巨人、高梨雄平投手の連載日記「ナシさんのアリな話 鉄腕奪取」第2回! プロ野球現役リリーバー投手が語る「とある一日」【後編】
第2回 ジャイアンツのリリーバー・高梨雄平の、とある一日【後編】
実際に試合が始まっても、スイッチは全く入れない
『ラブすぽ』読者のみなさま、こんにちは!(こんばんはの人も!)。読売ジャイアンツの高梨雄平です。前回から連載をスタートさせてもらったこの企画。第2回は前回に引き続き、僕が試合のある日、どんな一日を過ごしているかをできるだけ細かく、紹介させてもらいます。
第1回では朝起きてから東京ドームに着いてアップを始めるまでを書かせて頂いたのですが、14時10分ごろから始まるアップが終わったら、食事を摂ります。実は今年に入ってから、試合前の食事で少し変えたことがあるんです。それが『OL盛り』です(笑)。『アスリート盛り』ではなく、ごはんはOLさんが食べるくらいの量。年齢的にも少し太りやすくなってきましたし、自分が「食べたい」と思う量の半分にするように気をつけています。
それで「やっぱり足りない!」と思ったらざるそばを半人前追加します。おかずはその日によって違うので、できるだけバランスの良いメニューを意識しています。
食後にコーヒーを飲んでカフェインを体に入れたら、一度仮眠を取ります。この段階では正直言ってスイッチはまったく入れていません。オフの日と同じくらいリラックスしています。ただ、先発で出る選手の中には、この時点でスイッチがしっかり入っている人もいますね。中には、一日中入りっぱなしの選手もいます(笑)。
僕の出番は試合の終盤だし、毎日早い段階からスイッチを入れていたら体がもちません。若いときは、もう少しギラついていた気もしますけど、今はいかに自分の出番に向けてピークを持っていくかを考えています。大事な場面で集中するために、逆にちゃんと「集中しない時間」を作る。これも、シーズン143試合を戦うためには重要なことだと思います。
仮眠の時間は特に決めていないけど17時から全体のミーティングがあるので、その前には起きるようにしています。ミーティングおわりにトレーナーさんの治療を受けて、18時から試合が始まります。
今年に関して言うと、ブルペンに入るのが4~5回くらいからなので、それまでは試合を観ています。ちなみに、この段階でもスイッチは全く入っていません(笑)。
基本的に、出番直前、「行くよ」と言われて一気にスイッチを入れる感覚です。なのでブルペンで肩を作るときも、MAXの集中を10だとしたら、5くらいですね。「そろそろ出社しようかな」くらいのイメージです。
ブルペンでは5球で肩を作る「集中するための練習」も大切
ブルペンでの球数は特に決めていませんが、僕は少ないほうです。キャッチボールをして、キャッチャーに座ってもらって投げるのは5球くらい。展開によっては1試合で4~5回肩を作らなきゃいけないこともあるので、球数がかさむと身体が持ちません。
僕はリリーフ投手にとってブルペンの球数って「不安の解消」でしかないと思っています。心配なピッチャーほど、たくさん投げる。そういうの関係なく、ブルペンでもしっかり投げる人は、僕が知る限りでは楽天時代に一緒にやらせてもらった久保裕也さんくらいしかいません。記憶では久保さんは毎日、27球くらい投げていたはずです。ブルペンでもちゃんと「練習」するんです。僕にはできないことなのでそれを見ながら「すごいな、この人……」と思っていました。
僕には“久保さん式”は無理なので、「投げないで、投げる練習をする」ことをいつも考えています。とはいえ、厳密に球数を決めて制限しているわけではありません。ただ、球数を投げることはいつでもできるけど、「減らす」ことは意識しないとできないんです。ベースを減らしておければ、たとえば急な登板でも焦らずにいける。つねに「減らしておく」ことで、どんな状況にも対応できるように準備しておくことを意識しています。
そうやって、いざ「投げる」となったときに集中力を一気に上げて、スイッチを100パーセントまで持っていく。もちろん、人間なので日によって上手く入らない日もあります。ただ、たとえば連載第1回で紹介した「朝のノート」も、集中力を高める訓練になっているんです。野球選手ならみんな、野球の練習をするのは当たり前。でも、実は「集中する」ことにフォーカスした練習ってあまりやらないんです。野球に限らず、たとえば勉強でもそうですよね。テストのために勉強すれば学力はつきますが、いざ本番で集中力が高まらなければ、実力は発揮できない。
僕たちプロ野球選手も、技術を磨く練習だけでなく、実際に試合に臨むうえで「集中する」ための練習は絶対にした方がいいと思います。僕自身、今年は集中の深さや回数、長さが伸びている気がしています。
ちなみに、試合展開で「もう投げないな」という日は逆にスイッチを完全に切ってしまいます。意識だけでいうと、もう次の試合に向いているくらい。もちろん、試合は観ますし、集中を切っていることを露骨に出すようなことはしません。なぜなら、ブルペンやベンチには、これから試合に出る選手もいるから。そういう選手の邪魔はしたくないですし、そこは気をつかいながら、自分が次の試合以降、良い仕事をするための準備をすることが大切なんです。
試合が終わったら、トレーニングをする日、しない日があるんですけど、トレーニングをした場合はドームを出るのが23時くらい。帰りの車内でその日の映像を見て、メカニックやバッターの反応を確認します。打たれた、抑えたみたいな「結果」はあまり意識しなくて、自分の思うようなボールが投げられているかにフォーカスします。/p>
自宅に帰ったら猫と遊んだりして、とにかくリラックス。そうやって眠くなるのを待ちます。夕食は基本的にとりません。食べても「トマト納豆」くらい。これも、抗酸化作用が高くて便通も良くなるのでオススメです。
就寝時間は特に決めていません。朝起きる時間もですけど、「決めて」しまうとそれが崩れてしまうのが逆に嫌なので。眠くなったら寝て 、目が覚めたら起きる。これが、一番です。
高梨雄平の一日は、こんな感じです。みなさん、いかがでしたか? 参考になるような話があったか……僕自身は正直わかりませんが(笑)、とにかくこんな感じで日々、「プロ野球選手」としての毎日を過ごしています。
これからもこの連載ではいろいろなことをお伝えしようと思うので、よろしくお願いします!