【全編文字起こし】武田砂鉄と石丸伸二、あの時何が起きていたのか?もしも砂鉄さんが「情熱大陸」に出たら・・・
「奇奇怪怪」のTaiTan(Dos Monos)と玉置周啓(MONO NO AWARE)がお送りする番組。
今週も武田砂鉄さん登場。玉置周啓、無念の完封勝利
Taitan:はいということでね・・・。すごくない?この始まり。
玉置:何が?
Taitan:ややもあって・・・「はい、ということでね」って
玉置:それはもう編集次第だからわからないだろ
Taitan:脳盗ってすごい収録の仕方をしててね。もうぶっちゃけて言うと、砂鉄さんの回を前編・後編収録して、その後にそれぞれ2週分オープニングトークを取りますみたいな感じなってるから。マジでタランティーノみたいになってるわけ。今俺はどこで放送される発言なのかわかってないから。
玉置:じゃあ駄目じゃん
Taitan:「はい、ということでね」って、ややもあって、0秒00から始まるんだよ。これが令和なんですみたいな。
玉置:そんなことないけど
Taitan:タランティーノの衝撃ってそういうことだったわけでしょ。レザボア・ドッグスですみたいな。
玉置:絶対違うだろ。まあ10月20日ですけども。
Taitan:そう、10月20日。皆さんいかがお過ごしでしょうかっつってね。どうなの、周啓は?
玉置:いや、もう未来のことなんてわからないすけども。
Taitan:寒いなみたいな感じ?
玉置:なんだよそれ、だせえな!今後もずっとそうだろそれは。2月までずっと寒いんだから。
Taitan:うん。
玉置:まあ今回はこれで俺が喋るの最後になると思いますけど。
Taitan:なぜなら、時系列がシャッフルされているので。これから起こる未来のことを現時点の周啓くんは知っていると。これはすごいことですよ。
玉置:だからタランティーノってすごいよな
Taitan:シャッフルされてんだから。これマジだぜ、マジで周啓くんこっから本当に一言も喋らないんだよ。マジで未来を変えてくれ!みんなの力で!
玉置:なんだよそれ!
Taitan:マジで完封勝利を達成したんだよ!
玉置:なんで俺とお前が戦ってんだよ!
Taitan:みなさん、未来をちょっと目撃してください。砂鉄さんがゲストです。
♪前TM
「めざましくん」を来日アーティストから回収したい砂鉄さん
Taitan:ラッパーのTaitanです。
玉置:MONO NO AWAREの玉置周啓です。
Taitan:ということで今週もゲストに武田砂鉄さんが来てくださっております!
砂鉄:よろしくお願いしますね
Taitan:テレビ磁石というね、新刊を出したばかりの砂鉄さんでございますけれども。
砂鉄:ちょっとさっきハウスダストで喉がやられておりまして、今回はこれぐらいの声でいきますけどね。
Taitan:ちょっと喋りすぎなのかもしれません、いよいよ引っ張りだこで。でも、砂鉄さんあれなんですよね。本当に今引っ張りだこってちょっと言ったんですけど、実は週に1回ぐらいしか番組はやっていない
砂鉄:そうですよ。もうTBSは金曜夜10時からの生放送1時間半のみですからね。
Taitan:なんでこんなに露出が多いイメージなんだろうかっていう。
砂鉄:どうなんでしょう、ラジオが好きだぞっていう、とりわけTBSラジオが好きだぞという積極的に「今週どんなのがあるのかな」っていうふうにアクセスしてる人からすると「またこいつ出てきた」っていう感じになるんだけど。蓋を開けてみると実はそんなに出てるわけじゃないんすけどね。
Taitan:いや、でも砂鉄さん僕の体感ではやっぱりその本の連載と本の帯と、あと何かしらの映画のコメントとかで、2日に1回はなんかしら名前を見ますね。
砂鉄:ちょっとやりすぎですかね。
Taitan:いやいや、でもそれで僕すごいなと思うのが、要は消耗しないのがすごくないですか。名前が。
砂鉄:これポイントですけどね、やっぱり「真剣に読む、真剣に見る」という。これはポイントですよね。これね、やってないやつ結構多いんですよ。
Taitan:でしょうね
砂鉄:それはやっぱりね、わかるんですよ。本の帯でもね、映画のコメントでも。サラッといったなと。名前と関係性だけでいったんじゃないかなっていうのが、何となくわかるんですよ。
Taitan:うん、わかります。
砂鉄:それは多分本好き、映画好きから見ると、匂い立つんですよね。
Taitan:でもそれはすごくわかって、砂鉄さんはそれこそ前回出てくれたときにこんな名言を残していて。「その本に向き合う4時間だけは、その作者のことを本気で好きになる」と。
砂鉄:あー、いいこと言ってる
Taitan:そう!だから俺らの番組に出てる時もその1時間だけ俺らと向き合ってるから。その1時間だけは本当なんですよね、砂鉄さんは。そこがやっぱりすごい。
砂鉄:いやいやいや、そうですか
Taitan:砂鉄さんは、なんでそんなに対象に向き合えるんだっていう。ともすれば『テレビ磁石』で取り上げるタレント、政治家、著名人についても、どうでもいいと思えちゃうじゃないですか。でも、砂鉄さんはそうしないじゃないですか。それってなんでなんですか?
