LVMHのグローバル展開を圧迫する3つのリスク 日本市場はインバウンド反動で急落
「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」や「ディオール(Dior)」「セリーヌ(CELINE)」などのラグジュアリーブランドを擁するLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は7月24日、2025年12月期の中間期決算を発表した。売上高は前年同期比で4%減の398億1000万ユーロ(約6兆8871億円*)、営業利益は同15%減の90億1200万ユーロ(約1兆5590億円)、純利益は同22%減の56億9800万ユーロ(約9857億円)と減収減益だった。
グループ全体の店舗数は前期比119店舗増の6313店。そのうち米国に1222店舗、日本を除くアジアに1991店舗を展開しているが、米中で消費が冷え込んでいる。特に中国本土の高額消費の停滞に加え、日本でも508店舗を展開するものの、訪日インバウンド需要の反動減が響いた。4〜6月の日本市場の売上高は前年同期比で28%減と、3割近い落ち込み。前年同期の57%増から急転直下の厳しい結果となった。
主力のファッション&レザーグッズ部門は、売上高が191億1500万ユーロ(約3兆3068億円)で前年同期比7%減、営業利益は18%減の66億3600万ユーロ(約1兆1480億円)。同部門では、観光需要の減退に加えて、店舗運営などの固定費が収益を圧迫し、利益率の低下が顕著となった。
一方、ブランド戦略としては人事刷新も進む。6月には「ディオール」の新クリエイティブ・ディレクターにジョナサン・アンダーソンを起用し、パリで初となるメンズコレクションを発表。さらに7月には、アジア最大の旗艦店となる「ティファニー 銀座」をオープンし、日本市場での巻き返しを狙う。
ワイン&スピリッツ部門は、売上高25億8800万ユーロ(約4477億円、前年比7%減)、営業利益は5億2400万ユーロ(約906億円、同33%減)と大幅減。コニャックやスピリッツの販売が15%減と苦戦した一方で、「モエ・エ・シャンドン」はファレル・ウィリアムスとのコラボを実施するなど、シャンパンとワインは前期比2%増と健闘を見せた。
今回の業績悪化は、地政学的リスクや価格高騰による消費者の買い控え、主要市場の需要後退など、複合的な要因が重なった。米中・EU間の貿易摩擦や高関税、消費マインドの鈍化、固定費の重さがLVMHのグローバル展開を圧迫している。
*1ユーロ=173円換算(7月26日時点)