Behavioural sleep in salmonid fish with flexible diel activity