チュウオウ・ディビジョン『.言の葉党』全員インタビュー、東方天 乙統女役・小林ゆうが語る”ヒプノシスマイク”と新曲への想いチュウオウ・ディビジョン『.言の葉党』全員インタビュー、東方天 乙統女役・小林ゆうが語る”ヒプノシスマイク”と新曲への想い
音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』。各ディビジョンの新作CD7ヶ月連続リリースをチュウオウ・ディビジョン『.言の葉党』が締めくくる。各キャラクターの想いを描いた3曲とドラマトラックは、来年の2月21日に公開される映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』への期待を高める要素も満載だ。内閣総理大臣/中王区 言の葉党 党首・東方天 乙統女を演じている小林ゆうが、今作について語ってくれた。
――中王区がリリースするCDの第2作目ですね。
はい。CDをこうしてまた作っていただくことができて、本当に嬉しく思っています。『ヒプノシスマイク』という作品を応援してくださる皆様の温かいお力のお陰だと思っているので、この場を借りて感謝をお伝えしたいです。
――もともとはこの作品の中で様々なディビジョンの「敵」のような位置づけの中王区だったと思うのですが、小林さんが演じていらっしゃる東方天 乙統女も含め、各キャラクターの背景なども詳しく描かれる中で感情移入する方々が増えているという印象です。
そういうお言葉を頂けるようになって恐縮なのと同時に、とても有難いですね。乙統女様をはじめ3人それぞれのキャラクターの様々な表情を感じられるようになっていて、私もそこにすごく幸せを感じています。
――小林さんが東方天 乙統女としてステージに初めて立ったのは、2019年9月に開催された『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 4th LIVE@オオサカ《Welcome to our Hood》』でしたよね?
はい。各ディビジョンの皆様がファンの皆様と一緒に大切に築き上げてきた『ヒプノシスマイク』という作品の世界に加わらせていただいた最初の機会だったので、身の引き締まる想いでした。あの時はものすごく緊張したんですけど温かく迎え入れていただけて、ヒプマイを応援していただいているファンの皆様のおかげで今もこうして素晴らしい時間を過ごすことができているんですよね。今までに様々な感動を噛み締めてきましたし、学ぶこともたくさんあるのが『ヒプノシスマイク』です。このような作品に出演させていただけているのは、本当に幸せなことだと思っています。
――様々な展開があるので、ずっと目が離せないです。
そうですよね。私も毎回、驚きをいただいています。参加している私にとってもサプライズと感動を常に与えてくださる作品なんです。各ディビジョンの曲の素晴らしさはもちろん、ライブの内容も新鮮なことばかりでしたから。携わっているクリエイターの皆様も各分野の超一流の方々ですよね。様々な展開が続いている熱い状況の中にいさせていただけているのがとても幸せです。
――素敵な作品との出会いは、ご縁ですからね。
おっしゃる通りだと思います。私はこの作品に参加させていただく前に渋谷の街で『ヒプノシスマイク』の皆様の広告を見たんです。そして音楽を聴いた時に感動しました。こんなにもかっこいいラップをする曲があるなんてびっくりすると同時に憧れを持ちました。作品の世界観も唯一無二で、衝撃を受けたことをよく覚えています。その後、幸運なことにご縁を頂き、こうして東方天 乙統女様として常に新鮮な気持ちで臨ませて頂いていることに感謝しております。
――乙統女様への愛着もどんどん深まっているのではないでしょうか?
