【大学教授・齋藤孝さんが教える】後悔を思い出に変え、心を解き放つ方法
人生100年時代、60代は新たなスタートラインです! そんな大切な時期をいきいきと過ごすための、頭と心のコンディショニング法を紹介しているのが大学教授・齋藤孝さんの著書『60代からの知力の保ち方』(KADOKAWA)。本書は日々のちょっとした習慣を通して、60代からの知力を無理なく、そして楽しく保つ方法を優しく解説します。「まだまだこれから!」という意欲を応援し、後半生をより豊かにするためのヒントが満載です。60代は、これまでの役割が変わり、自分を見つめ直す時期。脳と心と体をバランス良く整え、知的な活力を高めていきませんか?
※本記事は齋藤孝著の書籍「60代からの知力の保ち方」から一部抜粋・編集しました。
後悔は、手でバーンと払う
不安の侵蝕は、二方向からやってきます。
一つは「後悔」。あの時こうすればよかった、あの時こうしなかったから今こんな目に遭っていると、今更どうしようもないことを繰り返し思い出すことは、現在を蝕みます。食い止めるには、精神の技術が必要です。
「後悔の消化の仕方」を学生と考えたことがあります。高校時代に告白しておけばよかったとか、学生は学生なりに後悔を抱えていますが、これには向き合うことが必要です。
そこで後悔を形あるものと仮定して、目の前の机の上に出してみる。そして、「そんなのどっちでもいい!」と両手でバーンと払う練習をしてみました。
この動作には、一種のお祓いのような効果が秘められています。後悔を抱え続けても仕方ないということは、たいてい当事者もわかっているものです。
手で一気に払う動作と共に、自分に入りこんでくる後悔を捨てる。魔とか邪と同じように、心の持ちようの切り替えに、払う所作が意外と役立つのです。
やがて同じ記憶が、後悔から思い出に変わり、自分からそこに穏やかに浸れるようになっていけば、お祓いの成功です。
私は愚痴を吐き出すことは、精神衛生上、大変大事だと考えています。
状況と関係なくポジティブな顔だけをしている人は怖いですし、いつもポジティブな顔をしていなければいけない社会というのは相当きつい。
愚痴には、凝り固まった思考をほぐす効能がありますし、うまく気持ちをほぐしてくれる人としゃべれば、気持ちの整理がつくものです。スナックはそういう場所の一つとして機能しています。犬や猫、ぬいぐるみに向かって心情を吐露する人もいます。毒は、内側に溜めるよりも吐き出した方がはるかによいのです。
ただし、どんな場合でも長々話すと繰り返しになるだけですから、適度な時間を心がけ、切り替えのタイミングを意識する。それだけでも心の状態は整理されていきます。
テレビ番組は収録後に反省会をすることが多いのですが、黒柳徹子さんが司会を務める「徹子の部屋」は、反省会をしないそうです。
黒柳さんは、「お母さんの胎内に反省という言葉を置いてきた」と、よく自分を笑い飛ばしています。こういうふうに生きている人がいると、励まされます。
ちなみに私が「徹子の部屋」に出演した時は、後で写真と感謝の言葉が入った色紙を送っていただきました。