<愛された記憶ゼロ>厳しい母は姉を優先。否定され続けた私「自分の意見が言えない」【まんが】
私はモモ(30)。Web関係の仕事をしています。在宅での作業が中心の私にとって、お付き合いしているサクト(32)との時間はとても大切なものです。サクトとは2年前に友人の紹介で知り合いました。穏やかな性格のサクトはお出かけ先や家でなにかと気づかってくれ、私の意思を尊重してくれます。サクトと付き合いを深めるなかで、私は自分の生い立ちに疑問を感じるようになりました。昔の私にとって、自分の希望を諦めたり意見を否定されたりすることは普通のことだったのです。
サクトとはそれからウィンドウショッピングに。サクトが「あれかわいいね」「これはモモに似合いそう」と言ってくれるのが嬉しくて、時間はあっという間に過ぎました。でも、結局私はいつもなにも買わないのです。
私の母はとても厳しいひとで、私が「こうしたい」と言うたびに「あなたにはムリよ」と言われてきました。なにをするにも姉のマキの意見が優先。食べたいもののリクエストも聞いてもらえませんでした。
サクトといると、いつも楽しく幸せな気持ちになります。一方で、「なにがしたい?」「なにが欲しい?」と自分の意見を聞かれるたびに、ドギマギしてしまいます。 自分の意見を言っていいのか、自分の意見を受け入れてもらえるのか……そういう思いがよぎり、自分の気持ちをうまく出せません。 「ダメよ」「ムリよ」と言ってきた母と姉の姿が頭に浮かびます。子どものころは「自分がダメなんだ」と思っていましたが、大人になった今、「私は愛されてこなかったのではないか」と感じます。
姉と同じものを強要。でも……「婚約者のおかげで私は変われた!」
私の手元にあるのはシンプルな裁縫セットです。大人っぽいとも言えるかもしれませんが、友達が持っているピンク色にリボンの柄のものが、とてもうらやましいと思いました。私の毎日は、こんなことばかりでした。
大人になって実家を出て、家具をそろえるときは一苦労でした。自分で稼いだお金で、自分のために買うものなのに。最初のころは結局なにも買えなくて、1人暮らしの私の部屋は殺風景なものでした。サクトに出会ってから徐々に「私はこれがいい」と自分の意見が言えるようになったのです。
母はきっと、私のことがかわいくなかったのでしょう。そのことに気づくのはとてもツライことでした。でも、今はサクトが隣にいてくれています。私は私らしく、自分がいいと思ったものを選んでいきたいのです。 私を尊重してくれるサクトがパートナーで本当に幸運でした。私はさっそくWebサイトで気になる指輪デザインを調べました。隣でサクトがお茶を飲みながら話を聞いてくれます。 幸せでいっぱいですが、どうしても消えない不安があります。私の母と姉は、サクトと「家族」としてうまくやってくれるでしょうか……。
【母の気持ち】後悔の多い子育て「長女ばかり優先してしまった……」
私はサエコ(60)。マキ(33)とモモ(30)、2人の子どもは手を離れ、私は1人自由な時間を過ごしています。夫は病気で2年前に他界。夫とは仲よく過ごしていましたが、なにしろ多忙な夫だったので、姉妹は私が育てたようなものです。私はつくづく、姉妹の子育ての難しさを実感しました。姉のマキは結婚し子どももいます。モモにも婚約者がいて、一度会ったことがありました。モモが幸せになれるのであれば、結婚は親ばなれ子ばなれできるきっかけになるのではと思っています。
モモの高校の制服は、さまざまなデザインが選べるようになっていました。そのなかで、リボンがついたデザインは、親の私から見てもかわいい制服でした。しかしマキは、モモが自分よりもかわいい制服を着ることが気に入らなかったのでしょう。そして、モモはそれを感じとってしまう子でした。あのころの私は「マキが怒り出さないように」という理由でモモにガマンさせてきたように思います。
私はモモのために、マキをたしなめたことがあったでしょうか。悔やんでももう遅いのは、わかっています。
結局私にできたことは、引っ越しの費用の一部を負担しただけでした。 モモからサクトくんを紹介されたときは「ああ、これでモモはこんな私から離れられる」と安心したのを覚えています。
ずっとガマンさせていたモモ。愛してくれるひとができて、幸せになれるかもしれません。 本当は母親の私が、モモにもっと愛情を注がなくてはいけなかったのに……。私はマキの機嫌を優先させて、うまくモモを大事にすることができませんでした。 至らない母親が自分の役目を他人に託すなんて情けない。 でも、これからのモモは、自分の好きなものを選んで自由に生きて、愛される人生をおくってほしい……これは、子どものころのモモにそうしてあげられなかった私の本音です。 そして、その気持ちをモモに伝えるために、マキときちんと話し合わなければならないと思っています。
【私の気持ち】結婚の挨拶をすると……母と姉の態度が一変!届かなかった母の愛情
穏やかな性格のサクトは、私の意思を尊重し、なにかと気づかってくれます。でもその反面、サクトと付き合いを深めると、自分の生い立ちに疑問を感じるようになりました。そして、心待ちにしていたサクトからのプロポーズなのに、母や姉に報告しなければならないと思うと不安です。
着飾った母も姉もきれいでした。私は今日のためにワンピースを新調しました。「私はこれが好き」と思って選んだワンピースです。
私はてっきり、母や姉に嫌味を言われるかと思っていました。それなのに2人の態度にとても驚きました。サクトは私たちの様子を見守っています。
「今更だってわかってるけど、反省しています。先日夫にね、『マキは気が強すぎて、子どもがガマンしていないか心配だ』って怒られてさ。薄々自分でも気づいていたの。私、自分の不満をモモにぶつけてばかりだったなあって。本当にごめんなさい」なんと、あの姉が私に頭を下げたのです。
その後、会食はなごやかに終了しました。レストランの最寄り駅についてから、私、母、姉はそれぞれ違う路線の電車に乗るために別れることになりました。 そのとき、母がこっそり私のそばへ寄ってきて「もう誰にも気をつかわなくでいいよ。今までごめんなさい」とあらためて話してくれ、とても心が軽くなったのを覚えています。 後日、母はまとまった額のお金を「モモが自由に使えるように」と口座に振り込んでくれました。 自分は愛されていたのだろうか……その悩みは、今回、少しだけ軽くなりました。当時は母なりの愛情がたしかにあった、でも届くことはなかった。そう考えるようになりました。心の傷は消えませんが、私はこれからの未来を楽しもうと思っています。