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【特集】修理を手がける農業機械は多種多様! 現代の農業を支える新潟食料農業大学卒業生・新潟クボタの髙橋空さん

にいがた経済新聞

新潟クボタ新津営業所の髙橋空さん

株式会社新潟クボタ新津営業所(新潟市秋葉区)の髙橋空さんは、今年で入社2年目。農業機械の修理を請け負う「整備士(サービス職)」の一人として、日々田植え機やコンバインなどに向き合っている。「修理をした後、お客様から『ありがとう』と言ってもらえることがやりがいです」。作業着姿でインタビューを受けながら、そう言って笑顔を見せた。

髙橋さんは新潟食料農業大学(新潟県胎内市)アグリコースの卒業生。高校時代から農業に関わる仕事を目指し、同学で専門分野の知見を深めた。上司の長谷川圭史新津営業所長は「修理だけでなく、農家のお客様へ作物に関するアドバイスや機械の買い替えのご提案など、営業と二刀流でできる人材が必要になってくる」と話し、新人のこれからへ期待を寄せる。

果樹園芸が盛んな地域に生まれて

髙橋さんは聖籠町の出身。祖父母の影響で農業へ興味を持ち、高校、大学と農業関連の学校へ通った

髙橋さんは聖籠町の出身。実家は農家ではないが、趣味で畑をしている祖父母を手伝ううちに自分も農業へ興味を持ち、県立新発田農業高等学校へ進学。そして、「学びを深めたいと考え、新潟食料農業大学へ進学しました。当時は設立されたばかり(2018年設立)でしたが、新しい知識を得るためにも新しい大学へ行きたいと思いました」(髙橋さん)。

髙橋さんが当時、関心があったのが果物の栽培。特に新発田市で栽培が盛んなイチゴについて興味を持っていた。新潟食料農業大学は農学分野の単科大学。大学が持つ畑や実験室など、果物の研究に関する設備が充実していたことも魅力的だったという。

「やはり、現場が近いことが当大学の特徴。学生たちも生産者の実情に関心を持っている人が多い」そう話すのは、新潟食料農業大学アグリコースの趙鉄軍准教授。髙橋さんは卒業研究で趙准教授のゼミに所属していた。

新潟食料農業大学の趙鉄軍(ちょうてつぐん)准教授。中国・山東省出身で、農業環境工学と農業情報工学を専門としている

同大学では、専門的な分野へ分かれる2年時以降はもちろん、1年時から田畑へ出てコメやトマト、トウモロコシなどの栽培を体験するなど、早い段階から実地や実学を重視した授業を提供していることも特徴の一つだという

髙橋さんは3年時から4年時にかけて、イチゴの品種比較やLED補光栽培、局所加温に関する研究を行っていた。当時の様子について趙准教授は「すごくやる気満々で、グループワークができる学生だったという印象。彼の研究はイチゴだったが、トマトやアスパラガスなど、ほかの作物の学生とお互いにサポートしながら研究をしていた」と話す。他の学生を手伝うことで、その作物に関する知識も身についていた様子だったという。

髙橋さんは「『越後姫』などの品種に関して、糖度や食味の比較をしていました。(イチゴの収穫期である)12月から5月まで、ほぼ毎日大学へ行って友人たちと協力しながら研究して……大変でしたが、思い出に残っています」と笑顔を浮かべながら当時を振り返る。

局所加温は、ハウス栽培などで植物が成長する一部分だけを温める方法。ハウス全体を温めるよりも消費エネルギーを抑えつつ、冬場に栽培ができる。一方で新潟県の冬は気温だけでなく日照時間も減ることが課題となる。こうした社会実装される前の方法の検証について、「現場に近い場所で研究ができるのも、新潟食料農業大学の特徴」だと趙准教授は話す

農家をサポートする仕事へ

新潟クボタ新津営業所

一方で就職の際に選んだのは、農業機械販売の新潟クボタだった。髙橋さんが同社への就職を考え始めたのは、実は高校3年生の頃。授業の一環として農機の展示会へ見学に行った際、そこに出展していた様子を見て感銘を受けた。

