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朝練も自主練もなし、練習時間も断然短いのにスペインで「上手い選手」が育つ理由

サカイク

EURO2024で見事12年ぶりの優勝を果たしたスペイン代表。大会前は優勝候補ではなかったにも関わらず、イタリア、ドイツ、フランス、イングランドと名だたる強豪国を打ち倒し、優勝に相応しいパフォーマンスを見せ続けました。

決して選手層で圧倒していたわけではないスペイン代表は、大会最年少出場であるラミン・ヤマル選手をはじめとした、若い選手の活躍が特徴的でした。開催当時16歳だった青年が大会随一の活躍を見せたのは、スペインの育成力の高さがうかがえたといえるでしょう。

長年ラ・リーガの解説を務め、自身でスペインの育成年の指揮をしたこともある小澤一郎さんは著書『自主練もドリブル塾もないスペインで「上手い選手」が育つワケ』で、スペインの育成について語っています。

第三回となる本記事では育成年代での練習時間の違いを抜粋してお届けします。

<<第二回:スペインでは小1でも団子サッカーにならない理由とは⁉ スペインと日本の育成環境の違い

(写真提供:小澤一郎)

 

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■育成年代の練習時間は日本よりも断然短い

スペインと日本の育成年代では「練習時間の長さ」も大きく違います。スペインの練習時間は、日本と比べて圧倒的に短いです。

世界各地の育成機関を巡ってきたサッカーコンサルタントで、現在は日本でFC市川GUNNERS という育成クラブを運営する幸野健一さんは、「スペインの子どもたちのサッカーの練習は週に300分程度に収まっている」と話していましたが、その数字は私の体感にも近いです。

スペインでは1回の練習が90分程度なので、それが週に3日程度だと300分に収まります。それに加えて週末にリーグ戦が1回あるので、一週間の活動日数は4日程度になるのが普通です。プロクラブの下部組織でもそれは同じです。

レアル・マドリーやバルセロナのような世界的な名門クラブの下部組織でも、週に2日程度は必ず休みがあります。そして土日のどちらかは必ず休みます。世界のサッカーの育成年代では、そのくらい休むのが当たり前です。それと比較すると、日本の子どもたちには倍以上の時間を練習に費やしている子も多いでしょう。

 

(写真は少年サッカーのイメージ)

 

なおスペインの育成年代では、後述するようにチームの登録人数も限られています。練習に参加する子どもの数も限られてきますし、1人の指導者が見る子どもの数も少ないです。

そのため一部の子どもが見学になり、ぼーっと待たされるような時間はほとんどありません。結果として練習中は高いインテンシティで動き続けるものになり、短時間で密度の高い練習を行うことができるのです。

 

■スペインに「朝練」や「自主練」がない理由

サッカー部を含む日本の部活には「朝練」があるチームがいまだ多いと耳にします。また午後の練習後にグラウンドに居残りをしたり、休みの日に公園に行ったりして「自主練」をしている子どもも多く存在します。

一方のスペインには、「朝練」という習慣はありません。そして自主練をする子どももいません。

そこには様々な事情があります。

まず、「自主練や朝練をする場所がない」というのが理由の一つです。スペインの子どもたちは街クラブ(地域のクラブチーム)に所属し、地域のグラウンドでサッカーをしています。そのグラウンドは複数のクラブチームの、さまざまな年齢カテゴリーのチームが使用しており、下の学年だとグラウンド8分の1程度しか使えないこともあります。

週末は年間を通じてリーグ戦が行われるため、試合の予定でカレンダーがビッシリ埋まっています。そのためチームで練習しているグラウンドで自主練をすることは不可能です。

また学校によっては体育の時間がなく、日本のような部活動もありません。サッカーができるグラウンドや体育館もありません。

日本のように自由にサッカーができる、だだっ広い公園も少ないです。サッカーを含めたスポーツは、基本的に「クラブチームが管理する街のグラウンドや体育施設で行うもの」なのです。

そのため、スペインのスポーツは「限られた練習時間と、限られた練習場所の中で上達を目指すこと」が当たり前になっています。「上手くなるために朝練や自主練をする」という発想が生まれない環境といえます。

そういった時間や場所の成約があるからこそ、スペインの指導者たちは「いかに短い練習時間のなかで効率的に選手を上達させ、チームを成長させるか」を考えています。

なお、自由にサッカーができる場所がないことは、スペインでも問題視されており、近年では都市部中心にサッカースクールも増えていると聞きます。

一方で、プロとして活躍する選手の出身地を見ても、自由にサッカーができる環境がまだ残っている郊外や田舎の選手が目立っています。

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