職人技が光る、忘れられない和の味わい 苦楽園駅近くの名店『四季旬菜いしばし』 西宮市
こんなに静かに感動する料理があるんだ~と思わせてくれる和食店が、阪急・苦楽園口駅から徒歩数分の場所にあります。ビルの2階に暖簾を掲げる『四季旬菜いしばし』(西宮市)は、14年にわたり地元の食通たちに愛されてきた名店。派手な宣伝はなくとも、丁寧な仕事と確かな味わいで、多くの人の記憶に残り続けています。
今回頂いたのは、昼限定の「彩(いろどり)コース」(2,640円・税込)。小鉢を皮切りに、酢の物、天ぷら、煮物、出汁巻きなどが次々と運ばれ、その充実ぶりはランチの域を超えています。
中でも注文を受けてから一つひとつ丁寧に焼き上げる出汁巻きは、ふわっとした食感とともに、上品な出汁の香りが口いっぱいに広がる逸品。赤く色づいた近江こんにゃくも印象的で、柔らかな甘みと塩気の絶妙なバランスが忘れられない後味を残します。
中でも特に印象に残ったのは、冷たい煮物の盛り合わせ。和食では煮物=温かいものというイメージが強いですが、『いしばし』ではあえて冷やして提供されます。さらに驚くのは、皿に盛られたそれぞれの素材が、別々の出汁で煮分けられていること。
「素材ごとに最適な味つけと煮方で仕上げています」と店主が語るように、一口ごとに味の表情が違い、食べ進めるほどに新鮮な驚きが重なります。煮物の概念を覆す一皿は、まさに職人の技と心意気が詰まった存在です。
この完成度の高さの背景には、店主が北新地の名店で長年修業を積んだ経験があります。開業から14年間、味を守りながらも進化を続ける姿勢が、この店の「変わらぬ魅力」の正体です。
取材日、カウンターで隣り合った常連客は、なんと枚方から週に一度通っているという方。「もずく酢も他とは全然違うし、だし巻きも最高。アイスまで自家製で、毎回新しい発見があるから飽きません」と、笑顔で店の魅力を語ってくれました。何度でも通いたくなる味。それこそが本当においしい料理の証なのかもしれません。
店内は木の温もりに包まれた落ち着いた空間。カウンター席では、料理人の手さばきや盛り付けの丁寧な動きが見られ、まさに“和食の所作”を味わうことができます。テーブル席もあるので、会食やゆっくりしたい時にも安心です。気さくな店主と、心配りの行き届いた女性スタッフの接客も心地よく、和食店にありがちな堅苦しさを感じさせません。
SNS映えではなく、本当に美味しいものに出会いたい時。『四季旬菜いしばし』の料理は、その静けさの中に、食の本質と職人の誠実さが宿っています。素材の切り方ひとつ、出汁のひき方一つにも妥協のない手仕事。見た目は控えめでも、味の奥に重ねられた時間と技術は、食べた人の記憶に確かに刻まれるはずです。
一皿の中に季節があり、心がある。そんな和食の世界に、ふと触れたくなった時にこそ訪れたい、静かな名店です。
場所
四季旬菜 いしばし
(西宮市南越木岩町7-13 ポニービル2F)
営業時間
ランチ 11:30~14:00
ディナー 17:30~22:00
定休日
水曜日・第3木曜日
定休日は変更となる場合があります。来店前に店舗にご確認ください
駐車場
なし