追憶『Knights』をキャストが演出協力で丁寧に描く~『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Desperate Checkmate-が開幕
マザーグース「誰が駒鳥殺したの?」
2025年4月に10周年を迎えた、スマートフォン向けゲームアプリ『あんさんぶるスターズ!』(『あんスタ』)の舞台化作品として、ゲーム内ユニット『Knights』に焦点が当たるのは2017年公演の『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Judge of Knights~(『JoK』)以来だ。
囲み会見では、『Knights』5人の「不変の」仲の良さと、「変化して」更に研鑽された芝居について、まっすぐに真面目に熱量高く作りこんだ様子が伺えた。撮りおろし写真【15枚】とともにゲネプロの様子をお伝えしよう。
『あんスタ』のストーリーは、才能あるアイドルたちが輝く未来に向かうため、自身や周囲を傷つけ、痛みを伴いながら学院全体を改革していく時代があり、どのユニットの過去(追憶)も読んでいて非常に心が痛い。今回は学院の強豪ユニットであり、人気も高い『Knights』5人の過去編、「追憶*モノクロのチェックメイト」のストーリーが描かれる。「あんスタ」ではネクタイやジャージの色は3年生が緑、2年生が青、1年生が赤となっているのは、基本情報として押さえておきたい。
春、【DDD】の直前——天祥院英智(富園力也)と瀬名 泉(高崎翔太)が過去を語る。2人にとってとても大切な人、「月永レオはどうして壊れてしまったのか」と。
瀬名泉は、今回の語り手でもあり、努力家で真摯に誠実に研鑽を積み重ねる人。誰よりも純粋で神に愛された天才作曲家 月永レオ(橋本祥平)と共に、泥沼化してしまった学院内でも必死で輝こうとしていたが、学院内の革命に巻き込まれてしまったことなどにより、その友情がぽろぽろと零れ落ちてゆく。
学院内で結成した『ユニット』同士が争うように仕向けられ、レオと泉も窮地に陥る。なぜかその辺でよく寝ている朔間凛月(荒牧慶彦)、実力はあるのにやる気がない生意気な後輩 鳴上 嵐(北村 諒)を助っ人に呼び込み、なんとか戦えるようにと準備をする泉。レオは骨折した際に同じ病院にいて友人となった英智と、クラスメイトの青葉つむぎ(工藤大夢)もライブ参加に誘うが……。
キラキラ輝きながら、みんながハッピーなライブができると思ってた!「人を信じていたかった」、「人が好きだった!」、「俺を見て欲しかった!」笑いながら壊れていくレオの心の断末魔。声を聞いているだけで涙が出る。会場では静かに泣いているだろう音も聞こえてきて、感情の伝播していくさまにさらに心が締め付けられる。
レオ、泉、凛月、嵐の4人が、集まった観客に見せる「We'll be “Knights”」は、追憶セレクション『チェックメイト』(アニメ)のシーンがぴたりと重なる。殺陣を交えながら華麗に舞う4人。こんなにもキャラクターそのものが具現化しているかのように、演じ、歌いながら踊りながらも一時も目が離せない魅せる動きができるのは、数々の舞台を経験してきたこの役者たちにしかできない唯一無二のパフォーマンスだ。
お馴染みの「ONLY YOUR STARS!」、「Singin’☆Shine!」
そんな苦しい時期を経て現在。新学年になって新入生としてキラキラと期待を胸に張り切る新メンバー朱桜 司(北川尚弥)。5人体制となった『Knights』はお姫様(お客さん)を楽しませるために、後半LIVEパートへ。こちらのパートでは本物のアイドルさながら、ペンライトやうちわなどで応援ができるというもの。
途中のMCでキャラクターの名前を呼べたり、コール&レスポンスの練習があったり、お芝居パートのシリアスさとはガラッと変わって楽しい雰囲気に。
『Knights』は4曲を披露。特に「Knights Escort」(舞台オリジナル曲)、「Voice of Sword」(CD第一弾)、「Fight for Judge」(イベント「反逆!王の騎行」)、「Article of Faith」(イベント「光輝★騎士たちのスターライトフェスティバル」)と『Knights』の時系列を追うように、だんだんと誰もが笑顔になっていくような順番で構成された曲目も完璧で素晴らしいという一言に尽きる。
また、途中の衣装チェンジには驚かされた。『Knights』は白のライブ衣装、英智とつむぎは濃い色のジャケットを着て華やかに登場。英智とつむぎには舞台オリジナルの曲の歌唱パフォーマンスもあり、ファンには嬉しいサプライズだ。
