【海苔の香りと甘みが絶妙】シャコガイを採って食べてみた 美味しさの秘訣は「藻」?
サンゴ礁の海に生息するシャコガイは、沖縄などで食用として親しまれています。今回は鹿児島の離島でトガリシラナミを採取し、刺身で味わいました。貝柱は甘く、内臓は磯の香りが豊か。特に外套膜はホタテのひもに似た食感で、海苔のような香りが特徴的でした。この独特の風味には、シャコガイ特有の生態が関係しているようです。
沖縄で人気の食材シャコガイ
サンゴ礁の海には、ほかの環境にはいないユニークな生き物がたくさん生息していますが、シャコガイもそのひとつです。縁がギザギザした独特の殻が噛み合う外見は、実物を見たことがなくてもイメージできる人は多いでしょう。
個人的にはシャコガイと聞くと、かの名作漫画「ブラックジャック」で、世界最大の貝であるオオシャコガイに足を挟まれ溺れかけた少年をブラックジャックが助ける話を思い出します。「ちょっと怖い貝」のイメージです。
そんなシャコガイですが、実は各地で食用にされています。日本でも沖縄などで、シャコガイ類最小のヒメジャコガイや同様に小型のシラナミガイが漁獲され利用されているのです。
シャコガイを採って食べてみた
筆者は先日、鹿児島の離島に行く用事があり、その際に夜の潮溜りで生物採取を行いました。すると殻長20cmほどのシャコガイ(トガリシラナミ)が見つかったので、食べてみることにしました。
シャコガイは外套膜(軟体を保護するための膜)が発達した独特の見た目をしており、それを剥がすと内臓部分や貝柱などの筋肉が見られます。綺麗に剥がし、パーツごとに分けて刺身にしてみました。
食べてみると、貝柱はサクサクとして甘みがあり、内臓は磯の香りがあって、ホタテとサザエを合わせたような独特の味わいがありました。とくに面白かったのは外套膜の部分で、歯応えはホタテのひものようなのですが強い「海苔の香り」が感じられました。
シャコガイの味わいが独特な理由は?
シャコガイは生物学的には「ユニークな生態」でよく知られた存在です。なんと彼らは体内に「藻の仲間」を共生させているのです。
シャコガイの外套膜には褐虫藻と呼ばれる単細胞藻類が付着しており、シャコガイは彼らに生息場所を提供する代わりに、彼らが光合成で生み出す栄養分をもらっています。もしかするとシャコガイの「海苔の香り」はこの褐虫藻の香りなのか…?と思ったりもしましたが、ハッキリとは分かりません。
シャコガイがこのような生態をしている理由は、彼らの暮らす南の海には二枚貝の餌となるプランクトンが少ないからだと考えられています。栄養の少ない海で大きく育つための戦略なのです。
<脇本哲朗/サカナ研究所>