東京・荒川から釜石・唐丹へ 震災後の野球支援今年も 硬式女子アサヒトラスト 小中学生を指導
東京都荒川区の東京リバーサイドロータリークラブ(RC、小根澤美和会長、会員37人)と、社会人チームのアサヒトラスト女子硬式野球部(三橋淳志代表、選手20人)は7日、釜石市唐丹町の唐丹グラウンドで、同市の小中学生に野球教室を開いた。東日本大震災、同グラウンド整備を支援してきたクラブが昨年に続き主催。両団体からは軟式野球ボールも寄贈された。震災から13年半―。同市の野球関係者は途切れることなく続く支援に深く感謝し、ジュニア育成へさらに気持ちを高めた。
同クラブ会員14人と同部の選手、監督、コーチら27人が来釜。少年(軟式)野球チームの釜石ファイターズ(26人)、釜石野球団Jr.(ジュニア、20人)、中学生の硬式野球チームの釜石ボーイズ(20人)が一行を迎えた。教室に先立ち、参加者が顔合わせ。小根澤会長、三橋代表があいさつし、同クラブからボール10ダース、同部からボール3ダースとチームタオルが釜石の子どもたちに贈られた。
教室は子どもたちの年代に合わせた練習メニューが組まれた。中学生や小学校高学年の団員はアサヒトラストの女子選手と一緒にシートノック練習に臨み、捕球や送球の基礎を学んだ。小学校低学年の団員は上級生の練習を見学した後、捕球練習を行った。国内女子野球のトップ選手や指導者らの講習に子どもたちは目を輝かせ、真剣に取り組んだ。
釜石ファイターズの菅原睦斗さん(小5)はアサヒ選手らの練習中の大きな掛け声に驚き、「声出しやボールの捕り方をまねしたいと思った。守備をもっとうまくなりたい」と刺激を受けた様子。東京から指導に来てくれることにも感謝し、「学んだことを大会で生かしたい」と話した。澤本大志監督(42)は「子どもたちの積極的なアピールも見られ、いつもとは違った表情。大人の選手の一生懸命な姿から何か感じるものがあれば」と期待。チームは今年、同クラブの支援でユニホームを新調しており、応援を力に県大会ベスト4進出を果たしている。
東京リバーサイドRCは地元荒川区が釜石市と友好交流都市という縁で、震災後の2011年秋に荒川区社会福祉協議会とともに同市を訪問。津波で全壊し、がれきが残る唐丹小の惨状を目の当たりにした。地元関係者から「子どもたちが野球をできるように、整地してグラウンドにしたい」という話を聞き、同社協と一緒に、土を盛って芝生を張るための資金集めに尽力。ダッグアウトや簡易トイレの設置も援助した。その後、会員が隔年で訪問しながら、唐丹スポ少(当時)などへのボールやバット、グローブの寄贈、グラウンドの芝生整備のための芝刈り機などの支援を続けてきた。昨年から始まったアサヒトラスト野球教室の遠征費もクラブが支援する。
小根澤会長(58)は「震災で心の傷を負った父母らは子育ても大変だっただろう。野球をやりたいという子どもたちが何不自由なく楽しめ、成長できるよう、私たちが少しでもお手伝いできればとの思いで活動を続けてきた。彼らが大人になった時、また誰かを助けられる、(困っている)人を思いやれる人になってくれたらうれしい」と期待を込めた。
アサヒトラスト女子硬式野球部は、荒川区に本社があるアサヒ産業(三橋淳志代表取締役)が出資し2007年に設立。女子硬式野球の国内企業チームの先駆けで、10~30代の社会人と大学生が所属する。全日本選手権(高校~社会人)で2回、全日本クラブ選手権(社会人)で5回の優勝実績があり、全日本チームの選手も輩出している。
同部の落合彩伽主将(23)は「前回より子どもたちの参加が増え、活気に満ちた教室となった。私たちが話すことを素直に聞いてくれる子が多く、自分たちも小中学生との野球にパワーをもらった」と喜びの表情。東北には女子硬式野球の社会人チームはないが、高校は6チームがあり、本県では2020年に創部した花巻東の活躍が注目を集める。今回の教室参加者の中にも女子選手は複数いて、「女子野球の広がりを感じる」と落合主将。
釜石ボーイズの菊地礼華さん(中3)は先輩女子選手らのうまさに目を見張り、「すぐ捕って投げるところとか素早いプレーが勉強になった。高校でも野球を続けたい」と意欲。昨夏、アサヒトラストの招待で東京に遠征し、全国大会の試合見学やチーム練習に参加してきた佐久間美桜さん(中2)は「女子だけの環境は初めてで、すごく楽しかった。練習でも細かいところまでやさしく教えてもらった」と感謝。今回の教室を含め、多くの学びを得たようで、「これから新人戦も始まるので、1年生を引っ張って頑張りたい」と意気込んだ。
全日本女子硬式野球クラブ連盟、関東女子硬式野球連盟の会長も務める三橋代表(66)は「野球を通じたつながりで復興の一助になれれば。子どもたちには、とにかく野球を続けてほしい。最後までやり通すことが将来につながる」とメッセージを送った。