囲み会見「声優と役者、雰囲気も似てくる!?」
ーー演出の後藤さんにお伺いします。本作の演出でこだわった部分、大切にした部分はありますか。
演出・振付 後藤健流:大切にしていた部分は「セッション」と「トライ」という二言です。稽古に入る前に下書きで自分が作ってきたものに対して、これでいこうと決めるわけではなく、稽古場で「ここどう思う?」、「どうしたい?」みたいなことを役者さんやクリエーターのみなさまと話して、丁寧に丁寧に作っていきました。この5名のキャストの皆様には演出協力としても参加していただいていて、これまでの経験を元にたくさん力を貸していただきました。そういう意味で「セッション」して、それを丁寧に「トライ」して、スタッフさんみんなを巻き込んで作ってきたっていうのがこだわりです。
ーー久しぶりに5人揃っての公演となりますが、以前と比べてチームワークや稽古場での空気感など変わった部分はありますでしょうか。
月永レオ 役 橋本祥平:以前の『JoK』以来、びっくりするぐらい変わってなくて、むしろちょっとにぎやかさが増したんじゃないかって思うくらいでした。我々もあれからだいぶ年も重ねて大人になったつもりではありましたが、やっぱりこの5人で居る時は時が止まっているなという、そんな楽しい稽古場でした。
瀬名 泉 役 高崎翔太:同じく何も変わらないなと思いましたが、今まで史上一番ダンスが激しく、劇中もすごく見栄えがします。役者にとってはすごく大変で、夜遅くまで稽古もしていました。普段一人では疲れてしまうことも、にぎやかで前向きになれたなと思います。
朔間凛月 役 荒牧慶彦:仲の良さは変わりませんが、7年前と比べてそれぞれのフィールドで戦ってきて培って来たものがそこにあって、その出力の仕方がより上手くなったなと思います。より『Knights』らしくなっているし、役者としてもすごく切磋琢磨して今ここに居て、最前線で活躍している人たちで、やはりすごいんだなと現場で改めて思いました。みんなと共にまた舞台に立てることをすごく光栄に思います。
鳴上 嵐 役 北村諒:変わらない場所というか、『あんステ』に帰ってきたなということを日々感じます。それぞれがいろんな経験を踏んできてすごく心強さが増したなというのがあり、今回『Knights』の物語をこの5人だからこそ、より深められたのではないかなと思いました。
朱桜 司 役 北川尚弥:7年前は壁を作っていた部分があり、当時はあまり馴染めていなかったなというのがありました。久しぶりに会って、自分が一番変わったのかなと思います。壁無くなりましたね。
一同:(笑)
北川:当時はいろんなことに追われていて、みんなとご飯に行かないでしっかり家で役作りしなきゃなという思いがありました。今はご飯に行けるくらい心を開いて、みんなで一つの作品を作っていけるのがすごく幸せで、毎日がとても楽しかったです。
ーーLIVEパートなど振付を含めて、注目してほしい部分があれば教えてください。
後藤:全部です! もちろん本編も全力でやりましたが、LIVEパートを含めて今作と思っています。本編後のLIVEパートでもうひとつグッとアガっていただきたいと。振付もすごくバリエーション豊富ですし、なによりも素晴らしい楽曲を最大限良くするために全力で作りました。最高だと思います。
ーー過去篇として、キャラクターを演じるにあたって工夫したことなどがあれば教えてください。
橋本:『JoK』が7年前というのもあり、この機に一度原点に返ってみようということで、今まで培ってきたものや活かすところは生かしつつまっさらな気持ちで新たに向き合って励んだ稽古期間でした。特に瀬名 泉役の高崎翔太くんの絡みがとても多く、この期間たくさん話しました。
高崎:LIVEパートはすごくキラキラして綺麗なものをお届けするのですが、芝居パートではただ綺麗なだけではなく、高校生・アイドルならではのものをしっかり描けたらいいなって祥平とも色々相談しました。原作を全部読んで「このセリフを足したらいいんじゃない」とか「こういう風に思ってたんだ」とか、台本以上のものを作れたらなというところで戦ってきたので、お芝居では何か残るモノがあればいいなと思っています。
荒牧:「追憶」ということで『Knights』のみんなの出会いのシーンが描かれています。原作にある魅力を最大限に引き出しつつ、舞台としてちゃんと成立するものになっているとも思います。いろんな都合で原作から少しカットしたものを僕らなりに精査して突き詰めることができ、良い演出家さんと出会えたなと思いますし、良いものを作れたなと言う実感もあります。
