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ママは「生ききる」と決めた。筋肉が痩せ衰え、やがて全身が動かせなくなる難病ALSと向き合う

OKITIVE

筋力が衰え、やがて全身が動かせなくなる難病・ALS。 沖縄県浦添市に住む浦崎綾乃さんは病と向き合い、「生ききる」と決めた。 夫や子どもたちと紡ぐ日常。その姿を追いながら、「生ききる」という選択の意味を見つめた。

コロナ禍に届いたメール

浦崎綾乃さんは、運動神経への指令が脳から伝わらなくなり、筋肉が痩せ衰え、やがて全身が動かせなくなるALSの患者だ。

視線を動かして文字を入力する意思伝達装置を使い、綾乃さんはメールを送ってくれた。

私たちが初めてコンタクトをとったのは2020年。在宅で療養する難病患者を取材するなかで、綾乃さんから一通のメッセージが届いた。

ALSは、患者にとって精神的な苦痛が強いともいわれる。知性や意識が保たれたまま、自分の体の中に閉じ込められていく感覚――その重さは計り知れない。 当時はコロナ禍で、直接会うことはかなわなかった。

金城わか菜アナウンサー 「綾乃さん、沖縄テレビの金城わか菜です。何度もやりとりさせてもらってやっと会えました」

現在、綾乃さんは自宅がある沖縄県浦添市内のシェアホームに入居し、訪問介護のサービスを受けながら暮らしている。 夫・和彦さん 「まばたきが鈍くなってきて、コミュニケーションが難しくなっています」 歯科衛生士として働いていた綾乃さんがALSを発症したのは34歳のときだった。体の異変を感じてからわずか1年半で自力呼吸ができなくなり、「延命治療」の選択を迫られた。

ALSの進行によって呼吸が困難になった綾乃さんは、延命治療を選ぶかどうか葛藤した。 「家族に迷惑をかけたくない」「延命治療をしなければ余命2年」――恐怖と迷いのなかで揺れ動く思いがあった。 夫・和彦さん 「とにかく一番近くで、自分が支えようと思いました。延命したあとに家族に迷惑をかけることは気にしなくていいよ、と声をかけました」

沖縄県の内外で同じ病を患う人たちと交流するなかで、綾乃さんの気持ちが少しずつ軽くなっていくのを、和彦さんは感じていた。

夫・和彦さん 「体は動かないかもしれませんが、それなりに楽しく生活できるという言葉や、肩の力を抜いていいんだという言葉が、綾乃の心を少し楽にしてくれたと思います」 体の機能が徐々に衰えていくなかでも、家族旅行や海水浴にもチャレンジした。

夫に送った4文字

しかし2022年、新型コロナに感染し入院を余儀なくされた。 体調が戻り次第家族のもとへ帰るつもりだったが、ヘルパーが確保できず在宅介護が難しい状況が続いた。 当時、小学生だった湊太くんは、病院の規則でママに会うこともできなかった。

湊太くん 「寂しいことが多かったです」

そんなある日、綾乃さんから夫・和彦さんに届いたのは、「あいたい」という4文字のメッセージだった。

夫・和彦さん 「ちょっとびっくりしました。ぐっとくるものがありました。なかなかヘルパーが見つからず、事業所もなかなか決まらない時期でしたが、待ってくれている綾乃がいるので、がんばらなきゃと思いました」

およそ2年半に及ぶ入院期間を経て、2023年11月、綾乃さんは浦添市内のシェアホームへ入居することができた。 夫・和彦さん 「下の子は近くの小学校に通っているので、学校が終わったら『ママのところに行くね』というのが日常になりました」 湊太くんには、シェアホーム内に『定位置』があるらしい。 湊太くん 「こんな感じで、一緒にゲームをしています。楽しかった?たぶん楽しいと思ってくれていると思います」 姉の結衣さんも、学校の出来事や部活の話などを、ママに日々報告している。 結衣さん 「学校の話とか、行事ごとの話とか、テストの結果を報告したり、たまに部活の話もします」 金城わか菜アナウンサー 「お母さんが反応したときって、どんな感じ?」 結衣さん 「やっぱりうれしいです」 長女の結衣さん、ママと暮らすなかで将来の夢ができた。 結衣さん 「私は看護師になりたいです。困っている人を助けたいなと思ったからです」

夫・和彦さん 「できるだけ家族の時間を増やしたいです。濃い時間を過ごすことが、子どもたちにとっても良いことだと思いますし、綾乃もそれを望んでいます」 かつて綾乃さんが寄せてくれた言葉が、今も私の心に残っている。 綾乃さん 「私はあの時に生きる決断が出来て良かったと思っています。私の感覚や意識、思考は損なわれることはありません。病気は私のすべてではなく、ひとつの側面でしかないからです。一度きりの人生、へこたれず、しぶとく、楽しんで生き切りたいと思います」          ※2020年メールより

何よりも、子どもたちの表情が語っていた。お母さんのぬくもりは、何にも代えがたいものなのだ。延命治療を選ぶことも、選ばないことも、どちらも尊重されるべき選択だ。 今の綾乃さんと家族の姿が、誰かの心にそっと寄り添い、そっと背中を押す存在になることを願っている。

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