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令和の北陸大返し【後編】~長良川から利家の妻・まつ生誕の地、そして名古屋城へ、五日間の旅路踏破じゃ!~

さんたつ

名古屋城前田利家

皆々、息災であるか。前田又左衛門利家である。我が金沢城から名古屋城まで歩く「令和の北陸大返し」、此度はついに完結編である。美濃国から名古屋まで、尾張に住む皆々には馴染みの場所を歩いて参ろう。

令和の大返し五日目、木曽川を越え尾張へ

というわけでいよいよ、北陸大返し最終日じゃ!

例に漏れず日輪が昇るよりも早くに宿を発ち、岐阜県の南西部、安八(あんぱち)から足を進め長良川を越える。

長良川は美濃において守りに重要な大きな川で、織田家もこの川を越えるまで長く時間がかかったのじゃ。

信長様の父・信秀様の代から織田家は美濃を狙って侵攻を繰り返しておったがいずれも失敗に終わり、桶狭間の戦いの後に今川家の脅威がなくなり後顧の憂いを絶ってからも、幾度も美濃攻めは頓挫しておる。

桶狭間の戦いが永禄3年(1560)、信長様が岐阜城を手にしたのが永禄10年(1567)。

実に7年もの年月をかけ漸く手にしたのが美濃国である。

美濃を手に入れた翌年には将軍・義昭様を擁して京に入っておることからも、美濃攻めが如何に肝要で困難な戦であったかが分かるであろう。

織田家にとって非常に重要であるこの長良川であるが、儂、前田利家にとっても誠肝要な場所である。

此度長良川を渡った大垣一宮線の橋から歩いて20分ほどの場所に森部古戦場がある。

この地で起きた織田軍と斎藤軍による美濃森部の戦いにて、当時織田家を出仕停止となっておった儂は独断で参陣。敵方の将で「首取り足立」の異名を持つ足立六兵衛殿を討ち取る功をあげ、これが信長様に認められたことで織田家に復帰することが叶ったのじゃ!!

これまた儂を語る上で外せぬ場所といえよう!

長良川の良い景色を眺めながら足を進めると続いて木曽川へと参った。

これにて木曽三川のうち二つを跨ぐことと相なったぞ!

木曽川を越えればいよいよ尾張である!

誠長かったこの旅もいよいよ終わりが見えて参ったわな!

尾張に入りて進むのは美濃街道。

中山道の垂井宿と東海道の宮宿をつなぐ道で、現世の言葉を借りれば“ばいぱす”というものらしいのう。

西国から東国へ進むためにはほぼ必ず通るのがこの美濃街道で、参勤交代でも多くの大名家がこの道を使っておる。

ゾウやラクダが将軍に謁見するためにこの道を通って江戸へと進んだ記録も残っておるぞ!

まつ生誕の地や利家初陣の場所へ寄り道

起宿(おこしじゅく)の跡地。

美濃街道の重要な宿場町・起宿の跡地には高札場跡が整備されておる。

このまま美濃街道を進めば清洲を経由して名古屋城へと行けるのじゃが、ここで再び寄り道と参ろう。

尾張の一の宮、真清田(ますみだ)神社がある一宮市や、信長様の生まれた勝幡城がある稲沢市を通りてやって参ったのはあま市である。

あま市には尾張出身の猛将・福島正則生誕地がある。

無論此度の寄り道の目的はここではない!

寄り道の目玉は我が妻・まつ生誕の地じゃ!!

まつが生まれた屋敷の跡地に碑が立っておってな。ここには一度足を運ばねばなあと思っておった。

此度それが叶ってうれしい限りである。

萱津古戦場の碑。

寄り道の目玉はもう一つ。

まつ生誕の地から30分ほど進むと見えてくるのは萱津(かやつ)古戦場の碑である!

儂が初陣を果たした萱津の戦いが起こった場所でな、武辺者前田利家が始まった場所である。

奥に見えるのは「前田利家公初陣之像」。

因みに我が故郷荒子(あらこ)の地にある像はこの萱津に出陣するときの儂じゃ。

萱津古戦場の石碑を越えると程なくして萱津神社にやって参る。

この神社は日ノ本で唯一漬物石を祀っておる社として神社仏閣好きにはよく知られておるそうじゃな!

いよいよ名古屋城に入城じゃ!

ここからはいよいよ名古屋に住まう者たちにとっては見慣れた風景が見えて参る。

萱津神社のそばを流れるは五条川。

この川は名古屋と意外なつながりを持つ川なのじゃ!

