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障害を乗り越え社会とつながる 釜石市の小笠原さん、厚労大臣表彰 市長に報告

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす


 身体などのハンディキャップを克服し社会活動を継続・活躍している人や、障害者の自立支援に貢献してきた人らを対象に国から贈られる「障害者自立更生等厚生労働大臣表彰」。2024年度の第74回表彰では、自立更生者として釜石市の小笠原拓生さん(57)が選ばれた。9日に小野共市長を訪ね、受賞を報告した。目に障害を抱えながらも経営者として力を発揮し、ボランティアや音楽活動などにも取り組む小笠原さん。「私でいいのかと思ったが、一生に一度…。周囲の支えあっての活動が認められたものだから、励みにしたい」と穏やかな笑みを浮かべた。

小野共市長(左から2人目)に受賞を報告した小笠原さん(同3人目)


 今回の表彰では、全国から自立更生者12人、更生援護功労者32人、身体障害者等社会参加促進功労者1人が選ばれた。小笠原さんは、自らの障害を克服し自立更生をして他の障害者の模範と認められ選出。このほか、岩手県内から更生援護功労者として1人が選ばれた。東京會舘(東京都千代田区)で昨年12月12日に表彰式が開かれた。

 小笠原さんは、東京で働いていた20代前半の頃に難病のベーチェット病を患い、弱視の期間を経て20代後半に視力を失った。その後、30歳で古里・釜石にUターン、家業のビルメンテナンス会社「協立管理工業」で新たな生活を始めた。2011年の東日本大震災では只越町にあった社屋が被災し、会長や社長を務めていた親族らを亡くした。建物の清掃管理業務、公共施設の運営管理(指定管理者)などを担う中で、自らが代表取締役に就任し、事業を継続させた。施設の維持に努めると同時に、パートを含めた社員約100人の生活も保持。現在は野田町に拠点を移し、事業を続ける。

 本業の傍ら、“当事者目線”の社会活動にも力を注ぐ。2000年に点訳グループ「楽点舎(らくてんしゃ)」を立ち上げ、市広報の点字版作成に協力。視覚障害者に役立つ情報を届けている。釜石視覚障害者福祉協会の事務局も担い、障害がある人の社会参加活動を後押し。さらに、地元の音楽仲間とアコースティックバンド「ブラック★かまリンズ」を結成し、メインボーカル兼ベース担当として活動。イベント出演を通じて地域を盛り上げている。

福祉イベントで「楽点舎」の活動を紹介する小笠原さん(中)=2023年9月に撮影


ブラック★かまリンズのステージ(バンドのFacebookより)


 市役所を訪れた小笠原さんは「意図せず障害者となったが、克服しようと前を向いて進むことは、震災で被災したまちを復興させていく気持ちと通じるものがある」と振り返る。「自分にできることを増やすことが力になる」と強調。社会とつながり、人脈を築く中、「関わってくれた人たちの気持ちが一番の力になっている」と感謝の意を示した。

 この日は、ボランティアや音楽活動の仲間でもある市職員、岩鼻千代美さんのサポートを受けて市役所を訪問。小笠原さんは「手や肩を借りると、その人のあたたかい気持ちが伝わってくる。その気持ちが自分の中で種火のように残り、燃えているように感じる。そこから力を得て、できることを増やしてきた」と笑顔を見せた。

小野市長ら市関係者に表彰状や式の写真を披露した


小笠原さん(手前)の人柄を伝えた岩鼻千代美さん


 表彰式の後、皇居にて天皇、皇后両陛下に拝謁した小笠原さん。「私にはないと思っていた表彰だが、こんな機会は一生に一回しかないと思う」と感激を語った。緊張の中でも、「両陛下がかがんで目線を合わせられ、親近感のある話し方で柔らかく笑っている印象を受けた」と思い起こし、目尻を下げた。

 受賞を「励みにしよう」と話す小笠原さん。「これからもできることを増やしていく」とポジティブな姿勢は変わらない。「なんでも楽しそう」という岩鼻さんの言葉にうなずきながら、「社会との関わりを広くしていきたい」と晴れやかに笑った。

 小野市長は「ぜひこれからも、いろんな分野でご活躍いただけたら」と期待を込めた。

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