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4月4日に開業!『ジーライオンアリーナ神戸』の“作り手たち”に聞くアリーナ誕生秘話 神戸市

Kiss

神戸ウォーターフロントの新たなシンボルとして2025年4月4日に開業を迎える『ジーライオンアリーナ神戸』(神戸市中央区)。新港第二突堤(愛称:TOTTEI)での建設が進むアリーナの“生みの親”であるNTT都市開発、大林組と運営会社のOne Bright KOBEの3社に、建設計画のお話や建物の設計に込めた思いを伺いました。

建設が進むアリーナ(2024年10月時点)

INDEXアリーナプロジェクトの体制についてコンセプト・デザインが決まるまで設計・構造のここがスゴイ!前例のないアリーナを作る“挑戦”「コロナ禍」という逆境を追い風に神戸のここが好き&竣工に向けて

アリーナプロジェクトの体制について

最初にNTT都市開発、大林組、One Bright KOBEの3社がアリーナ建設においてそれぞれどのような役割を主に担っているのかを教えてください。

山﨑:NTT都市開発は不動産デベロッパーとしてアリーナの建設および所有を担っております。

岩岡:大林組はアリーナの設計と施工を担当しております。私はその中で設計を担当させてもらいました。

渋谷:私たちOne Bright KOBE(以下:OBK)は開業したアリーナの運営が主な役割となります。

馬渡:3社が一枚岩となってプロジェクトを進めていけるように、大林組さんには設計の段階で我々とOBKから運営の視点で様々な要望を伝えさせていただくような形で進めていきました。

(左から)NTT都市開発 山﨑隆嗣さん、NTTファシリティーズ 馬渡健嗣さん、大林組 岩岡丈夫さん、One Bright KOBE 渋谷樹さん

ありがとうございます!さっそくアリーナの設計についてお話を聞いていきたいと思います。建物の設計はどのような体制で行われたのでしょうか?

岩岡:社内外のスペシャリストを結集しました。大林組では過去に北海道の『エスコンフィールド』の設計・施工を行った実績があり、エスコンチームからも何人かチームに参加していますし、スポーツ・エンタメ施設を得意としている海外設計事務所『Cox Architecture』ともコラボレーションしています。

ほかにも音響や照明に関する社外のスペシャリストや、社内のランドスケープデザイナーも参加するなど、アリーナに関わるあらゆる分野の専門家を集め、大林組のノウハウをいかんなく発揮できる体制を構築しました。

大林組 岩岡丈夫さん

コンセプト・デザインが決まるまで

まさにドリームチームですね!建物のコンセプトである「神戸から世界へ羽ばたく姿」を表現した“翼”を広げたようなデザインが出来上がるまでの経緯を聞いてみたいです

岩岡:『ジーライオンアリーナ神戸』の建設地である新港第二突堤は270度を海に囲まれた特殊なロケーションのため、そのポテンシャルをいかに引き出すことができるかという点を提案時から考えていました。

神戸は地形的に山と海の距離が非常に近く、その山と海を縦断する形で都市軸が存在します。また開港以前から貿易と情報発信の拠点としての長い歴史が形成されてきた街という一面もあり、そういった地形的な特徴や歴史が積み重なった独自のロケーションを表現することをコンセプトにしました。

そのうえで、新港突堤は神戸の山と海がちょうど出会う場所でもあるので、山と海に向かって広がっていくようなイメージを構築し、この場所で生まれる感動や興奮が世界に向かって羽ばたいていく様を表現した特徴的な屋根の形状をデザインしました。

建物の設計にあたって土地の歴史などもリサーチされるんですね。そういったプロセスの踏み方は一般的なのでしょうか?

岩岡:そうですね、建物単体ではなく周辺のコンテクストも一緒に考え、そこにしかない建物を提案するようにしています。建築は建物単体で成り立つものではなく、周辺の環境や人にどう使ってもらえるかという観点が非常に重要で、特にアリーナのような施設は訪れる人が来て初めて機能する建築なので、建物が建つ場所の特性を特に大切にしたいと考えました。

神戸は海際の夜景が非常に綺麗な街であり、アリーナはその景観に大きなインパクトを与える存在となるため、美しい夜景に馴染むデザインにすること、港湾エリアを活性化し賑わいを発信する新たなランドマークにすることなど、“海との関係性”を重視しました。

「羽」をモチーフにした屋根にフィーチャーするような照明演出なども計画しているので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

照明演出のイメージ図

なるほど!アリーナのコンセプトは大林組が中心となって考え、それに対してNTT都市開発やOBKが意見を出しながら議論を重ね、決定していったのでしょうか?

