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親の介護で悩む一人っ子のあなたへ!お金がない・仕事との両立など解決策を解説

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親の介護で悩む一人っ子のあなたへ!お金がない・仕事との両立など解決策を解説

一人っ子による親の介護の現実

親の介護は誰にとっても大きな課題となり得ますが、一人っ子にとっては介護の負担をすべて自分にかかってくるという現実があります。兄弟姉妹がいれば分担できる介護の役割や経済的な負担など、精神的な支えも、すべてを一人で背負わなければならないと感じている方も多いのではないでしょうか。

実際に、内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者人口は3,624万人に達し、総人口に占める割合は29.0%となっています。

この数字は今後も増加が見込まれており、一人っ子として親の介護に向きあう方々の数も増えていくことが予想されます。

一人っ子が抱えやすい介護の悩み

一人っ子が親の介護で直面する悩みは、実に多岐にわたります。まず最も大きな悩みは、すべての責任を一人で負わなければならないという精神的プレッシャーです。親の健康状態の把握から、病院への付き添い、介護サービスの手配、そして日々のケアまで、あらゆる決断と行動を一人で行う必要があります。

経済的な負担も深刻な問題です。在宅介護にかかる月額費用をすべて一人で負担することは、経済的圧迫となることも少なくないでしょう。。

さらに、介護に関する相談相手がいないという孤独感も大きな悩みの一つです。

兄弟姉妹がいれば、家族の介護の方針について話し合ったり、悩みを共有したりすることができますが、一人っ子の場合はそうした相手がいなかったり、家族以外に相談しにくいと感じ悩みを抱え込んだりしてしまう場合もあります。

加えて、時間的な制約も深刻です。仕事をしながら親の介護をする場合、有給休暇を使い果たしてしまったり、重要な会議を欠席せざるを得なかったりすることもあります。

遠距離・育児などの重なる負担

親と離れて暮らしている場合、遠距離介護という課題に直面します。例えば、片道数時間かけて毎週末実家に通うというケースも考えられますが、これは体力的にも経済的にも大きな負担となるでしょう。

また、遠距離介護では、親の日常的な変化に気づきにくいという問題もあります。週に1回しか会えない場合、親の体調の微妙な変化や認知機能の低下を見逃してしまう可能性があります。また、緊急時にすぐに駆けつけることができないという不安も常につきまといます。

それだけではなく、育児と介護が重なる「ダブルケア」の状況にある一人っ子も増えています。内閣府の「令和3年度男女共同参画白書」によると、ダブルケアを行う人は全国で約25万人と推計されています。

朝は子どもを保育園に送り、日中は仕事をし、夕方は親の病院に付き添い、夜は子どもの世話をするという生活は、心身ともに限界まで追い込まれることがあります。

「親の介護をしたくない」気持ちに対する罪悪感

「親の介護をしたくない」という気持ちを抱くことは、決して珍しいことではありません。自分以外に親の面倒をみる人がいないという事実が、逃げ場のない責任感として重くのしかかってしまう場合があります。

合わせて、介護疲れによる燃え尽き症候群(バーンアウト)も深刻な問題です。特に一人っ子の場合、介護の負担を分かち合える兄弟姉妹といった相手がいないため、ストレスが蓄積しやすく、うつ状態に陥る可能性も高くなります。

こうした感情を持つことに対して、周囲から「親不孝」というレッテルを貼られることを考えてしまうかもしれません。しかし、介護に疲れ、ときには投げ出したくなる気持ちになってしまうことは、人間として当然の反応です。大切なのは、そうした感情を否定せず、適切なサポートを求めることです。

一人っ子が親の介護で使える公的支援

一人っ子として親の介護に直面したとき、すべてを自分一人で抱え込む必要はありません。日本には介護を支援するさまざまな公的制度が整備されており、これらを上手に活用することで、介護の負担を大幅に軽減することができます。

