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なとり 初の武道館ライブ開催を発表、ネクストフェーズへの決意を示した『劇場~再演~』ファイナル公演をレポート

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なとり

なとり 2nd ONE-MAN LIVE『劇場~再演~』
2024.10.19 パシフィコ横浜 国立大ホール

シンガーソングライターとしての活動のみならず、Adoらさまざまなアーティストへの楽曲提供でも知られるなとりが、初のホールワンマンライブを大阪と神奈川で開催。本稿では、計4公演のファイナルとなった10月19日(土)パシフィコ横浜 国立大ホールの模様をレポートする。

今年3月と4月に東阪で行なった1stワンマンの規模を拡大し“再演”と銘打って臨むこのライブには、彼の音楽に心酔するたくさんの観客が詰めかけた。人波に乗ってホール内に入ると、目の前にまさしく“劇場”風の格式あるステージが出現。そこはかとなくハロウィン的な味わいも感じられたりして、早速こちらの気分を高めてくれるのが嬉しい。

1stアルバム『劇場』のエンディングを飾るインスト曲「カーテンコール」がSEで流れ、ノイズ混じりの映像、“劇場~再演~ なとり”の表題がスクリーンにドンと投影。紗幕の向こうになとり(Vo&Gt)のシルエットが現れるやいなや、客席は一気に熱く沸き立ち、「こんばんは、横浜!」という挨拶から、今の季節感に合う「金木犀」でライブがスタートした。真田徹(Gt)、西月麗音(Ba)、神田リョウ(Dr)、モチヅキヤスノリ(Key)による鉄壁のアンサンブル、橙色や黄色の暖かな照明を纏い、地声と裏声がリズミカルに切り替わるボーカルが心地よく空間を舞う。

「Sleepwalk」では、照明がブルーに一変。不気味な手のCGも効力を発揮し、ホラーゲームの世界観を踏まえたナンバーを盛り立てる。真砂陽地(Tp)、三原万里子(Tb)、ジョージ林(Sax&Fl)からなるホーン隊の姿が浮かび上がり、8人編成で荒ぶるモードを加速させた「食卓」。提灯が並ぶ映像+赤く染まった舞台で妖しい祝祭感を演出した「猿芝居」と、視覚的な楽しさも振りまきつつ、なとりは順調にライブを進めていく。

「今日ファイナルだけど、みんなブッ飛ばせる?」と1階席から3階席までに問いかけ、最初のMCを手短に済ませたなとりは、ここでさらにギアを上げ、なんと未配信曲を含む新曲を強気に連発。ホーン隊を従えたまま「DRESSING ROOM」でその口火を切り、ホールというシチュエーションにもかかわらず、まるでライブハウスのようにオーディエンスのジャンプを誘ったかと思えば、「EAT」で不敵な笑い声を織り込むなど、攻めに攻めまくる勇猛果敢なアプローチは痛快でしかない。「Catherine」へと進むにつれ、バンドのグルーヴもいっそう熱を帯び出す。

これが通算10回目のライブとなり、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』や『SUMMER SONIC 2024』といった夏フェスへの出演で得た経験も大きいのか、彼の歌唱からはドラスティックな進化が伝わってくる。表情こそハッキリと確認できないながらも、そんなことはお構いなし。ステージを広く使い一体感を呼ぶパフォーマンスは実に見事で、持ち味のアンニュイな音楽性よりも逞しいフィジカリティのほうが勝っている印象だ。

体感としてはあっという間に過ぎる、怒涛のテンションで飛ばす展開のため、ここでホーン隊が退き5人編成になったことも気づかないのが自然なくらいだろう。新曲ゾーンのあとは、再びアルバム『劇場』の収録曲を軸にプレイ。炎が揺らめくキャンドルの映像にスモークを重ね、ボッサ風味がほのかに漂うアレンジで届けられた「ラブソング」。列車の走行音に合わせてその灯火が消え、なとりがアコギを弾いて歌った「ターミナル」。バッドエンドな愛の悩ましさがじんわりと沁みる。最低な結末を掻き消すようにめまぐるしく駆け抜けた「聖者たち」への流れも美しい。

その後、モチヅキのエレピ → 神田のドラム → 西月のベース → 真田のギターと、各パートのソロがセッションっぽく挟み込まれ、スムーズに「劇場」のイントロへ繋がる。ハイライトのひとつになったのは、なとりが両手を大きく広げ、アルバムのジャケット写真と同じポーズで「ようこそ、劇場へ!」とコールしたシーン。公演タイトルが改めてスクリーンに掲げられ、ホーン隊が戻ってジャジーなサウンドが轟いた瞬間の高揚と感動は凄まじいものがあり、エレガントな映像の効果も相まって、屋内で花火が打ち上がっているかのようにホール全体が一段と明るく華やいだ。