北村:それぞれの関係性がまだそんなに出来上がっていない時代の物語。今の彼らを知っているからこそ、今回観ることによって、『Knights』ができあがる過程や切ない思いや感動を覚えたり、そういう場面がたくさんちりばめられていると思います。一人ひとりが考えて、話し合いもして作ってきたので、きっと皆様にも満足していただけるんじゃないかなと思っております。
北川:まだ『Knights』に所属する前のお話なので、司が出演しているシーンはあまり多くはありません。司が加わることによって彼らがどう変化していくのかなどそういう関係性を皆さんに見て感じ取れるように、僕は末っ子らしくチームの一員として演じてお届けできればいいかなと思っております。
ーーシナリオやキャラクターの中で共感することなどがあれば教えてください。
荒牧:僕は英智の気持ちに共感が持てると言うか。自分自身を犠牲にしてでも夢を叶えたい、アイドルとしてしっかりしたものを作りたいという英智の苦悩が、ちょっと悪く描かれてはいるんですが、僕自身は少し共感を持てる部分があるなという感じです。悲しいですけどね。
北村:『あんスタ』という世界の中でアイドルたちそれぞれがいろんな感情で抗っていたり成長しようともがいていたり傍観したり。僕らは俳優としてそれぞれの戦い方というものを目にすることが多いので、自分たちの置かれている世界とリンクしているなということは感じますね。嵐ちゃんはなんやかんや言いながら付き合ってあげちゃうので、僕はすごく彼に共感しています。
北川:レオの「寝る間も惜しんで……だけどお客さんの拍手を浴びて、それだけで今までの苦労がすべて吹っ飛ぶ」という内容のセリフがあって、自分が役者をやっている中でもすごく共感できる部分でもあり、胸に刺さるなと。どの仕事も辛いことはありますが、幸せだなって思える一瞬のために頑張ってきてよかったなと思うことは、このお仕事をしていてすごく感じる部分であり共感できる部分です。それをしっかり自分の胸に置いて、この作品を届けたいなと思いました。
高崎:たまたまではありますが、各々すごくキャラクターにマッチするところがありまして。(橋本に対して)すごく明るくてノリだけで話してるところとか、(北村に対して)僕の台詞にもあるんですが、本当に「初対面でタメ語」で! 「年下」なのに!
北村:(笑)
高崎:(荒牧に対して)一緒にご飯とか行くとおちゃらけて話してくれるけど、仕事場ではすごくプロフェッショナルで凛月と繋がるところがあるし、(北川に対して)昨日一緒に帰ってるときに、「本編出番ないので、ライブパートは僕に任せてください!」って僕に言ってきて、すごい司っぽいなぁと思ったり! 各々持っているところが似ているのかなぁと。『Knights』の出会いのお話を作る上で、キャラクターと似ているのはすごくおもしろいなぁと。そういう部分も(お客さんに)感じていただければと思います。
橋本:僕も基本的に人が好きなので、裏切りにあったら僕自身も心が壊れるだろうなと思います。今回は本当に辛いセリフをいっぱい言います。でもレオたちが学生だからこそ言える言葉でもあるので、僕らも学生のあの頃の気持ちになって思い返してみて、まっすぐ言えるようにしました。『Knights』のように僕らも個々はめちゃくちゃ色がある集団だと思います。7年前に「またこの5人で絶対にやりたい」という思いが強かったように、このメンバーでしかできないものが生まれています。この5人じゃないとステージには立てないなと改めて強く思った期間でした。
ーー公演の前に『Knights』の声優陣と“Knights会”をされたようですが、何か激励や熱い言葉を頂いたのでしょうか。
北村:北村(※鳴上 嵐 役/声優 北村 諒)さんからは、頑張ってと強く背中を押していただけました。一緒に写真も撮れましたし(笑)。
橋本:「キャラ掴んでるよ!」とか言われた?
北村:「もうちょっと頑張って」って……!
荒牧:すごい開放的に話してくれました。僕は山下(※朔間凛月 役/声優 山下大輝)さんとは初めましてだったんですが、「わぁ! 凛月だぁ!」って言ってくださったんですよ! こっちからしてみると「わぁ! 凛月だぁ!」なので。そういう関係性を持てるのが僕はすごく嬉しかったので、この公演の励みになりました。
高崎:僕はマサミ(※瀬名 泉 役/声優 伊藤マサミ)さんとは以前共演したことがあって。ちょっと軽口を叩いたら「お前のソロパート、(音を)高くするぞ」って脅されました。もう逆らえない!