五条川はかつてこの尾張を治めておった斯波家が京を懐かしみ、都の地名をとって付けられたと言われておる。そしての名古屋の街ができる前まで尾張の中心地であった清洲には五条橋が架っておったのじゃ。

かつて皆にも話したことがあるが、名古屋は徳川殿が名古屋城の築城に合わせて新たに築かれた街。

その時に清洲を街ごと引っ越すという前代未聞の大引越しが行われ、五条橋も名古屋へと越してきたのじゃ!

五条橋は改修を重ねながら今も架っておって、円頓寺(えんどうじ)商店街にて見ることも渡ることも叶うから、時がある者は訪れるがよかろう。

五条川を越え、

新川を越え、

庄内川を越えるといよいよ名古屋市へと入る!

名古屋駅の高き建物が見えて参った。

ここからは国道22号を進むのじゃが、この国道22号とは先に話したかつての美濃街道である!

ここを道なりに進めばいよいよ名古屋城。

名古屋城の西側の入り口巾下門跡(はばしたもんあと)から名古屋城の三の丸へと入った!

名古屋城の三の丸は現世では官公庁や住宅地として開発され名古屋市庁や県庁が立っておるで、名古屋に関わりある者はきっと知らずうちに訪れておる場所であろう。

現世で名古屋城と呼ばれておるのは名古屋城の本丸や西の丸など史跡として整備されておる場所であるな!

さて、三の丸に着いたらいよいよもう旅も終いなのじゃが、その前に最後の寄り道と参ろうではないか!

儂がやって参ったのは名古屋城の北側、名城公園のあたりである。

ここからは名古屋城随一の名所を見ることができるのじゃ!

それはこの西北隅櫓。

見ての通り大きく美しい櫓である。

日ノ本に12基しか残っておらん現存三重櫓の一つで、日ノ本第2位の大きさを誇る櫓じゃ!!

高さは16mを超え、此度の大返しで立ち寄った丸岡城や、現世で人気の高い彦根城の天守よりも大きいのじゃ。

清洲城の天守を移築したという逸話ができたほどで、いかに徳川家にとって名古屋城が重要な城であったかを示す櫓である。

最後の寄り道を終え、名古屋城の正門を潜るとついに名古屋城到着である!!

門を抜けてすぐ右手側、総合案内所の横には日本100名城の印判がある。

実は此度の北陸大返しの目玉の一つはこの印判であった。

儂が兼ねてより進めておった100名城巡りの最後の一城として名古屋城を残しておったでな、この度は印判を押し無事終いとなった!

最後に名古屋城の西南隅櫓前で写絵を撮りて令和の北陸大返しは以上である!

終いに

さあ皆々!

我が令和の北陸大返しは如何であったかな!

五日間で268km、歩数にすればおおよそ35万歩。

なかなか現世の者は挑まぬ大戦となったのではないか?

『さんたつ』においても3回にわたる長編となりて、いつぞやの応仁の乱解説と並ぶ力作となったわな!

皆も自らが旅をしておるかの如く楽しく読んでくれたならばうれしい限りである。

この旅は皆も足を運びやすいよう新幹線や電車の沿線を進んで参ったでな!

気になった場所があった者は足を運び、自ら楽しむのも一興であろう。

無論三日目、栃ノ木峠越えはその例外であるがな!

じゃが、これは敢えて近くの道を選んだと申すよりは、現世で主に使われておる道の多くが我らの時代から使われておって、故に史跡を巡りながら旅をするのにも優れておったからといえよう!

此度は北陸道が国道8号に、美濃街道が国道22号となっておると話したけれども、日ノ本全体に目を配れば多くのかつての街道が現世でも用いられておることがわかる!

国道1号はかつての東海道、国道2号は山陽道、国道4号は奥州街道を整えたもの。

東海道新幹線はその名の通り東海道を元にしておるし、近年敦賀駅まで開業した北陸新幹線は我が前田家が参勤交代で歩いたと聞く北国街道をほぼそのまま通っておる!

此度の大返しにて、我らの時代と比べ日ノ本は大きく進歩しておるけれども、その見違えた景色の中で我らの時代から引き継いだ風景も少なくなかったわな。

儂がかねてより話しておることではあるが、現世を生きる皆々もふと通り過ぎる街並みや何気なく使っておる道で気付かぬうちに歴史や史跡に触れておる。

儂ほど大仰なことは致さずとも、日々の暮らしの中で歴史を探してみるのもまた一興であろう!

後日、日本100名城の「登城認定証」を賜った。

文・写真=前田利家(名古屋おもてなし武将隊)

前田利家
名古屋おもてなし武将隊
名古屋おもてなし武将隊が一雄。
名古屋の良き所と戦国文化を世界に広めるため日々活動中。
2023年の大河ドラマ『どうする家康』をきっかけに、戦国時代の小話や、戦国ゆかりの史跡を紹介している。

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