バンド・エイド40周年!クリスマスにジョージ・マイケルとクリス・マーティンが夢の共演?
「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」リリース40周年
バンド・エイド「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」の発表40周年にあたる今年、同曲の新たな "2024アルティメット・ミックス"のストリーミング配信が11月25日に開始された。
バンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」が最初にリリースされたのは1984年。今から40年前になる。その後も定期的にバンド・エイドシリーズとしてリメイクされ、その時々のUKポップシーンの人気アーティストが歌い参加している。日本では1984年のオリジナルが、その後のバージョンに比べ、圧倒的に認知されている。参加メンバーも1984年バージョンはとんでもなく豪華だし、スーパースターたちの共演による初めてのチャリティソングというインパクトの大きさが絶大だったからだ。
しかし、その後のバンド・エイドシリーズもその時々のイギリスのシーンを分かりやすく反映しており、その時代のUKポップシーンを垣間見るには実に面白いサンプルであり、簡単にスルーしてしまうのは勿体ないと思うのだ。そうした観点から、今回のコラムではオリジナルのリリース40周年の節目として、歴代のバンド・エイドシリーズとその時々のポップシーンを振り返ってみたい。
スーパースターたちが歌い、大ヒット
バンド・エイド「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」(1984年)
ボブ・ゲルドフとミッジ・ユーロが中心となり、当時のチャートを賑わしていたイギリス、アイルランド出身のアーティストを中心としたスーパースターたちが歌い、大ヒットしたのは周知のとおり。プロデュースを務めたのは当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったトレヴァー・ホーン。印象的なドラムを叩いているのはフィル・コリンズ。これぞ80年代という抜けの良いビートを鳴らしている。
ポール・ヤングの歌い出しからはじまり、ボーイ・ジョージ、ジョージ・マイケル、サイモン・ル・ボン、スティング、ポール・ウェラー、ボノらがソロパートを歌い繋ぐ、まさに夢の共演となっており、イギリスでは当然ナンバー1ヒット、アメリカでも13位まで上がるヒットとなった。
ダンスミュージックアクトが中心に選ばれたバンド・エイドⅡ
バンド・エイドⅡ「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」(1989年)
オリジナルのリリースから5年後の1989年にバンド・エイドⅡが編成され、ストック・エイトキン・ウォーターマン(SAW)がプロデュースを行った。参加メンバーもカイリー・ミノーグ、ブロス、バナナラマ、ジェイソン・ドノヴァン、ジミー・ソマーヴィルといったダンスミュージックアクトが中心に選ばれている。
1989年当時、SAWは超売れっ子プロデューサーとして君臨しており、ユーロビートでヒットを連発していた時代だった。バンド・エイドⅡにおいてもSAWらしいデジタルビートが導入されているが、ユーロビートのような激しいダンスナンバーではなく、分かりやすいポップソングに仕上がっている。また、意外な参加メンバーとしては、クリス・レアやケヴィン・ゴドレイ(10cc)が参加している。
生音の演奏でシンプルなロックに仕上がっている20周年記念盤
バンド・エイド20「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」(2004年)
20周年を記念して制作され、それまでの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」と比べると生音の演奏でシンプルなロックに仕上がっている。参加メンバーは、コールドプレイのクリス・マーティン、U2のボノ、ロビー・ウィリアムズ、ザ・ダークネスのジャスティン・ホーキンス、ディヴァイン・コメディことニール・ハノンらを中心に編成されている。
演奏を務めるのはポール・マッカートニーがベース、レディオヘッドからはギターにジョニー・グリーンウッドとピアノにトム・ヨーク、ザ・ダークネスからはダン・ホーキンスがギターを弾いている。このメンツから察しの通りストレートなロックサウンドに仕上がっており、ラウドなギターソロが気持ち良く鳴っている。
また、初めてラップのパートがつけ加えられ、ディジー・ラスカルが担当している。2004年のポップシーンを考えれば、ラップが挿入されることは至極当然のことと言えるだろう。なお、プロデューサーはレディオヘッドでお馴染みのナイジェル・ゴドリッチが務めており、納得の人選だ。
エボラ出血熱対策のチャリティーとして制作された30周年記念盤
バンド・エイド30「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」(2014年)
30周年を記念して2014年に制作されたバンド・エイド30は、当時、西アフリカで猛威を振るっていたエボラ出血熱対策のチャリティーとして制作された。参加しているメンバーは、バンド・エイド20から引き続きのボノ、クリス・マーティンに加え、エド・シーラン、サム・スミス、シネイド・オコナー、シール、ワン・ダイレクションらが参加している。演奏には、クイーンのロジャー・テイラーも参加し、プロデュースはアデルやポール・マッカートニーでお馴染みのポール・エプワース、リミックスはアンダーワールドが担当している。
シンガーソングライターの参加が多いためか、かなり落ち着いたアレンジが施されており、当時、新進気鋭のアーティストだったエド・シーランやサム・スミスが印象的なボーカルを聴かせてくれる。また、10年前のバンド・エイド20では歌い出しのトップバッターを務めたクリス・マーティンも2014年の “30バーション” では大御所として余裕の声を聴かせてくれる。1984年のオリジナルでは声を張り上げてシャウトしていたボノも落ち着いた歌いっぷりで魅力的。さらにはリードをとるボーカリストも女性の割合が多くポップシーンのみならず女性の社会進出という世相も反映している。
元祖リミックスのプロデューサーが制作した40周年記念盤
バンド・エイド40「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」(2024年)
そして、今年、40周年を記念してバンド・エイド40によるバージョンが11月29日にリリースされた。本作は今までリリースされた過去の音源をトレヴァー・ホーンがミックスし、「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?(2024アルティメット・ミックス)」として制作されている。
極めて今日的な手法で作られるわけだが、トレヴァー・ホーンといえば、80年代にフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「リラックス」でおびただしい数のリミックスを作りまくっていたことは有名だ。元祖リミックスのプロデューサーが2024年のポップシーンにどんなバージョンを送り込んでくるのか興味深いところ。また、ボーカルについては、1984年のスティングと2014年のエド・シーラン、同様にボーイ・ジョージとサム・スミス、ジョージ・マイケルとハリー・スタイルズの歌声がミックスされ、デュエットとして仕立てられるというから、これまた時代を超えたスーパースターの夢の共演を聴くことができる。
定期的にリメイクされる理由とは?
さて、多少変則的なローテーションはあったものの、「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」は、バンド・エイド20以降は10年周期でリメイクされている。こうした背景にはクリスマスソングとしての企画性やチャリティーソングとしての意義があることは勿論だが、それ以上に楽曲そのもののメロディーの良さが最大の理由だと感じる。併せて、どんなタイプのボーカリストが歌ってもサマになるポップソングとしての魅力も大きなポイントと言える。
さて、今回リリースされる2024年ミックスを含め4種類のバンド・エイドによる「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」が出揃ったわけだが、時代を反映したそれぞれのバージョンを聴き比べて、ポップミュージックシーンの変遷を感じてクリスマスを過ごしてみるのはいかがだろうか。いささか音楽ヲタクなクリスマスの過ごし方かもしれないが、そんなクリスマスも楽しいかもしれない…
それでは、皆さんに素敵なクリスマスが訪れることを祈って… メリー・クリスマス!