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「映画館での劇場体験、それほど素晴らしいとは思わない」とデヴィッド・クローネンバーグ&ジム・ジャームッシュ ─ 「共同体験のようなものを感じない」

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近年、多くの映画人が“劇場体験”を大切にすることを求めている。スティーブン・スピルバーグ、ジェームズ・キャメロン、、トム・クルーズなど、名前を挙げはじめればきりがないほどだ。

しかし、名監督と呼ばれる人のなかにも異なる意見を持つ者はいる。ともに80年代から熱狂的な支持を受けているデヴィッド・クローネンバーグとジム・ジャームッシュだ。

米の対談にて、クローネンバーグは「もう何年も前から映画館に行っていません。聴力のせいもあって、英語の映画も含めて、すべて字幕で見ているんです」と語った。1943年生まれのクローネンバーグは今年で82歳になった。

「本物の映画館で映画を観る機会はたまにしかなくて、ほとんどが映画祭なんですが、必ずしも映写がいいわけでもない。ヴェネツィアでスパイク・リーたちと登壇したときのことを覚えていますが、彼はシネマの神聖さに、その宗教的な側面を話していました。そのとき、私は“スパイク、『アラビアのロレンス』を時計で観ても、1,000頭のラクダは全部見えますよ”と言ってね。それは冗談だけれど、要するに、私は映画館での体験をそれほど素晴らしいものとは思わないということなんです。」

この発言が飛び出したのは、ジャームッシュが「批評家はキャッチフレーズを見つけたがる、そのほうが楽だから。“業界が複雑化して、映画館は死につつある”とかね」と述べたことがきっかけだ。「ストリーミングサービス以前は、ジャン・ユスターシュの映画を観ようと思ったら2ヶ月後の上映に足を運んだ。それはイベントだったんです。だけど、今はクライテリオン・チャンネルばかり見ている。好きなときに観られて素晴らしい……もう取り戻せないものはあるけれど」。

映画館ならではの特徴には、大勢の観客と“映画を観る”体験を共有できることがある。しかし、クローネンバーグは「年をとったせいかもしれないけれど、共同体験のようなものを感じない」といい、ジャームッシュも同意した。クローネンバーグは「映画館で観るのと同じくらい、ストリーミングの話を熱狂的にしている人たちもいると思います。だから(ストリーミングは)別物ですが、悪いとは思いません」とも言っている。

ふたりは「もうフィルムでは映画を撮りたくない」という意見でも一致している。クローネンバーグが「フィルムを切って編集するのは悪夢だった。当時は制限があったけれど、今はもっとコントロールできる。昔の映画に対するノスタルジーはあるけれど、スピルバーグのようにフィルムで撮る必要性は感じない」と言えば、ジャームッシュも「同じ気持ちです。デヴィッド・リンチもそう言っていた」と応じたのだ。

もっとも、予算の問題もある。ジャームッシュは「フィルムの魔法や、フィルムを通す光は本当に美しい。もちろんそのことはわかっていますが、私がフィルムで映画を撮ることはないでしょう」と述べた。「クエンティン・タランティーノはそれができるだけの資金を得られて幸運だと思う。私にはできません」と。

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