「自分がすべてやらなければ」という思いから、利用可能な支援を知らずに苦労するケースもあります。ここでは、困ったときに活用できる主要な公的支援制度について詳しく解説します。

介護保険サービス

介護保険サービスは、65歳以上の高齢者(第1号被保険者)、または40歳から64歳で特定疾病により介護が必要になった方(第2号被保険者)が利用できる制度です。要介護認定を受けることで、原則1割から3割の自己負担でさまざまなサービスを利用することができます。

在宅で利用できる主なサービスには、訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所生活介護)などがあります。例えば、訪問介護では、身体介護として食事や入浴、排泄の介助を受けることができ、生活援助として掃除や洗濯、買い物代行なども依頼できます。

介護保険サービスの利用を開始するには、まず市区町村の介護保険担当窓口で要介護認定の申請を行います。申請後、認定調査員による訪問調査と主治医意見書をもとに、要支援1・2、要介護1から5の7段階で認定が行われます。認定結果に応じて、利用できるサービスの種類と量が決まります。

特に一人っ子にとって重要なのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)の存在です。ケアマネジャーは、介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成し、各種サービスの調整を行ってくれる専門職です。一人で介護のすべてを把握し、手配することは困難ですが、ケアマネジャーがいることで、適切なサービスを効率的に利用することができます。

介護費支援制度

介護にかかる経済的負担を軽減するため、以下のようなさまざまな費用支援制度が用意されています。

高額介護サービス費制度 1ヵ月の介護サービス利用料の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。この制度により、介護費用が際限なく膨らむことを防ぐことができます。 高額医療・高額介護合算療養費制度 1年間(8月から翌年7月)の医療保険と介護保険の自己負担額の合計が基準額を超えた場合、超えた分が支給されます。年齢や所得に応じて基準額は異なりますが、70歳以上の一般所得者の場合、年額56万円が基準となります。 住宅改修費の支給 手すりの取り付けや段差の解消など、在宅介護に必要な住宅改修を行った場合、20万円を上限として費用7割~9割が支給されます。一人っ子が親の家を介護しやすい環境に整える際に、この制度を活用することで負担を軽減できます。 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度 所得が低い世帯の場合、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームなどを利用する際、一定の要件を満たせば利用料の4分の1が軽減されます。

施設入居

在宅介護が困難になった場合、施設入居も有効な選択肢の一つとしてあげられます。親を施設に入れることに罪悪感を感じる方も多いですが、プロの介護により安全性と生活の質が向上し、介護者自身の生活も守ることができます。

主な介護施設には、公的施設として特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)があり、民間施設として有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームなどがあります。

施設選びでは、親の状態に合った施設を選ぶことが重要です。認知症の症状が強い場合はグループホーム、医療的ケアが必要な場合は老健など、それぞれの施設に特徴があります。可能であれば複数の施設を見学して検討しましょう。

また、施設入居後も定期的な面会を続け、施設の家族会に参加することで、ほかの家族と情報交換ができる貴重な機会となります。

介護と仕事・生活を両立するために活用できる支援制度

一人っ子が親の介護をしながら仕事や自分の生活を維持することは、想像以上に困難な挑戦です。しかし、日本では介護離職を防ぎ、介護と仕事の両立を支援するための制度や相談窓口が整備されています。

これらの制度や支援を適切に活用することで、介護による負担を軽減し、持続可能な介護生活を実現することができます。

介護休業制度

介護休業制度は、要介護状態にある家族を介護する労働者が利用できる重要な制度です。育児・介護休業法により、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して休業を取得することができます。

この制度は正社員だけでなく、一定の要件を満たせば契約社員やパート労働者も利用可能です。

介護休業中は、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。給付額は休業開始時の賃金の67%で、最長93日分まで受け取ることができます。

介護休業以外にも、介護休暇という制度があります。これは要介護状態の家族の介護をするために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで取得できる休暇です。