「みんな、まだいけますか?」と後半の始まりを告げ、メロウで洒落たムードの「フライデー・ナイト」へ。都会の夜景をバックに聴かせる中、セリフ部分の《listen……》はモチヅキに任せたのだけれど、彼の声が想像以上にイケボすぎたのか、なとりが思わず笑って歌えなくなるという愛らしい一幕も。そして代表曲「Overdose」を、会場が存分に温まったところで投下。ホーンも取り入れたライブアレンジに音楽性の拡張が垣間見え、ポップミュージックの最前線を担うアーティストであることを再確認する。

「最高じゃないですか、横浜。過去イチの声量な気がします!」と、ゴキゲンな様子のなとり。次のブロックでは、今年の充実した活動を振り返るように、Kobo Kanaeruへの提供曲「HELP!!」をセルフカバーし、imaseとのコラボ曲「メロドラマ」もサプライズ的に披露してくれた。心がより開けた結果、「男子!」「女子!」「イケメン!」「かわいい子!」とコール&レスポンスを促すなど、オーディエンスはもちろんのこと、彼自身がライブをめいっぱい楽しんでいるのが微笑ましく、こういう一つひとつのアクションを取っても成長の証がそこかしこに。

クライマックスは「ブチ上げるためのロックな曲が足りないと思ってね」と、さらなる新曲「IN_MY_HEAD」を用意。パカッと割れた脳のイラストやカラフルな文字列が映されるサイケデリックなCGとともに衝動的な音塊で突っ走り(間奏で来場者への感謝のメッセージをスクリーンに表示!)、客席にタオル回しを沸き起こす興奮の坩堝へと誘う。そのまま高速4つ打ちが炸裂する「絶対零度」になだれ込み、今出せるすべてを出し切るように「エウレカ」までアッパーチューンを畳みかけたのち、ピークに達した熱量を「Cult.」で小気味よくクールダウンさせるという、緩急自在のパフォーマンスにも舌を巻く。

なとりは「すごくいい景色です。今日は来てくれてありがとう!」と笑顔を見せ、「とても大事なお知らせ」として、2026年2月19日(木)に日本武道館でワンマンライブを開催すると発表。最高の空気がまた更新され、辺りは悲鳴にも似た大歓声に包まれる。大好きなアーティストを初めて観た憧れの地であること、友人のサドルくんと武道館に立ちたいという約束をしていたことを語った彼は、活動スタートから3年強が経った現在、自らに起きている心境の変化も明かす。

「僕は今までずっと、暗闇や夜を見つめて曲を作ってきたんですけど、こうしてたくさんの人と関わった経験を通して、ちゃんと日なたを見ながら、みんなを救えるような曲を作っていきたいという想いになってきました。ライブで実際に会うこと、歌の中でコミュニケーションを取ることは、すごく尊いものなんだなって。この尊さは絶対に忘れちゃいけないものだなって。わがままな気持ちかもしれないですが、暗闇をちゃんと見つめた上で日なたも書き続ける。そんななとりを、どうか愛してもらえたらと思ってます」

ネクストフェーズへの決意を示し、本編ラストは日なたの温もりが薫る「糸電話」。銀テープが鮮やかに発射される中、《きっとね、思いは同じじゃなくていい ずっと、同じ未来を見ていようよ》と涙声で歌うなとりを、今後も支えていきたいファンたちが手拍子で祝福する。客席からは「ありがとう」の言葉が飛び交い、彼の曲に救われている人がこんなにも多いということをしみじみと実感できた。

アンコールに応えて再登場したなとりは、リラックスした様子でバンドメンバーそれぞれに話を振って、気ままなトークを楽しんだりも。「さっきもいろいろ話したので、泣くようなことは言いたくないんですけど、みんながいてくれるっていう環境が本当に嬉しいです」と感謝を伝え、最後は未来への期待も滲むバラード「夜の歯車」を、8人でゆったりと演奏。

《そばにきて、あなたのために歌を歌うから》という甘いボーカル、夜更けの静寂に浸れるような落ち着いたアコースティックサウンドが、場内を温かくやわらかに包み込む。オーディエンスも《La la la la》のコーラス部分をシンガロングして全員がひとつに。そしてエンドロールが流れ、『劇場~再演~』は大盛況のうちに終幕を迎えた。

『劇場』の収録曲すべてを披露し、活動の第1章にピリオドを打ったなとり。2025年5月からは全国5ヵ所でのZeppツアーを開催する。本人も話していたけれど、きっとまだまだ変化を繰り返していくに違いない。ライブのキャリアはまだ1年未満、現在21歳の彼が、2026年2月の武道館でどんなステージを見せてくれるのか、楽しみにしておこう。

取材・文=田山雄士 撮影=タマイシンゴ

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