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強豪チーム加入も周りとレベル差があって選抜から外されそう、前より勢いもないしどうしたらいいの問題

サカイク

ほかの子と差がついてきて二軍の息子。チームメイトたちは個々にスクールなども通っているけど、息子はスクールに行きたくないという。

周りとの差にいろいろ考えてしまう。やる気を出させる、スクールに行きたいと思わせるのも親のかかわり次第なの? というご相談をいただきました。ほかの子と比較して焦ってしまうのはよくあることですよね。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<二軍なのにスクールに行かない息子。気持ちが足らないように見えるが、やる気を出させるのも親の役目なのか問題

 

<サッカーママからのご相談>

はじめまして。

10歳の息子がクラブチームに移籍して2か月目なのですが、なかなか周りについていけません。みんな1、2年生から今のチームでやっており、県代表のチームでもあるため厳しいです。

サッカーは大好きで、練習も週3回、強くなりたい気持ちをもって行っていますが、今までのスポ小とは違うため、レベルの差があり試合中も息子だけ逆に目立ってしまいます。

入ってまだ2か月ですが自信がないのか、サッカーを始めた頃よりも勢いもなくなってきてしまいました。

選抜チームから外されてしまいそうです。

どのようにすべきでしょうか。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

10歳でこの時期ですと、小学5年生でしょうか。どのような理由でスポーツ少年団からクラブチームに移籍されたのかはわかりませんが、以前の所属先よりも強いチームに入ってしまった息子さんは苦労されているようです。

試合に出られないわが子の姿を見守るのは、辛いことですね。私も経験があるので多少はわかります。

先程申し上げた移籍の経緯をはじめ、あまり細かいことが書かれてないため、はっきりしたことを申し上げられないのですが、私のほうから3つほどお伝えします。

 

■アドバイス①お母さんは何もしなくていい、むしろ子どもに動揺を見せないこと

1つめ。

メールの終わりに「どのようにすべきでしょうか」とあります。もし、お母さんを主語として「私は何をすべきでしょうか?」と私に質問しているのであれば、やることは何もありません。

え? 息子のピンチに親が何もしなくていいはずないじゃん。そう思われるかもしれませんが、子どもは自分の身の上に何か良くないことが起きたとき、親が「どうしよう、どうしよう」と動揺する姿を目にすると、ますます不安になります。

したがって、何もしないほうがいいのです。まずは、何もせずに見守りましょう。そうはいっても、大人の私たちは実は子どもを見守るのが下手くそです。

なぜならば、多くの大人が子ども時代に見守られたことがないからです。イケイケどんどんの高度成長期に、厳しくして言うことを聞かされてきた人のほうが多いはずです。

ですから、子育ても新しい学びが必要です。まずは何せず、気持ちに共感して寄り添いましょう。

息子さんが「試合に出られなかった」とか「うまくいかなかった」と落ち込んで帰ってきたら、「そうなんだ。でられなかったんだ。うまくいかなかったかァ。そっかー」と、彼が言ったことを復唱してあげてください。自分が言った言葉をお母さんがそのまま口にするということは、自分の声がお母さんに聞こえていたという証です。優しく言ってあげれば、自分の悔しさや、つらさを受け止めてくれていると感じることができます。

そこで、サッカーを知っている親御さんは「もっとこうすればいい」とか「試合に出たかったら自主練しなさい」などと言ってしまいます。これは見守っているとは言えません。

そもそも子どもが求めているのは、プレーのアドバイスやもっとやれと発破をかけてほしいわけではありません。自分の苦しさに共感してほしい。大人だってそうですよね。

 

■アドバイス②「共感するけど、同化しない」我が子のピンチに同化せず客観視して

2つめ。

親御さんは「共感するけど、同化しない」こと。例えば「残念だったね。悔しいね」と共感することは重要です。

ただし、子どもの気持ちに親が同化してはいけません。親が心配していることを感じた子どもは、自分が信用されていないことに落ち込みます。つまり「最も近くにいる母親にこんなに心配されてしまうダメな僕」と思ってしまいます。

お母さんのメールをみると、練習についていけない、最初に比べて勢いがない、選抜チームから落ちそうと、心配しています。単に事実を並べたのかもしれませんが、読む側の感覚としては、ストレスが溜まっているのかなと心配になります。ストレスがたまるということは、息子のピンチに自分を同化させている。子どもの姿を客観的に見られなくなっています。

息子さんが「サッカー、大好き」と言うのであれば、それでいいじゃありませんか。練習でついていけてなくても、最初に比べて勢いがなくても、選抜チームから落ちそうでも、それは息子さんが立ち向かうことです。

私も思い違いをしていた経験があるのでわかることですが、親が子どもをコントロールできると考えないほうがいいです。

声掛けとか、何か話をしてやる気が出るものではないし、息子さんは懸命にサッカーに向き合っていると思います。できるだけ子どもの選択を尊重して任せましょう。

  

■アドバイス③「傾聴するスキル」を高めて子どものことをもっと理解しよう

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

3つめは「傾聴するスキル」を高めることをお勧めします。

私自身もそうですが、大人は子どもの話を聴いたつもりでも、実は子どもからするとそうでないことのほうが多いです。そこに「あなたのことを心底わかりたいんだよ」という体熱がなければ聴いたことになりません。

臨床心理やカウンセリングの専門家に「ロジャースの3原則」を教わったことがあります。米国の心理学者であるカール・ロジャースが提唱した「傾聴」の3つの要素は、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」から構成されます。

 

相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとするのが「共感的理解」。

「無条件の肯定的関心」は、相手の話を善悪や好き嫌いの評価をせずに聴き、相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったかという背景を〝肯定的な関心〟を持って聴く。そうすることで相手は安心して話ができます。

最後の「自己一致」は、相手に対しても、自分に対しても、真摯な態度を貫き、例えば相手の話がわかりにくい場合はそのことを正直に伝える。わからないことをそのままにせず、あくまで互いに自己との一致を目指します。

 

難しいなと感じますよね。私も最初そう思いました。でも、最初はうまくいかなくても、シンプルに考えると「あなたのことをわかりたい」という気持ちが伝わることが重要なのだと理解しました(夫育てにも運用できます)。

これを機に、子育ての手法を見直しましょう。悩んだことを逆手にとるのです。

いいですか。子どものサッカーなんて一瞬です。子どもに任せ好きなようにやらせて、こころとからだの成長を支えましょう。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。

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