【ギャラリー「ときの忘れもの」の「柳澤紀子+北川民次展」】 世界に視線を向ける、静岡県出身の美術家2人
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は東京都文京区のギャラリー「ときの忘れもの」で10月30日に開幕した「柳澤紀子 + 北川民次展」から。
浜松市出身の現代美術家柳澤紀子さんと、旧五和村(島田市)出身の画家画家北川民次(1894~1989年)の二人展。主催者によると互いに面識はなかったというが、こうして作品が並んでいるのを見ると、国内にとどまらない活動や題材選びについて大いに共通点があるように感じる。
北川民次の生誕130年に合わせ、世田谷美術館では11月17日まで「北川民次展―メキシコから日本へ 」展を開催中。「ときの忘れもの」での二人展もこれに合わせたものという。静岡県出身のアーティスト二人の作品が東京のギャラリーで顔を合わせている。静岡県人として、感慨深い。
北川民次13点、柳澤さん15点。北川作品はギャラリー3階が中心で、メキシコの人々を描いた1970年前後のエッチングなど。代名詞的存在でもある巨大なバッタが登場する作品もある。
柳澤さんは「動物のことば」シリーズの新作を出品している。「いのち」と名付けられた作品は、ロシアのウクライナ侵攻から着想したとおぼしき内容。水平線が見える荒地の向こうに揺れる炎、大地を蹂躙する戦車。あるいは居宅を奪われた人とおぼしき影。事態の切迫がひしひしと伝わる。こうした題材を2024年にあえて作品化するところが、実に柳澤さんらしい(は)
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■ときの忘れもの
住所:東京都文京区本駒込5-4-1 LAS CASAS
問い合わせ:03-6902-9530
開館:午前11時~午後7時(入館無料)
会期:11月9日まで