山﨑:最初に我々の方から設計・施工を担当する会社を決めるコンペをやらせていただき、大林組さんにはその段階で非常にモニュメンタルな形状を提案してもらいました。その後、プロジェクトを進めていく中で、設計上必要な部分を調整しながら最終的な形を固めていったという流れになります。

コンセプトとそれに基づくデザインが高く評価された結果、大林組さんの案に決まったんですね。

山﨑:コンペの時点で非常に良い提案に感じました。『エスコンフィールド』の設計・施工をされた経験から、プロモーションビデオまで作っていただき、とても感動しました。

渋谷:アリーナが開業する2025年は『阪神・淡路大震災』から30年の節目の年であり、100年以上の歴史を持つ新港突堤に新たなランドマークができることは、神戸の街にとって大きな転機になると思います。「一度は役目を終えた港に新たな賑わいを生み出し、もう1度この場所から神戸を盛り上げていく」という我々の思いを見事に表したコンセプトだと思っています。ちなみに提案の初期段階では「羽ばたく」という意味だけでなく、アルファベットの「V」を模した形状である点も推していただいており、チーム内では「Vアリーナ」と呼んでいましたね(笑)。

馬渡:かつて倉庫街だった新港突堤エリアは神戸に住んでいらっしゃる方にとって日常的に足を運ぶ場所ではないというイメージが強いと思います。だからこそ我々がアリーナを作ることでエリアのイメージを塗り変え、地理的にも歴史的にもユニークな場所である新港突堤に新たな賑わいを作り出し、常に人を呼び続ける場所にしたいと思っています。

NTT都市開発 山﨑隆嗣さん

設計・構造のここがスゴイ!

続いて建物の構造的な部分のお話も伺いたいのですが、大林組で神戸といえば『ポートタワー』のイメージがあり、あの「パイプ構造」はとても革新的な構造だったと聞いています。今回のアリーナにも珍しい構造や工法を用いたりしているのでしょうか?

岩岡:『ジーライオンアリーナ神戸』の場合、V字型の屋根の部分にテンションワイヤーを用いた「タイドアーチ構造」を採用しています。断面を切るとすべて同じアーチ形状となっており、アーチをワイヤーで拘束することによって非常に合理的な構造計画を実現しています。

工法の話でいうと、今回は工期が非常に短期だったこともあり、効率よく工事が進むように建てる順番について施工チームと構造チームが連携し計画を立てました。結果、最初にアーチを支える外側の骨組みを建て、その上にアーチをかけ、その後に内部の工事を進めていくという特殊な方法が用いられています。

あとは、突堤という限られた敷地内にアリーナの大空間をいかにして作るのかという点も、設計・施工の計画を立てる上での大きなポイントになったと思います。

アリーナの構造のイメージ図

今回のアリーナは「環境」の観点でもすごい点があると聞きました。

岩岡:先ほどお話した通り、建物の構造としては同じ断面を連続させ、少しずつ高さを変えていくという非常にシンプルな解き方をしています。その「羽ばたく姿」をイメージしたV字型の形状にはコンテクストから出てくる意味だけでなく、アリーナ内部の気積(空気の体積)をミニマイズし、空調負荷の低減&空調効率を向上させる意図もあり、環境負荷の軽減を実現しています。その結果として、1万人規模のアリーナとしては国内初の「ZEB Ready」の認証を取得することができました。

馬渡:もともとはひとつ下の評価である「ZEB Oriented」の取得を目指していたので、大林組さんから「ZEB Readyが取れました」と聞いた時は本当に驚きました…(笑)。

前例のないアリーナを作る“挑戦”

続いて、アリーナの設計をする上で「ここが一番の挑戦だった」と思う点について教えてほしいです!

岩岡:先ほどロケーションが特殊であるとお話させていただきましたが、海際であることはもちろん、突堤という細長い敷地をアリーナの用地にすることも、今までにない取り組みでした。敷地としての制約が大きく、建物の外形もおのずと決まってくる中でアリーナを作ることになるので、内部空間も非常に特徴的なものとなっています。

そのため、ロケーション、敷地、設計、構造、工法など、すべてにおいて“前例のないアリーナ”を作ることになった今回のプロジェクトそのものが非常に大きな挑戦であると捉えています。

前例のないアリーナ!とてもワクワクする響きですね!

