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高知県土佐清水市にすむ<トサシミズサンショウウオ> オオイタサンショウウオとの見分け方とは?

サカナト

トサシミズサンショウウオ(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

高知県土佐清水市に生息するオオイタサンショウウオと考えられていたサンショウウオが、実は別種であることが判明。近年開発された遺伝子解析を用いた新たな分類方法(分子系統学)とこれまでの形態学的な知見を併せることで、2018年に新種登録されました。

このサンショウウオが、トサシミズサンショウウオです。

では、トサシミズサンショウウオとオオイタサンショウウオの見た目の違いはどこにあるのでしょうか。その見分け方について紹介します。

トサシミズサンショウウオは土佐清水市に生息

土佐清水市に生息する小型サンショウウオの1種である、トサシミズサンショウウオ

和の森わんぱーくこうちアニマルランド(アニマルランド)の学芸員と菅原弘貴博士、永野昌博准教授らが、形態学的な違いと分子系統学的な違いから、2018年に新種登録した「止水性サンショウウオ」です。

トサシミズサンショウウオ(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

止水性サンショウウオとは、池などの水の流れがほとんどない場所で産卵するサンショウウオのこと。

トサシミズサンショウウオは高知県土佐清水市の限られた地域にしか生息しないため、土佐清水市の天然記念物に指定されています。

ずんぐりむっくりの愛嬌のある姿は子どもたちのアイドルで、大人も魅了するかわいい両生類。イモリの仲間で、水辺周辺に生息します。

トサシミズサンショウウオの幼生にはバランサーがある(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

体長は12cm程度で、幼生の時期には止水性サンショウウオの特徴である「バランサー」という器官が現れますが、大人になると消失するそうです。

トサシミズサンショウウオとオオイタサンショウウオの見分け方

土佐清水市に生息する小型サンショウウオの1種は、体型や見た目が似ていることからオオイタサンショウウオ(学名:Hynobius dunni)と同種のサンショウウオであるとされてきました。

体長が少し短めである、背中に黒い斑点がない、白い斑点がお腹に現れる、卵塊の形状が異なるなどの微妙な違いはあるのですが、オオイタサンショウウオの地域性の変異種だと考えられていたそうです。

トサシミズサンショウウオの卵塊はコイル型(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

つまり、トサシミズサンショウウオとオオイタサンショウウオの見分け方は、背面の黒い斑点や体長などで見分けられます。しかし、黒い斑点があるほうのオオイタサンショウウオは黒い斑点がないことも多く、体長に関しては個体差も大きいので、簡単に見分けることはできません。

お腹の白い斑点の有無が一番の決め手となります。

腹面に白い斑点がある<トサシミズサンショウウオ>

トサシミズサンショウウオ(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

トサシミズサンショウウオは体長が12センチ程度で、背面に黒い斑点はなく、腹面に白い斑点があります。

卵嚢はコイル型の形状をしています。

背面に黒い斑点がある<オオイタサンショウウオ>

オオイタサンショウウオ(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

オオイタサンショウウオは体長が14センチ程度で、背面に黒い斑点がありますが、中には黒い斑点が薄い・ない個体もあります。卵嚢はバナナ型、コイル型です。

最終的にミトコンドリアDNA解析によって完全に別種であることが明らかとなり、2018年に「トサシミズサンショウウオ(学名:Hynobius tosashimizuensis)」として新種登録されることになりました。

日本に住む小型サンショウウオは50種類

現在、世界に生息するサンショウウオ科に分類される小型サンショウウオ類は約100種類。そのうち、日本に生息するものは50種類(日本産爬虫類両生類標準和名リスト2025年4月28日版)です。

四国四県に分布するイシヅチサンショウウオ(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

このうち、49種類が日本固有種(日本にしか生息していないもの)とされています。世界の約半数の種が日本に生息しているなんて、日本は小型サンショウウオの宝庫と言えますね。

なお、トサシミズサンショウウオと同様に、他のサンショウウオの新種も続々と発見されています。2018年には日本に生息する小型サンショウウオは31種類とされていたので、遺伝子解析による分子系統学的な分類法のすごさが分かります。

トサシミズサンショウウオは絶滅危惧種

土佐清水市ではトサシミズサンショウウオの生育環境の悪化(温暖化の影響で水場が消失するなど)を受け、アニマルランドなどで人工飼育を行なってきました。

アニマルランドにおけるトサシミズサンショウウオの人工飼育の成功により絶滅を防ぐため、熊本市動植物園や足摺海洋館SATOUMI、四国水族館などで分散飼育されています。

絶滅危惧種IA類のトサシミズサンショウウオ(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

トサシミズサンショウウオは、環境省のレッドリスト(2020)で絶滅危惧IA類(CR:ごく近い将来に野生での絶滅が危惧されるもの)に指定されるほど希少です。

トサシミズサンショウウオは『絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)』で、国内希少野生動植物種に指定されており、捕獲や譲渡は禁止されています。

生物多様性を維持するための配慮

希少生物は一部の心無い人に捕獲・採取されることが多く、絶滅する恐れがあります。

もし見つけても、SNSなどで場所が特定できるような写真掲載や記述をすることは避けてください。また、環境を汚染したり、破壊したりしないように配慮しましょう。

持ち出し禁止(提供:イラストAC)

トサシミズサンショウウオのような絶滅危惧種指定の希少生物を捕獲・採取した場合、『種の保存法』により懲役刑や罰金刑などに処されるため、絶対に持ち帰らないようにしてください。

なお、山に入ってもトサシミズサンショウウオは非常に見つけにくいため、水族館で安全に観賞するほうが自然にも自分にも優しいのでおすすめです。

トサシミズサンショウウオを見に行こう!

トサシミズサンショウウオを見たい人は、高知県へ遊びにいきましょう。

和の森わんぱーくこうちアニマルランドでは多くの個体を飼育しているので、よほどの事情がない限り見ることが可能。また、熊本市動植物園や足摺海洋館SATOUMI、四国水族館などでも飼育・展示しています。

アニマルランドでの展示の様子(提供:和の森わんぱーくこうちアニマルランド)

ただ、個体の状態(産卵期や体調など)によっては展示されない場合もあるので、展示しているかどうかを事前に問い合わせるのが確実です。

かわいいトサシミズサンショウウオを見て、癒されましょう!

(サカナトライター:額田善之)

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