砂鉄:本の中でめざましテレビの軽部アナウンサーのこととかも書きましたけど。みんな軽部アナウンサーのことは多分さーっと見るわけじゃないすか。「なんか出てんなー」みたいな。
だけどあの人のテレビ見てると、なんか「インタビュー力がすごいぞ」みたいに打ち出されてるけど。ちょっと僕の持ってるインタビュー力とは違うなみたいなことを考えたときに、彼のインタビューをちょっと研究し始めるみたいな。そういうちょっと自分の中にある違和感を入口にという、そんなに変わったことしてるわけじゃないんですよね。
Taitan:面白いですよね。そして極めつけは「インタビューではなく、対談と言い張る軽部」っていう。この切り口!
砂鉄:そうなんですよ。これはやっぱりトム・クルーズにね、「Do you remember me?」って言っちゃう。これなかなか踏み込みすぎだなと思うんですよね。
玉置:確かに
砂鉄:それは別に回ってないときの挨拶だったらいいけど、そこから入るってなったらどうなのかなって。僕トム・クルーズインタビューしたことはないけど、そこを残すあの感じっていうのが軽部さんであり、めざましテレビっていうあの世界なわけじゃないすか。
Taitan:メタメッセージが多分に含まれてますよね。「Do you remember me?」っていうのは僕のこと覚えてますかじゃなくて、俺とトム・クルーズは親しいんだという。メタメッセージしか漂ってこないと。
砂鉄:本当にいろんな人に人形渡してるじゃないすか。
Taitan:「めざましくん」ですね
砂鉄:本当なんかね、申し訳ないなとは思ってるんですよね。来日した人たちに。
Taitan:思う必要ないですけどね、視聴者なのに。
砂鉄:成田か羽田で回収したいなと思ってるんですよ。「いいよ、持って帰らなくていいよ」と。
Taitan:なるほど、荷物の邪魔にもなるし
砂鉄:そうそうそう。だってあれ可哀想じゃないですか。人形持たされて「うん、かわいいね」とかって言わされて。
Taitan:持って帰らないと思うけどなあ、あれは
砂鉄:多分トム・クルーズは現場の見えるところで「ノー」とは多分言わないと思うんですよね。自分たちのスタッフに渡して、取っといてっていう風に言うけど。日本を離れる時に、いろんな荷物があるときに「ちょっとどうする」ってなったときに・・・。
Taitan:面白いなあ
砂鉄:だったらもうそこを僕らが行って「うん、いいよ。もうこっちでもらうから」っていう。ボン・ジョヴィとかが持ってるとさ「いや、もう良いよって。こっちでもらうよって」いつも思っているんですけどね。成田にあるWi-Fiボックスみたいとこに、ぬいぐるみボックスを置いて回収しとけばいいんですよ。
武田砂鉄と石丸伸二、あの時何が起きていたのか?