岩岡:ワクワクしますが、不安もたくさんありました(笑)。

馬渡:設計やデザインだけでなく“稼ぐアリーナ”という事業そのものが日本には前例やスタンダードがないので、ビジネスとして成立させることも挑戦と言えますね。そういった意味では開業後も挑戦はずっと続きます。

渋谷:アリーナの運営を担当する私たちからすると、発足から5年が経ち、ようやくスタートラインに立とうとしているという気持ちです。

まさしく挑戦の連続というわけですね。そんなアリーナプロジェクトは、やはり社内での注目も高いのでしょうか?

岩岡:私たち設計チームは拠点が東京にあり、神戸・大阪にいる建設チームと連携しながら設計・施工を進めるという全国的な体制で臨んでいることもあり、ありがたいことに社内でも非常に注目されています。

山﨑:社内の若手社員と話をすると、入社前にNTT都市開発に興味を持ったきっかけが「アリーナ」だったと聞くことがよくあります。

アリーナのような巨大建築を設計する仕事において「やりがい」や「充実」を感じる瞬間について知りたいです。

岩岡:実は、建物の規模がやりがいに影響することはあまりなく、大きさを問わずやりがいや面白みを感じています。当たり前の話ですが、どんな建築も1人の力では決して完成しません。計画、設計、施工の各セクションにたくさんの人が関わっており、竣工後に利用者に使ってもらうことでようやく完成を迎えます。

そんな、多くの人が結集する“モノづくり”において完成するカタチを自分たちの手で作り出すことができるのが、設計という仕事の面白いところだと私は思います。また、設計の中でも意匠設計、構造設計、設備設計など役割が多岐にわたっており、チームが一丸となって進めていくのですが、そんな仕事の進め方に私はやりがいを感じています。

あとは、完成した建物が訪れた人に素敵な体験を提供したり、誰かにとっての思い出の場所になってくれることを想像するのも、設計という仕事の醍醐味だと思います。

建設が進むアリーナ(2024年10月時点)

「コロナ禍」という逆境を追い風に

ここで少し話題を変えます。アリーナの計画が動き始めた頃、世の中はちょうど「コロナ禍」のタイミングにあったと思いますが、プロジェクトの進退を考えるようなことにはならなかったのでしょうか?

馬渡:もちろんコロナ禍の時には「(この状況が)いつ収束するのだろう」「この先、エンタメ業界はどうなるのか」といった気持ちもありましたが、大林組さんがジョインし、建設に向けて本格的に動き出した頃は、すでにアフターコロナの兆しが出始めており、それまでのリバウンド的に人々が“リアルな体験”を求める機運の高まりも感じていました。そのため、先々の展望に関してはむしろポジティブに捉えていたように思います。

渋谷:「間もなく状況は変わるだろう」とチーム全員が信じていましたね。“災いを転じて福となす”ではありませんが、コロナの影響でテレワークが普及し、オンラインでのミーティングが容易になったこともプラス材料となりました。

アフターコロナへと向かう流れが追い風となり、むしろ前向きなマインドになったということですね!

馬渡:コロナ禍のピークがプロジェクトの初期段階だったことが幸いしました。計画が色々進んだ後に発生していたら、また違った状況になっていたと思います。

NTTファシリティーズ 馬渡健嗣さん

世界情勢の不安や円安による建築資材の高騰などの影響はあったのでしょうか?

馬渡:そうですね、関西エリアは来年の大阪・関西万博に向けて各地でビッグプロジェクトが動いているので、職人さんの確保なども含め、どこも苦労していると思います。もちろん我々もご多分には漏れていません(笑)。

岩岡:資材の調達に関しては設計段階から検討を行い、この材料は使える・使えない、だからこの作り方ができる・できないといった部分を設計チームと施工チームが一体となって準備を進めたことが功を奏したように思います。

馬渡:今回の場合、設計と施工を大林組さんに一括で担ってもらい、施工段階も考えながら設計を進めていただけたことが上手くいった要因のひとつだと思っています。設計を行った後、施工する会社を選ぶとどうしてもタイムラグが発生してしまうので、その間にどんどん資材高騰の煽りを受けていたのではないでしょうか。