2021年からは時間単位での取得も可能になり、通院の付き添いや介護サービスの手続きなど、短時間の用事にも対応しやすくなりました。

さらに、介護のための所定労働時間の短縮制度も重要な支援策です。介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回以上の利用が可能で、短時間勤務、フレックスタイム制、時差出勤、介護サービス費用の助成など、会社が定める複数の措置の中から選択して利用することができます。

しかし、これらの制度があっても、実際に利用することへの心理的ハードルは高いのが現実です。人手不足から休業を取りづらい雰囲気があったり、キャリアへの影響を心配したりする人も少なくありません。

無理をしすぎないためにも、こうした制度を「自分のために使っていいものなんだ」と思えることが大切です。介護家族が安心して介護と仕事を続けられるようにするための仕組みですから、遠慮せず活用してみてください。

介護者のメンタルを守る相談窓口

介護によるストレスは、身体的・精神的に大きな負担となります。特に一人っ子の場合、家族の介護の悩みを相談しやすい兄弟姉妹がいないため、孤独感や不安感が強くなってしまう場合もあります。

こうした状況で重要なのが、適切な相談窓口を知り、必要に応じて利用することです。

まず身近な相談窓口として、地域包括支援センターがあります。全国に約5,300ヵ所設置されており、高齢者の総合相談窓口として機能しています。

介護保険の申請方法から、介護サービスの利用相談、虐待防止、権利擁護まで、幅広い相談に対応しています。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、無料で相談できます。

また、厚生労働省が運営する「こころの耳電話相談」では、働く人のメンタルヘルス相談を受け付けています。

介護と仕事の両立によるストレスや、職場での人間関係の悩みなど、幅広い相談に対応しています。メール相談やSNS相談も実施しており、電話をするのがつらい場合でも利用しやすい体制が整っています。

オンラインでの相談やカウンセリングサービスも充実してきています。

顔を合わせることなく、匿名で参加できるため、プライバシーを守りながら悩みを共有できます。一人っ子で身近に相談相手がいない場合、オンラインコミュニティは貴重な支えとなるでしょう。

今からできる介護への備え

事前の準備により、いざ介護が必要になったときの負担を大幅に軽減できます。また、家族が元気なうちに将来について話しあうことも大切です。

まず取り組むべきは、親の健康状態や生活状況の把握です。かかりつけ医、服用している薬、既往歴などの医療情報をすぐ確認できるようまとめておきましょう。

また、年金額、預貯金、保険などの経済状況も確認しておくことが重要です。エンディングノートを活用して、親自身に記入してもらうのも良い方法です。

合わせて、親の住環境の確認と改善も重要な準備です。転倒予防のための手すりの設置、段差の解消、照明の改善など、早めに対策を講じることで、要介護状態になるリスクを減らすことができます。

施設入居を検討している場合は、親の希望や身体・持病の状況に合わせてさまざまな施設を検討しておくのもよいでしょう。

加えて、定期的に連絡を取り、できるだけ会う機会をつくることも、将来の介護を見据えた重要な準備です。親の価値観や希望を理解しておくことで、介護が必要になったときに本人の意向に沿った対応ができます。

最後に、自分自身の生活設計も忘れてはいけません。介護費用の準備、自分の老後資金の確保、介護と仕事を両立できる働き方の検討など、長期的な視点で計画を立てることが必要です。

まとめ

一人っ子が親の介護を担うことは、すべての責任を一人で背負うという大きな重圧を伴うことであると考えがちですが、決して一人で抱え込む必要はありません。

在宅介護に困難を感じる場合は、介護保険サービスや各種支援制度、介護休業制度などの公的支援を積極的に活用し、地域包括支援センターへの相談や施設入居といった専門家の力を借りる方法も検討しましょう。

また、親が元気なうちから介護への備えをはじめ、相談窓口を利用してメンタルヘルスを守ることも大切です。一人っ子だからこそ、利用できる支援を最大限活用し、自分も家族もお互いに無理のない介護を実現していきましょう。

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