Taitan:確かに、それ意外といい事業かもしれないですね。そんなね、軽部さんを見てぬいぐるみの行方にまで想像力が膨らむ石丸っ・・・石丸さんじゃないわ!これはマズい
砂鉄:ちょっと、それはマズいですよ
Taitan:でもこれが聞きたくて仕方ないんです。砂鉄さんと石丸さんね、こないだの都知事選特番のつばぜり合い。あれ何よりもバズった動画だと思うんですけど、あのとき何が起きてたのかっていうのを僕は今日砂鉄さんに聞きたいんですよね。
砂鉄:いや別にそんなに何が起きてたっていうわけでもないと思うんですけど。僕自身あの方のいろんな動画とかインタビューを、選挙特番の前に読んだり見たりしてて。ああいう選挙特番っていろんな放送局にバトンタッチして放送を繋ぐんで、3分とか4分なんですよね与えられた時間っていうのは。これものすごい厳密に決められてて、それを守らないとやっぱり次の放送局に迷惑かかっちゃうから。多分一つの放送局を聞いてる人からすると「あれ、もう終わりなの」ってこっち側が切ったように思えるんだけど、元から決まってるところなんですよ。
Taitan:うん。
砂鉄:3分4分ってなると、一人質問できて一問かなっていうくらいの感じなんで。あらかじめいろいろ彼のインタビューとかを読んでだったら「とにかく僕はミラーリングをするんです」と。つまり「言ったことについて、そのまま返してみるんです」みたいなことを言ってたんで。その後、各社のメディアの対応見てても、本当にミラーリングっていうか、質問に答えないという形だったじゃないですか。
じゃあ、せっかく質問してもミラーリングで返されちゃうんだったら、こっち側の質問を彼が書いた本の中の引用から問いかけてみたら、ミラーリングはできないんじゃないかなっていう風に思ったんですよね。
だから彼の本を読んで「これはどうなのかな」っていう感じで思ったところをぶつけてみたら、やっぱり自分の書いたことだからミラーリング的なことはできなかったのかなと。だからああいう感じでちょっ戸惑われたのか、少しこちらに球を投げてきたのかなっていう感じになったってことなんじゃないすかね。
Taitan:あの反応自体は想定済みだったんですか?
砂鉄:どうですかね、その前にチキさんの方が最初に質問されてて。それが結構ミラーリング的な感じで「手応えはどうでしたか」みたいなことを言ったときに「手応えってどういうことですか」みたいな。こういう感じで対応されるんだろうなって思ったときに、彼の本の話をしたら少し今までと違った返しにはなるんじゃないかなとは思いましたけどね。
Taitan:なるほど。でもそれこそ4分とかの尺で質問をぶつけるって、やっぱり大変じゃないですか
砂鉄:いやあ大変だと思いますよね。
Taitan:それこそ砂鉄さんもすごい大変だったと思うんすけど。例えば、ともすればあの一連のやり取りを見て、これは実際にあったコメントなんですが。
「石丸さんが切り抜いて彼の言説を広めたのと同じように、砂鉄さんも切り抜いて彼にぶつけているんじゃないか」みたいな、そういうコメントもあったと思うんですけど。あの4分の尺だったらしょうがないと思いつつ、そういうコメントに対してどう思ったんですか。
砂鉄:まあ、ああいう時間が決まってる以上、そういう反応になるのは致し方ないと思いますし。彼は何か挑戦者のように出てきましたけれども、もう市長もやっていて、ものすごい権限を持っている人だし。
そこで、もちろん知事になったとすれば、ものすごいさらに大きな権限を持つわけだから、やっぱりある程度厳しい質問に答えなければいけない立場になるわけですよね。
別に何か「メディアがすごく厳しい質問をした」とかっていうことではなくて、彼自身はいろいろな問いに対して答えなくちゃいけないっていう立場であったので、それに対してメディアが云々かんぬんっていう感じになりすぎてたような気はしますけどね。ただ淡々と答えてくれたらよかったのにという風に思いますけどね。
Taitan:でも僕はすごい気になるんですけど、今後多分ああいう人ってどんどん生まれてくると思うんすよ。
僕とかも、30歳のそれこそコンテンツとか作ってる人間として、すごい体感として思うのが、「切り抜きが加速するだろう」っていうのが確実にあるじゃないですか。それは別に「テレビ番組を切り抜いてバズりました」くらいの話だったらいいけれども、石丸さん的なやり方で人気を獲得していくっていう手法は、おそらくどんどん増えていくと思うんすけど。砂鉄さん的には何かそういう存在がどんどん増えてくことに対してはどう思ってるんですか?
砂鉄:でもそれに対してこうやって本を書いたり、ラジオである程度長尺で喋ったりするっていうことをこっちが守っていけば。別に流行ってるものが短くなろうが、こっちが割と長めのものを提示していくというか。割と負荷のかかるものをギュッと押しつけていくっていうことを守れば、別にそっち側が短くなろうが、コンパクトになろうが、あんまりそこは関係ないんじゃないかなと思いますけど。
Taitan:なるほど。でも短くコンパクトなものでどんどん流通していく、その発信元の人がどんどん影響力を増していく、支持基盤もどんどん拡大していく、認知も急激に拡大させていく。
っていうのに対して、それこそラジオとかを磁場にしてると「ゆっくりコミュニケーションする、意図をちゃんと伝える」みたいなやり方がちょっとこれ割に合わないんじゃないかみたいなことは思わないですか?