神戸のここが好き&竣工に向けて

たくさんの苦労を乗り越えて今があるんですね!プロジェクトを通じて“神戸愛”が高まった皆さんに、神戸の魅力について聞いてみたいです。

山﨑:私は世界的建築家、フランク・ゲーリーの初期作品である「フィッシュ・ダンス」が好きです。ライトアップされたフィッシュ・ダンスとポートタワーが並ぶ景色がとても綺麗なんですよ。神戸市は海辺の空間を活かした景観づくりをとても大事にされており、海と山の繋がりが強く感じられる、スペインのバルセロナのような雰囲気も素敵で、訪れるとテンションが上がる街だと感じています。

馬渡:神戸といえば、やはりウォーターフロントですね。山﨑さんの言う通り、山と街と海が歩いていける範囲で繋がっているのは世界的に見てもユニークな部分だと思います。そんな場所に我々の手で新しいコンテンツを誕生させ、ウォーターフロントにさらなる輝きをもたらすことができることが本当に嬉しいです。

岩岡:私は東京の出身ですが、祖母が神戸に住んでいたので小さい頃に何度も遊びにきて、北野の異人館街を訪れたり、元町の中華街へ行ったり、モザイクのショッピングモールで買い物をしたりした思い出があります。当時は「ものすごく色々な顔を持った街だなぁ」という風に思っていましたが、大人になって改めて訪れると、それらの場所がすごくコンパクトに集約されていることに気付きました。そんな、色々なものが一度に見える街である点が神戸の魅力のひとつだと思っています。

渋谷:全部言われてしまった…(笑)。これは個人的な思いも含めてなんですが、今は『六甲山』が神戸の街のシンボルだと思っていて。街に住む方々にとって、ある種の“拠り所”のような存在ではないでしょうか。今後はそうした気持ちを海際にも持っていただくことが私たちの使命であり、「神戸といえばウォーターフロントだよね」という世界観をいかに作り上げていくかがアリーナ開業後の重要な課題と考えています。

最後に竣工に向けた意気込みや抱負をお聞かせください!

山﨑:9月に建物を覆っていた仮囲いが取れ、神戸の皆さんにアリーナを見ていただく機会が増えてきた中、開業に向けた高揚感がどんどん高まってきました。そんな期待が高まっていく時期だからこそ、無事に竣工を迎えられるように、改めて気を引き締めて頑張っていきたいです。

馬渡:プロジェクトの発足当初からアリーナが神戸ウォーターフロントにおける人と人、場所と場所を結ぶ「ハブ」のような存在になってほしいと考え、建設を進めてきました。間もなく建物が完成しますが、“夢に描いていた世界観”が目前に迫っていることに対する期待感でいっぱいです。

岩岡:先ほどお話した通り、私は建物が竣工し、実際に利用してもらうまでが建築だと思っているので、今はワクワクと責任の狭間で揺れ動いている時期ですが、間もなくOBKさんにバトンをお渡しすることになります。開業したアリーナに多くの人が訪れ、そこでの体験を通じて様々な感動や興奮が生まれるのがとても楽しみです。

渋谷:プロジェクトが動き出してからの5年間には本当に色々なことがありましたが、皆さんがおっしゃる通りの素晴らしいアリーナで、完成が近づくにつれて周囲の期待も大きくなっていることを日々感じています。その分運営を担う私たちの責任は重大で、目標に掲げている年間動員300万人を実現しなければ、プロジェクトに関わったすべての人に対して約束を破ることになると思っています。だからこそ、大林組さんからのバトンをしっかり受け取り、アリーナはもちろん、TOTTEIエリア全体を神戸の皆さんに愛される場所にしていきたいです。

本日はありがとうございました!そういえば、仮囲いがされていた頃、囲いの部分に「小さなイルミネーション」が施されているのを発見し、とても粋な取り組みだと思いました。あちらは誰の発案だったのでしょうか?

岩岡:あれは神戸愛が非常に強い、工事事務所の所長による発案です(笑)。工事チームの皆さんが神戸に対して強い思い入れを持ってくれていることが伝わってきて、設計チームとしても、とても嬉しい気持ちになったことを覚えています。

★インタビューの模様は「神戸アリーナプロジェクト公式YouTubeチャンネル」でも公開中!


開業日
2025年4月4日(金)

場所
GLION ARENA KOBE
(神戸市中央区新港町130-2)

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