はい。乙統女様は男性キャラクターの皆様に対して厳しくて、困らせてしまう立場にいたと思うんですけど、だんだんと様々な背景や事情を抱えているのが明らかになってきているんですよね。乙統女様にも壮絶なバックボーンがあって、おつらいことがたくさんあると思うんです。たくさんの悲しみを乗り越えながら、現在も葛藤、後悔を抱えながら「本当にこれで良かったのだろうか?」と悩み続けているんです。昨年のドラマトラックで息子の帝統さんとのやりとりがありましたけど、本当だったらずっと一緒に暮らしたかったはずだと思うんです。でも、どうしてもそうすることができなかったんですよね。
――今までのドラマトラックで、彼女の背景がかなり描かれていますよね。
そうですね。お嬢様としてお育ちになり、壮絶な経験をされたことで、彼女は立ち上がって、たくさんの女性に支持されながら今の地位まで上り詰めたんです。前の総理大臣をクーデターの際にラップで倒して、自身が総理大臣になったというのは、ものすごい茨の道だったと思います。そして総理大臣になってからも茨の道は続いているんです。帝統さんとの再会は、私にとっても忘れられないシーンです。帝統さんがかけてくださった言葉を聞いて乙統女様も奮い立つものがあったんだと思います。お互いに手を抜かないで戦うことを誓い合って、その後に1人になってからふと漏らす一言も素敵です。総理大臣ではなくて息子を持つ母親としての表情を見せるあのシーンは、私もとても心を動かされました。
――これまでに描かれてきたことを踏まえると、今回のCDの乙統女様のソロ曲「Mic rewrites the ending」で歌われている心情が、とてもよくわかります。
そうなんですよね。私自身も、この楽曲が乙統女様の心情を表現してくださっていることにとても感動しました。素晴らしいメロディに乙統女様の気持ちが乗っていて、私自身を引っ張ってくださるような感覚になります。聴いてくださる皆様の気持ちも捉えて離さない楽曲だと思っています。私自身、何回も聴きたくなるんですよ。レコーディングのための準備ということとはまた別で、何回も繰り返し聴きたくなっていましたから(笑)。とてもお気に入りで、大好きな楽曲です。
――過去の過ちにまっすぐに向き合って、改めて理想に向かって進んで行く姿が伝わってきます。
そうですね。前作の「Just do it」の時の気持ちとは変化してきているんです。あの後に様々なことを経験して、民衆の方々の気持ちについて考えるようになっているんです。それまでは孤高の存在でしたけど、人々の生活と想いに触れながら様々なことを学ばれたのだと思います。「自分はこれからどのように国を改革して、目指す世の中に向かって行ったらいいのだろうか?」という考えに立ち戻り、今までに自分がしてきたことを反省し、後悔もしながら葛藤している姿が、「Mic rewrites the ending」には詰め込まれています。この楽曲を聴いていただけたら、乙統女様のこれまでの人生と今の心情が聴いてくださる皆様に伝わると思っています。
――乙統女様が世の中を良くしたいと思っているのはずっと変わらないところだと思うんですが、その理想を実現するためのやり方について葛藤しているんですよね。
そう思います。自分の過ちや弱い部分も認めていて、それを認めるのはつらいですけど、それをありのままに受け止めて、前を向いてまた進もうとしているんです。そういう乙統女様に私は何があっても寄り添って、『ヒプノシスマイク』の世界に入ってきてくださるお客様にお芝居と歌を全力でお届けしたいです。今回の楽曲で改めてそういうことを思いました。全部のフレーズが素敵なので、1つも取りこぼさないように気持ちを込めてレコーディングで歌いました。
――この楽曲を手掛けたのは、invisible mannersですね。
はい。 invisible manners様は『ヒプノシスマイク』の楽曲をたくさん手掛けていらっしゃいますけど、とても大好きだったんです。「Mic rewrites the ending」を手掛けてくださったのがinvisible manners様だと知って、ものすごく嬉しかったです。トラックもすごく気持ちを搔き立てられる印象的なフレーズばかりで、何度も聴いてしまいます。歌詞、メロディの細部にわたって乙統女様の心情を表しているんですよね。インストも全てが素晴らしいので、そこもぜひ皆様に聴いていただきたいです。インストで聴いてもドラマチックで、全てが物語になっている楽曲です。invisible manners様のマジックが隅々にまで溢れています。
――速いテンポで突っ走るタイプのサウンドではないからこそ、乙統女様の心情がじっくりと描き上げられている印象です。
初めて聴いた時、表現するのが難しい楽曲だという印象を受けたんです。とても身が引き締まる思いだったんですけど、聴けば聴くほど大好きになって、「ぜひ歌わせてください!」という気持ちが高まっていきました。「私に歌えるのだろうか?」という緊張感とプレッシャーはありつつも、それを上回るくらい嬉しかったです。「こんなにも乙統女様の気持ちになれる楽曲と巡り合えることができた」と感じましたから。メロディのミステリアスさも乙統女様の佇まいを体現していると思います。優雅、上品、高貴であると同時に、厳しさ、強さ、重厚、ミステリアスな部分もあるのが乙統女様ですから、そういう佇まいも感じていただける楽曲ですね。
――昨年、合歓役の山本希望さんに取材した際に「役者がラップをやる意味と、ヒプノシスマイクの面白さが詰まっているのが小林さんです」とおっしゃっていたんです。「Mic rewrites the ending」もまさにそういう楽曲だなと感じました。
とんでもないです(笑)。そんなお言葉を頂けて、すごく嬉しいです。
――ドラマトラック、コミック、アニメだけでなく、楽曲を通じても作品や各キャラクターのことが深く伝わってくるのが『ヒプノシスマイク』ですよね。
はい。私も『ヒプノシスマイク』の幅広さと奥の深さを常に感じています。様々なコンテンツが合わさることで立体的に感じられるものがあるので。ライブを含めた全てを楽しみながらストーリーに入り込んで、気持ちを重ねていただけるのが『ヒプノシスマイク』なんです。
――伏線が回収されたり、意外な事実が判明したり、様々なドキドキが常にあります。
皆様が「今後、どういう風に展開していくんだろう?」とか推理したくなったりするミステリアスさも魅力ですよね。好きなことについていろいろ想像して、推理をするのは、とても楽しいですからね。いろいろ考えたくなるパワーを持っているのが『ヒプノシスマイク』だと思います。まだ明かされていないところもたくさんあるので、ぜひ浸っていただきたいです。
――今回のCDに収録される勘解由小路 無花果(CV.たかはし智秋)の「Get Freedom」と碧棺 合歓(CV.山本希望)の「Do the right thing」はお聴きになりました?