砂鉄:いや、それは全く思わないですけどね。今流行ることって割とすぐできるというか、話題になることってすぐにできると思うんですよね。
僕がここでタイタンさんに水をぶっかけて、3人で揉めましたっていう回が放送されたとすると「何かとんでもないことが起きたぞ」っていうことって作れるわけですよね。果たしてそれがどこまで流行るかっていうのは別にして、極端な行動を起こしたりとか、極端なことを言う、それをコンパクトにまとめて流行らせるってことはできる。でもそれを続けていくことってのはなかなか難しいわけですよね。僕はその突発的に流行るってことにはあまり興味がなくて。
今やっぱり一番稀有なことというか、なかなか達成しようと思ってできないことっていうのは、僕は「まだやってる」っていうことだと思うんすよね。「ずっとやってる」っていうことっていうのは、すぐに達成できないですよ。文字通りの話だけど、なぜならずっとやってなきゃいけないわけだから。
先週の回で「森本毅郎スタンバイ!」の代打もやりましたねって話してくれましたけど、あの番組ってもう9000回を迎えるわけですよ。30何年間っていう、その凄みって何かって言ったら、もうまさに文字通り「9000回やってる」っていう。まだやり続けてるっていうこの価値っていうのは、今のそういう流行り廃りとは合わないけど、その価値は絶対的に大きなものであり続けるっていう風に僕は思ってるんですよね。
Taitan:なるほどなあ
砂鉄:だからこういうラジオっていう媒体だったり、雑誌で原稿書く、本を書くっていうことっていうのも、今割に合わないっておっしゃってましたけど、確かに割には合わないんだけど。別にそこの今の「割」みたいなものに合わせる必要はあるのかなっていうことは思ってますけどね。だからあんまりバズった存在にならないようにして、何となく「あいつまだやってるよね」っていうのがベストかなという。
Taitan:なるほど。とはいえ砂鉄さんって、それこそTBSラジオとかがすごい好きな「ある層」からしたらめちゃくちゃバズってる存在だと思うんですよ。そういうのってどう思ってるんですか?
例えば「自分の発言がすごく受け入れられちゃってるな」みたいな。そういう感覚とかも僕の勝手な想像ですけど、あるんじゃないかなって思うんですけど。
砂鉄:本当にそこにすがって、「その人たちのために言おう」って思うようになったら、そこは局地的にずっとバズり続けることができるんでしょうけど。だからそれはあんまり考えすぎないようにして、とにかくそれを「外していく」っていう。
Taitan:何で外せるんですか?何を捨ててるんですか?
砂鉄:意識してるのは・・・例えばタイタンさんも玉置さんも僕はお二人ともSNSをフォローしてないですけど。2人が何をしてるのか、何を考えて何を発信してるのかって知りたいんですけど、でもフォローしなくていいなと思ってるんですね。それはフォローしちゃうと、いっぱ入るでしょ。現状とか。だから僕は知りたい人の情報って意外と取らないようにしてて。
Taitan:あーでもそれは面白いですよね
砂鉄:そうすると、何かのときにいきなり入ってきたりとか。いざっていうときに入ってきたりとか。そこの定期摂取をあえてしないっていうか。だからXのフォローしてる人とかも、大半が情報を知りたい人だけど「この情報は別に知りたくないな」っていう人の情報も入るようにしていて。いま情報のベストミックスを作りやすいじゃないすか。だから今回『テレビ磁石』でわざわざ別に見る必要のない番組を見るっていうところもそうなんですけど「自分を常にやや不快な状態にしておく」っていうのは意識しているかもしれませんね。
あまり声高には言えないけど「この番組つまんねえな」っていうラジオ番組とか、本当に毎週チェックしますから。だから面白い番組を聞く時間がないんですよ。