一同:(笑)
橋本:「これ取り入れられる!」とか有難いお言葉をたくさんもらえましたね。あと、僕ら(俳優陣)めちゃくちゃ仲良いと思っていたんですけど、声優さんたち『Knights』もめちゃくちゃ仲良いよね。
北村:居やすいのよね。すごくびっくりしたのが、みんなそれぞれ似てるのよ!
北川:僕、(朱桜 司 役/声優 土田玲央 と一緒に)写真撮ってる時に「兄弟?」って言われました。
北村:(外見や雰囲気が)自然と似てくるんだ? みたいな!
ーー2025年1月の『ネルフェス2024』後夜祭にて2曲披露されましたが、その時の客席の反応や手ごたえなどを教えてください。
橋本:5人揃ってのパフォーマンスがすごく久々だったので、本当に怖かったんです。袖ギリギリまで心臓バクバクで。ただ、あのお客さんの温かさ、待っていてくださったという歓声。今回の本編のライブでもみなさまが欲しいところでほしいものをきっと出せると思います!
後藤:すごい練習をしてくれるんですよ。本当にこれだけはちょっと全世界に言いたいんですけど、本ッ当にもう大汗かきながら、すっごい練習してくれるんです。
ーー時間的な意味で、ですか?
後藤:いえ、渡した振り付けに対しての責任の持ち方が本当に素晴らしくて。だからすごく今回の稽古が楽しみだったんです。あの時僕は初めましてで、初めて振り入れをして。すんごい練習してくれたので、とにかくすごい練習してくれるんです。
北村:『Knights』なので。完璧なパフォーマンスを見せたいですからね。
後藤:想像以上なんです。
荒牧:いやいや、そんなこと——あります。
後藤:「あります」!?
ーー最後に開幕に向けての意気込みをお願いします。
橋本:いよいよ本日、初日の幕を迎えます。先日のネルフェス後夜祭の時にも”数ヵ月後ここに立つんだ”と思っていたのですが、ついにその時が来たなとドキドキワクワクしております。5人での公演が7年前の『JoK』ということで、その時に追いかけていた夢をまた改めてスタートするという気持ちで、お客さまに笑顔とキラキラを全力でお届けしたいと思います。ぜひ劇場でお待ちしております。
高崎:特に『 Knights』 はお客さまが入って初めて完成するユニットだと思います。ファンサを重要視しているので、お客様に楽しんでいただけるようお芝居も頑張りつつLIVEもしっかり盛り上げて幸せな気持ちで帰ってもらえるよう頑張りたいと思います。
荒牧:LIVE パートを全力でやるのはもちろん、本編の話の核であるレオと泉と英智の3人のお芝居が本当に良くて。悲しい物語ではありますが、この物語をしっかりと作りあげられるのは、この3人の実力あってのことだなと、場当たりや稽古を通して思いましたので、楽しみにしていただきたいです。
北村:この5人でまたやりたいと思いながらも、実際実現できるのかな、寂しいけど仕方ない部分もあるのかなと思っていたのですが、このあんステという火を絶やさずに繋いで下さったスタッフのみなさまの力があってこうやって板の上に戻ってくることが出来ました。その恩返しではないですけど、信頼してくれたスタッフさんたちや楽しみに待っていてくれるお客さまに何より楽しんでいただくことだけを考えて、お芝居もLIVEパートも作ってきたので、それが届いてみんな笑顔で帰っていただけたら嬉しいなと思います。
北川:本編の出演シーンが少ない分、LIVEを全力でお届けしたいと思います。そしてお客さまが入って初めて舞台が完成する部分もあるので、お客さまと一緒に1つの作品1つのLIVEを作っていけたらいいなと思います。全力で楽しみましょう。
後藤:やっと今日が来たなと素直に思います。本当に沢山のスタッフやクリエイターの方が居て、この 5 人を筆頭にみんなでいっぱい準備をしてきました。なので、自信を持ってお届けできます。お客さまには今回観劇を心から楽しんでいただきたいなと思いますし、我々も思いっきり楽しませたいなと思います。
『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Desperate Checkmate-は、2025年5月26日(月)~6月1日(日)に東京、6月6日(金)~6月8日(日)大阪の2都市で公演予定。
取材・文・撮影:松本裕美
(C)2021 Happy Elements K.K/あんステ製作委員会