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LGBTQであることをカミングアウトしたら否定的な言葉が返ってくるのでは…見られ方・関わり方に変化はある?【お悩み#84】

Sitakke

Sitakke

はーいみなさん、ごきげんよう!満島てる子です。

とうとう新年度到来!
みなさん、きっと鬼の忙しさではあるんだろうけれど、同時に新鮮さたっぷりの日々を過ごしていたりもするんじゃないかしら。

札幌のLGBTQコミュニティにも、春の芽吹きを感じるニュースが。
あたしが2024年まで実行委員を務めさせてもらった「さっぽろレインボープライド」。
先日、とうとう2025年の開催日程が発表されたのです!

2025年は9月13日(土)、14日(日)で行われるとのこと。
現在クラウドファンディングも実施中らしく、「そうかぁ、もうそんな季節なんだよねぇ」と、古巣の動きに勝手に懐かしさを覚えていたりもしたのでした。

ライター・満島てる子

LGBTQに関する活動って、規模感ややり方も様々。

あたしもあたしなりに、ひとりのオープンリーな当事者のひとりとして、これからもできることをやっていければなぁなんて考えていたところだったのですが。

そんなタイミングでこんなお手紙が。ご紹介させていただきます。

読者のお悩み:LGBTQ当事者であることをなかなかカミングアウトできない自分。悩みは尽きず…

あらあら、以前あたしの話を聞いてくれたことがあるなんて!嬉しいわぁ。
なないろさん、講演への参加はもちろん、今回はお手紙まで送ってくださって、本当にありがとうございます。

そっか、あなたは性指向が女性で性自認が女性なのね。
ってことは、自己紹介のときに使うであろう単語は、レズビアンってことでいいのかな。

LGBTQの当事者との出会いは、あたしにとってもコミュニティのつながりを感じる大事な機会なので、なんだかこうした投稿をいただけたことは、個人的にひときわ嬉しかったりします。

しかしながら、そうかぁ。ご家族になかなかカミングアウトできずにいるのね。
自分のセクシャリティを伝えるか否か。これって当事者によってそのスタンス、実に千差万別だよなぁって、あたしは日々思っているの。

だってまず、あたしたち性的マイノリティってさ、そのひとりひとりの置かれている現状からして、人によって全然違うじゃない?
ましてや家族との向き合い方となると、そもそもの「家族のあり方」自体のバリエーションに加え、「おのれのスタンス」や「精神状況」もあいまって。

自分自身を振り返ってもそう思うけれど、当事者ひとりを例にとったとしても、その誰かの生きている過程のなかですら、一貫したものを見出せるわけではないように思います。

墓場まで持っていく…だけど今のあたしは奇跡

ちなみに、いろんなところでお話してはいるけれど。改めて書いてちゃうと。

あたしはそもそもおのれのセクシャリティについては、家族はもちろんどんな仲のいい友達であっても絶対に打ち明けずに、墓場まで持っていくつもりでかつて生きていました。

「自分と同じアイデンティティの人なんてこの世に誰もいないんだ」と思っていたし、ましてやゲイであることなんて誰も受け入れてくれないと思っていたからです。

だから今、こうやってフルオープンで「ゲイです!女装です!」って生きているのが、ときどきなんだか不思議というか、奇跡のように思ったりするときもあったりするのよね。

あたしはたまたま、恵まれた

札幌でのレインボープライドに合わせて両親が今日ドキッ!のスタジオに参戦!

実際、奇跡と言っていいほどめぐまれている部分が、あたしには確実に一個あるの。
それが、今回のお題でもある、家族からの理解とサポートなんだよね。

父•母•弟。
この中の誰にしてもそうだったのですが、あたしがもう全てに耐えきれなくなって「僕は結婚なんてできないんだ!」と、泣きながらカミングアウトの文言を電話越しに叫んだ、10年前のとある日から(そんなこともあったのよ苦笑)。

3人はあたしとまっすぐに向き合おうというスタンスから、様々な場所に足を運び、学び、あたしとともに成長しようとしてくれていました。

一時期は、地方のパレード運営にまで関わってくれていたの。

これは、まさにミラクルなことだったと思います。

家族から拒否され、拒絶されるという悲しい経験をする性的マイノリティは、事実として少なくありません。
むしろ、数としては多いような気がします。

そんな中、あたしはたまたま恵まれた。

たまたま運よく、家族との関係に大きな不和が生じなかった。

これは、そうあることが理想だとか正解だとかでは決してなく、本当に偶然そうだったとしか言いようがないんです。
思いがけず「うまく」いったというか。

だからここで書いていくことは、なないろさんをはじめとするコミュニティの他の仲間たちにとって、倣うことのできるモデルケースにはなりえない部分もあるかもなぁと感じはしながら。