「展示会は新潟市で開催されていて、そこで新潟クボタの社員が接客をしている姿を見て、自分も農家を手助けする仕事をしたいと思いました」(髙橋さん)。

展示会のイメージ(写真提供:新潟クボタ)

展示会のイメージ(写真提供:新潟クボタ)

高校生の頃からの念願叶い、髙橋さんは現在、新津営業所で「サービス職」として農機の修理に携わっている。対応するのはクボタのトラクター、田植え機、コンバインをはじめ、刈払機、動噴、最近はドローンなど多種多様。農業機械は種類はもちろん、用途ごとに様々な機能がついているため「毎回違うものを修理している」ようなものだと髙橋さんは話す。

新津営業所の対象エリアは、秋葉区全域、江南区、中央区の一部、阿賀野市の一部。特に田植え・稲刈りの時期には多くの仕事が舞い込む。それでもやはり、「修理して感謝された時にやりがいを感じますね。最近も、耕運機のエンジンを直してお客様に『ありがとう』と言われました」と髙橋さんははにかむ。また、大学で培った農業の知識や農家目線を駆使し「故障の原因や、壊れないように注意すべき点も修理した際にお客様へ伝えています」という。

新津営業所の整備工場の様子。最近では、エアコンが導入され快適に作業を行っているという。同営業所には、髙橋さんを含め4人の整備士(サービス職)が働いている

農機を修理する髙橋さん。様々な農業機械に対応しなければいけない現場のため「初めての作業は、次もできるように備えてしっかりメモを取るようにしています」という

修理も提案もできる次世代の人材に

長谷川所長(写真左)は髙橋さんについて「仕事に対して責任感をもって、しっかり取り組んでいるというのが一番の印象」だと話す

農機の修理には一人で対応する場合も多く、「毎回緊張している」と髙橋さん。そんな新人の様子を、長谷川所長は見守る。「(サービス職は)本当に覚えることがたくさんあります。対応する農機は多種多様で種類も多く、毎日が違う作業。だから今髙橋さんに求めているのは、スピードよりも技術や経験を積んでもらうこと。コミュニケーション能力や接客態度は全く問題ないので、その良い部分は残しつつ、経験を身に着けてもらいたい」。

現在は営業所内の整備工場で作業することが主だが、経験を積むことで、田植えや稲刈りの時期には田畑へ出向き、その場で修理にあたる仕事も任せていくつもりだという。

田植え機を整備する髙橋さん

また、長谷川所長は「今後は営業職とサービス職(修理)、どちらもできる人材が求められるようになる」と語る。「整備だけでなく、お客様に作物についてのアドバイスができたり、農機の買い替えが必要だと営業的なご提案ができるような、二刀流の人材が必要になってくる。髙橋さんは大学で専門分野を学んできたアドバンテージがある」(長谷川所長)と期待する。

人口減と高齢化が進む中、農業には人手不足の深刻な波が押し寄せている。食料生産を維持するため、現代においては農機の活用は欠かせない。「初めて触る機械だと、調べながら修理にあたることになります。修理の知識もまだまだ未熟なので、今後はもっと信頼されるサービス職になっていくため、経験値を増やしていきたいです」(髙橋さん)。現代の農業を支える若者は、そう力を込めて語っていた。

(文・インタビュー 鈴木琢真)

【学校情報】

新潟食料農業大学 胎内キャンパス(新潟県胎内市)

学校法人 新潟総合学園 新潟食料農業大学
胎内キャンパス(新潟県胎内市平根台2416)
新潟キャンパス(新潟市北区島見町940)

新潟食料農業大学 webサイト

新潟食料農業大学は、食・農・ビジネスに特化した実学重視の大学として、2018(平成30)年に開学した私立大学。開学以来、「食のジェネラリストの育成」を掲げ、農業生産から食品加工・流通・販売、さらには経営戦略までを一貫して学べる教育カリキュラムを展開。実習を重視した教育方針により、地域農業や食品関連企業との連携も活発で、新潟県内外の食料産業界に即戦力となる人材を輩出している。

◎シリーズ『新潟で輝く卒業生たち』

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