Taitan:でもそれめちゃくちゃ面白いって思っていて。僕もとあるそのベストセラー作ってますみたいな編集者の人が言ってた、情報摂取術で面白いなと思ったのがあって。
『なぜさおだけ屋は潰れないのか』とかを作った人が、要は自分のTwitterのアカウントだか裏垢だったかを「練馬区に住んでいる、35歳の中年の男」みたいな設定でアカウントをフォローしてるんですって。ゴールデン帯の番組とか、プレゼントとかしてくれるアカウントとか、有吉弘行みたいな「ザ・真ん中のもの」しかフォローしないようにして自分がずれないように、情報のコアなところに流れていかないようにしてるって言ってて。なんか砂鉄さんの話に近いものを感じましたね。
砂鉄:だから本屋さんに行くにしても、大好きな本屋さんに行くのも大事ですけど。ちょっと郊外の駅の中にあるような、売れてる本しか置かないところで、どういう興味が生まれているのかっていうのを見るっていうのは大事で。自分にとってやや不快なものをいかに体に入れ込むかっていうのは、ものすごい意識的にやってるかも知れないですね。
Taitan:いやでもラジオまで聞いてるっていうのはちょっとすごいな。ラジオって一番聞けないんですよね僕。面白くないラジオとか特に。
砂鉄:面白くないラジオはいいですよ。面白くないラジオは「面白くないなー」って思って聞けますからね。
Taitan:それどうするんですか?でも、わかるっちゃわかるか。ちょっと「当たりにいく」という感覚なのかな。
砂鉄:なんか「この人の自意識と見せ方がちょっと変わってきたな」みたいな、そういうのを観察してるんですよ。だってもう面白いラジオの人って毎週面白いじゃないすか。
毎週面白いならまあいいかって、ちょっと思っちゃったりするところもあったりして。
Taitan:それは倒錯しきっているなあ。でも「つまらないっていう状態」って、つまらないじゃないすか、不快ではあるじゃないすか。忙しかったりすると、そのつまらなさに耐えられなくなることもあるんじゃないですか?
砂鉄:ありますけど、でもそのつまらなさに対して、ものすごい人数が興奮してたりっていうことがあったりするわけじゃないですか。例えば音楽にしてみても「なんでこんなペラペラの歌詞を歌い続けてるような人にこんだけの人が熱狂するんだろうか」ってなったときに、自分の腹の中にある考え方とその目の前に広がってる光景っていうのが、完全にずれてるっていう。
僕ちょっと最近はやめちゃったんですけど「行きたくないライブに行ってみる」みたいな連載もやってて、結構いろんなミュージシャンのライブに行って。この周りの熱狂っていうのはどうして湧き起こるんだろうかっていうことを見ると、自分が見に行ってるような「クラブクアトロに半分しか入ってませんでした」みたいなライブよりは、もう10倍、20倍の観客が入って熱狂してるわけだから、それを見るのはすごく楽しいですよね。
Taitan:だからやっぱり対象自体はつまらなくても「その対象を支える社会や力学には面白さを見いだせる」っていうのは、本当にそうなんですよね。
砂鉄:そうですね。大きな熱狂が生まれてるっていうことは、我々がその熱気を理解できなかったとしても、そこには絶対何かあるわけですよね。分析するというか、着目すべき点がね。それを見るのが割と好きですけどね。
武田砂鉄の「情熱大陸」
Taitan:やっぱ「観察者としている」ということなんですかねやっぱ。砂鉄さんがいわゆる演者としての需要もものすごい今高まってると思うんすけど。それこそテレビのコメンテーターはやらないと言っていたけど、今後はありえますか?
砂鉄:最近あんまりもうオファーも来なくなりましたけど、こういうこと(『テレビ磁石』)を書いてるからなのかなっていう思いますけどね。あと「ひるおびを見に来る人」ってのは気になってんですよね。
Taitan:「ひるおび」って観覧あるんですか?