自分の経験のなかに何か参考になることがあれば、どうかそれを少しでも伝えたいという気持ちで、今あたしはパソコンと向き合っているのでした。


あたしなりのAnswer

さて、なないろさん。
ここまでカミングアウトについて色々思うところを、かつての自分を振り返ったりもしながらあたしは綴ってきました。

でも今回あなたが聞きたいのは確か、カミングアウトして「変わったこと」があったのかどうかだったわよね。
まずはそこに、率直に答えていきたいと思います。

それでね。
周囲にゲイだと打ち明けたあと、あたしが感じた1番大きな変化についてなんだけれど。

これ実は、家族や友人の反応がどうとかというよりも、はるかに強く、はるかに色濃く。
あたしは、あたし自身のあり方、あたし自身の他者との関わり方の変化を、みずからの身でひしひしと感じたんですよね。

親から送ってもらった昔の写真 左が弟で右があたし。

やり方も最初は試行錯誤まみれだったし、先ほど書いた家族のときよろしく、伝える人によってポジティブなパターンがあり、はたまたネガティブなパターンがありと、様々な紆余曲折や苦労が確かにありはしたのですが。

誰かへ「ゲイです」と伝え、つながりを作り直していく。
その作業を通じて、あたしは自分自身に「ゲイでいいんだよ」とようやく言ってあげることができたというか…。

どうやら、どんな人よりもゲイである「かずきくん」(本名笑)の存在を受け入れられていなかったのは、かずきくん本人だったようで。

てる子さんはそんなおのれとの対話というか、「僕」と「あたし」で向き合う時間を、他者への自己開示を通じて得ることができた。そんな気が今でもしているんですよね。

もちろん、近くにいる人たちからの見られ方、関係性も多様に変化しました。

疎遠になった人。
より近くなった人。
カミングアウトはしたものの一生話が通じない人もいたり、「実は自分も」と思いがけないつながりを得ることもあったり。

総じて、相手が家族にしても友人にしても、以前よりも素直に向き合って(あるいは離れたいと思って)いいんだという感覚は、お互いに作りやすくなった気がしています。


「自分の準備」も大切なポイント!

とはいえ、そんな誰かとのつながりの根本、なんなら変化の中心軸にいるのは、どこまでいっても自分自身です。

特に誰かにみずからのセクシャリティを伝えたあとというのは、否応なしに「〇〇な(あたしであれば「ゲイ」な)自分」であることを意識させられるし、それが普段の振る舞いにも小さくない影響を与えてきます。

自分自身がそうした影響に耐えられる状態にあるのかも、「誰かにどう思われるのか」という問題以上に、カミングアウトできるかを判断するための大切なポイントになってきます。

だから、なないろさん。
もしこれからカミングアウトについて考えていくなら、そうした「おのれの準備」というのもあるんだなぁというのを、今はぼやっとでもいいから覚えておいてほしいの。

そして、いざとなったときは「自分、準備できているかな」って、どうか我が身を振り返ってみてください。

幸いなことにこの世の中には、そうした「おのれの準備」も含めたかたちで、カミングアウトにあたっての大切なチェック項目を共有してくれているホームページもあったりします(NPO法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」などは、一読に値します)。

こうしたサポートも適宜取り入れながら、望むならあなたなりのカミングアウトにいつかたどり着いてほしい。

自分自身に目を向けることも忘れずに、あなたなりの美しい開花として、誰かに自分のセクシャリティを伝えるという目標を、結果として叶えてほしいなと思うんです。

「話しました!」ってなないろさんからのお手紙が来る日、あたし楽しみにしてるわね。

でも無理はせずに。

少なくともあなたのカミングアウトをうれしく受け取った人間が、この画面の向こう側にはひとりいるんだよってこと、改めてここに記しておこうかな。

左は母から、右は父から贈られた服。ラジオで着させてもらいました~

コミュニティの仲間の明るい未来を祈りつつ。

自分自身の経験した「変化」がそこに資するものであることを願わざるにはいられないゲイが、すすきののはじっこできょうも生きているのでした。

ま・と・め♡

というわけで今回はカミングアウトについて、お手紙をもとに考えてみました!

日頃講演会とかでも伝えているんだけれど、カミングアウトについては「しているのが最高!」というわけじゃない。
そうするかしないかを当事者が気楽に決められる環境、それがまず生活のなかで成り立っているべきなのです。

とはいえ、まだ社会はそこに至っていないように思います。

だからこそ、それに向かっていく足がためとして、LGBTQに関する活動は続いていくべきだし、自分も可能な限り、そうした取り組みに関わっていきたい。
パレードの実行委員会からは卒業しましたが、個人的にあたしはそんな風に考えたりしているのでした。

真面目に語っちゃったかな?ではでは今日はこの辺で。
Sitakkeね〜!

***

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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部あい
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。

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