【事業継承】後継ぎ経営者のリアル— 事業承継の課題と成功の秘訣に迫るイベントレポート
企業取材をしていると、親から役職を継いだ二代目・三代目の経営者たちに多く出会う。彼らは従業員や取引先から先代と比較されることが多く、日々葛藤やプレッシャーを抱えながら経営に取り組んでいる。
そんな後継ぎ経営者たちが、どのような悩みを抱え、どのように克服してきたのかを紹介するイベントが、2025年2月20日に長岡市のコワーキングスペース「assemble長岡」で開催された。参加者は25人ほど。長岡市内だけでなく、加茂市など新潟県内各地からも集まった。
会場には市外からも集まった
最初に登壇したのは、南魚沼市の老舗飲食店「株式会社小玉屋」4代目の小島雄介取締役専務と、2019年に3代目社長に就任し、夫とともに経営に尽力する「コンドウ印刷株式会社」の近藤保子代表取締役。それぞれが経験した苦労と、それを乗り越えた道のりを語った。
小島専務は、東京の大学院を修了後、料理の道へ進み、2013年に地元・南魚沼市に戻り4代目に就任。親子三世代で楽しめるメニューの提供や、生産者と協力した商品開発を通じて、地域食材の魅力を発信し続けている。2023年には「NIIGATA GASTRONOMY AWARD」飲食店部門特別賞を受賞し、2024年には「30人の若手シェフ」に選ばれた。かつては大規模なイタリア料理店で働いていたが、家業のファミリーレストランに転じた際、働き方や考え方の違いに戸惑うことも多かったという。特にコロナ禍では大きな不安とプレッシャーを感じたが、今では「父母のやってきたことのすごさを実感している」と語る。
「両親のやってきたことの凄さに気がついた」と語る小島雄介取締役専務
一方、2006年に近藤家へ嫁ぎ、事業承継に関わることになった近藤代表取締役は、ベテラン社員の退職を機に「安心して長く働ける職場づくり」に注力。「健康経営優良法人2024」や「令和6年度はたプラチナ賞」などを受賞し、働きやすい環境づくりを推進している。就任当初は自身の経歴や性格にコンプレックスを感じ、一時は引きこもってしまったが、その後自己啓発本を読み漁り、「ストレングスファインダー」などの性格診断テストを活用しながら少しずつ自信をつけていった。「今後はアクアポニックスなど、新たな分野にも挑戦したい」と意気込む。
かつては自身が苦しい立場に置かれていたことを語る近藤保子代表取締役
続く第2部では、「小柳建設株式会社」代表取締役社長・小柳卓蔵氏が登壇。「次世代型アトツギ戦略~跡継ぎとして腹を括った瞬間~」と題し、32歳で社長に就任してからの10年間の挑戦や苦悩、企業成長を支えた戦略について語った。
イベントの最後まで話を聞いていた奈良場晃大さん(35歳)は、「今後、自分自身も事業承継の予定があり、参考になればと思い参加した。自分の立場に置き換えて、より身近に考えることができた」とコメント。また、夫が事業承継に直面している最中だという髙橋裕子さん(40歳)は、「めちゃくちゃ面白く、参考になった」と語った。
夫が事業継承中だという髙橋裕子さん
イベント終了後には交流会が開催され、参加者同士が事業承継に関する悩みや成功事例を共有。それぞれの立場での課題や気づきを分かち合い、新たなネットワークを築く機会となった。
(文・撮影 湯本泰隆)