はい。無花果さんの「Get Freedom」は、前作の「No Pain, Not to be Strong」とはまたうって変わって、新しい表情を感じることができる楽曲だと思いました。無花果さんも背負っているものがたくさんあって、様々なことを乗り越えながら生きているんです。無花果さんの今の気持ちがまさしく表現されている「Get Freedom」です。智秋さんの表現力によって楽曲に込められている気持ちがとても立体的に浮き彫りになっていると思います。合歓さんの「Do the right thing」はパワフルでフレッシュですね。合歓さんのそういう部分を山本さんが余すことなくラップと歌で表現していらっしゃいます。前作の「Independence day」とはまた別の引き出しで合歓さんを表現しているのが素敵です。
――「Do the right thing」は、歌から始まるのが新鮮でした。
歌声に聴き入ってしまいますよね。「Independence day」は思いっきりラップをする楽曲でしたけど、「Do the right thing」は美しい歌声も聴かせてくださるので、意外性があるんだと思います。私も無花果さんと合歓さんの楽曲を聴くのがいつも楽しみなんです。智秋さんと山本さんはとても素敵なラップをされるので、ひとりの言の葉党ファンとして聴かせていただいています。
――3人で歌う楽曲は、心強いパワーで包まれる感覚になるんじゃないですか?
そうなんですよ。それは言葉では言い表わせないようなものがあります。絆、信頼、連帯感とか、一緒に歌う時にしか生まれないものがあるんです。ステージで歌わせていただく時はとても緊張するんですけど、特別な感覚があるのが毎回楽しみです。ライブで歓声を送ってくださっている客様にも、この場を借りて改めて「ありがとうございます」とお伝えしたいですね。
――今年の4月に開催された「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 10th LIVE ≪LIVEANIMA≫」のBlu-rayが来年の1月にリリースされますが、あの時の会場は幕張メッセでしたね。大きなステージで歌いながら感じるお客さんのエネルギーは、ものすごいものがあるのではないでしょうか?
本当におっしゃる通りです。とても貴重で素晴らしい体験をさせていただいています。乙統女様に心から感謝しているんです。乙統女様の役を頂いたからこそ、あんなにも素晴らしいステージに立たせていただいていますので私も『ヒプノシスマイク』のひとりのファンなので、「歓声を頂いて良かったですね、乙統女様、無花果さん、合歓さん」とステージ上で客観的に捉えているところがあります(笑)。
――(笑)。今回のCDを聴くと『ヒプノシスマイク』の今後の展開がますます楽しみになります。ドラマトラックも、ものすごいことになっていますから。
そうなんです。今までは中王区 言の葉党として存在していたんですけど、チュウオウ・ディビジョンという名前になりまして。ディビジョンの1つとして存在することになりまして私も驚いております。乙統女様としてはチュウオウ・ディビジョンとしてファイナルディビジョン・ラップバトルを勝ち抜いたディビジョンと戦う覚悟を決められたんですよね。「私たちはラップであなたたちを倒しますよ」というのは大変なお気持ちだと想像しています。ドラマトラックを聴いていただくことで、どういう経緯でその結論に至ったのかがわかります。絶対に聴き逃せない内容になっていますので、聴いていただけけることを心から願っています。
――来年の2月21日に公開される映画への期待も高まるドラマトラックです。
そうですね。やはり様々なことを全部合わせることで何倍も楽しめる『ヒプノシスマイク』なんです。映画でもそういうエンタテインメントを皆様に受け取っていただけると思います。日本“初”の「インタラクティブ映画」という新しい試みにもワクワクします。結末が皆様のその場でのご投票によって変わるなんて、びっくりです。エキサイティングなシステムです。初めてそのお話を伺ったのはアフレコの現場だったんですけど、私を含め周りにいたキャストの方々も声を上げて驚いていらっしゃいました。
――どういう結末を迎えるのか、誰にもわからないということですね。
はい。お客様の熱い1票が結末を変えるというのは、皆様それぞれの熱い想いがちゃんと反映されるということでもあると思うんです。『ヒプノシスマイク』がお客様と共に歩んでいる作品だというのも改めて強く感じます。頂いている愛情への恩返しではないですけど、ずっと応援してくださっているファンの皆様のお気持をとても大事にしている映画になると思います。
取材・文=田中大 撮影=大塚秀美