砂鉄:観覧があるんですよ。「ひるおび」を観覧する人ってどういう人なんだろうっていう。そんなに突出した大芸能人に会えるっていうわけでもないし、日々のニュースを淡々とやるわけですけど。妙齢の女性たちが多いのかな。「笑っていいとも」を見るとか、「ごきげんよう」を見るっていうのとはちょっと違う部分だとは思うんですよね。
Taitan:そうなんですね。砂鉄さんコメンテーターをやらないじゃないですか。でもテレビには当然いろんな役割があるじゃないすか。じゃあMCやってください、じゃあインタビュアーとして番組持ってくださいみたいな。きたらどうしますか?もちろん内容によりますけど
砂鉄:でもテレビの現場ってなんかスタッフがいっぱいいるじゃないすか。ラジオはもう3人ぐらいしかいないですけどね。役割がぱっと見たとき分かるじゃないですか。何かテレビに何度か出たことありますけど、「誰!?」みたいな人がいっぱいいる状況は多分どの番組でも一緒だと思うんで。あれがやっぱり信用置けないんですよね。
Taitan:やっぱりそうなっていくんですね
砂鉄:でも例えば皆さんもそうだと思いますけど、本読んでてこの人すごい素敵だな、尊敬してるなっていう人がテレビに出て、その尊敬度が増したことってのは多分ないんですよ。
Taitan:究極の『テレビ磁石』いってるなあ
砂鉄:統計上はそうなんですよ。あれはどんなにクレバーな人でも、そのクレバー度がやや下がるように作られてると思うんですよね。
Taitan:なるほど、自分の「箔」とのトレードオフにあるという。
砂鉄:そうなんですよ。
Taitan:でも砂鉄さん「情熱大陸」とかあると思う
砂鉄:ないですよ。
Taitan:いや、あるんですよ!砂鉄さんって自分自身の立ち位置について、客観視ってどのくらいできてる自信ありますか
砂鉄:どうでしょうね。それはあんまりできてないかもしれないですけど。
Taitan:これは俺ちょっと「砂鉄ウォッチャー」やろっかな。逆に。砂鉄さんよりもメタにいくという、「砂鉄ウォッチャー」。いやもう砂鉄さん「だいぶ」な感じしますけどね。
砂鉄:全然そんな自覚ないですけどね。ラジオに密着されたって、別に赤いランプ点いてないときはただ黙ってるだけですよね。そんなにチームを仕切ってるわけでもないし。
Taitan:「行きたくないライブに行く砂鉄さん」「嫌なラジオを聞く砂鉄さん」「ひるおびを見てニヤニヤしてる砂鉄さん」
玉置:なんだよその番組、誰が見たいんだよ!
砂鉄:まあ、そういう目で情熱大陸見てますからね。あの情熱大陸の最後の一言ね、CM明けのね。
Taitan:葉加瀬太郎が砂鉄さんを演出にかかるわけですよ。
砂鉄:「ここで決まった」っていう一言でね、あれ見て僕はいつもズッコケてますから。
Taitan:いやオチじゃないんですよ。でも砂鉄さんが原稿とか書きながら頭抱えてるCMとか見たいね。
砂鉄:でもお二人が情熱大陸でたら、情熱大陸ってほら、「ちょっとカメラここ入らないでください」っていうのあるじゃないですか。あれ、どっちいきますか?
Taitan:いや、僕はもう演じきりますよ。スーパークリエイターを
砂鉄:入らないでくださいっていう時間作りますか?
Taitan:作ります
砂鉄:あー、そっちタイプですか。周啓さんはどうですか?
玉置:僕はNGなしですよ。撮れ高がないんで
Taitan:やっぱり緊張関係が取材者との間に生まれてるっていうのが「ちょっとここはやめてください」みたいな。
砂鉄:でも本当それやったらでも情熱大陸にサービスしすぎだと思うんですよ。
Taitan:あれはサービスするものじゃないですか。頭抱えたり、タクシーで眠ったり、ちょっとスタッフともめてみたり。やっぱそれでこそですよね。
砂鉄:いや、地味だと思うよ。
Taitan:いや、その地味さがいいみたいな文脈あるぞこれ。
玉置:ずっと同じ表情の砂鉄さんが映ってる
Taitan:インタビュアーに「これは楽しいんですか」とか言いながら進む情熱大陸良いかもしれない。「情熱大陸vs武田砂鉄」みたいな。絶対に本当の姿を見せない。
玉置:確かに『テレビ磁石』って、ある意味テレビを見た感想というスタイルを崩してなかったけど、中に入ってみてそこでやり合うみたいなのを直接見てたらめちゃくちゃ面白いかもね。
Taitan:それを見て砂鉄さんが最後『テレビ磁石』のあとがきで、自分の情熱大陸・武田砂鉄回について書き下ろすわけですよ。これ決まったでしょ。本当にちょっと盛り上がっちゃいましたけど、最後にお知らせがあるということなので。
砂鉄:選挙の時期になりましたんでね。またTBSラジオで選挙特番というのをですね、投開票日の日の夜8時からをやるらしいですよ。またいろんな党の代表なり幹事長なり、キーパーソンとなる人と対話をするということになります。だからいっぱい本も読んで、付箋をつけて。
Taitan:最強ですね「こんなこと書いてありましたけれども」という。
ということで27日は脳盗がお休みなので、砂鉄さんに皆さん注目してください。ということで、砂鉄さん2週にわたって本当にありがとうございました。めちゃくちゃ面白かったです。
砂鉄:こちらこそ、ありがとうございました。
(TBSラジオ『脳盗』より抜粋)