英語起業のカリスマ! 武智さやかさんインタビュー【前編】 〜「くやし泣き」からの再スタート!NHK英語講座との出会いが私を変えた〜
カリフォルニアを拠点に独自の「英語最短学習法」を発信し続け、多くの学習者や起業家から熱烈な支持を受ける武智さやかさん。英語スキルを生かして幅広く活躍されている武智さんですが、現在に至るまでには、じつは遠く長い道のりがありました。今回は、武智さんご自身の英語学習の原点や、NHK英語学習との出会いについてうかがいつつ、その中で得られた実践的な学習法やアイデアを、前編・後編に分けてご紹介します。
英語での挫折から立ち直った原動力は「祖父との約束」!
――いまや多くの方の英語学習、英語起業をサポートされている武智さんですが、ご自身の英語学習では、NHKの英語講座も活用されたそうですね。何かきっかけがあったのでしょうか?
18才のときです。がんばって勉強したつもりだった英語が足を引っぱって、大学受験で思ったような結果が出ず、ショックで、くやしくて、涙が止まらなくて……。
打ちひしがれた状態で祖父の家を訪ねたら、英語学習経験の豊かな祖父が、自分の英語勉強法は「NHKのラジオ講座と辞書だけを使った独学」だったということを話してくれたんです。
祖父は家庭の事情で高校に行けなかったのですが、ラジオ講座と辞書だけで勉強して国立大学に進学。就職先でもコツコツ勉強を続けて、最終的には海外出張を任されるまでになったと話してくれました。だから、「自分の気持ちさえあれば、いつでもどこでも、英語はまた学べるよ」って、そんな思いで、祖父は自分のことを私に話してくれたんです。
私はその話を聞いて、猛烈に自分がはずかしくなりました。私自身は高校でも英語を教わってきたし、英語の塾にも通わせてもらっていました。明らかに学ぶ機会は祖父よりたくさん持っていたはずなのに、自分は何をやっていたんだろうって。くやしくて、はずかしくて。でも同時に、英語を勉強する上で本当に大切なことが見えてきた気もして、その日の帰り道、本屋さんに駆け込んでNHKのテキストを買いました。
まさにあの日が、私の再スタートでした。それから私も祖父と同じように、小さな部屋のちゃぶ台にNHKテキストと辞書を広げてラジオ講座を聞くようになったんです。「おじいちゃん見てて! がんばるよ!」って、祖父と約束をしたような気持ちでした。
長い道のりを支えてくれる「自分との小さな約束」
――おじいさまのお話がきっかけでスタートされたラジオ講座の聴講ですが、どのくらい続けたときに英語力の変化を感じられましたか?
半年くらいで、英語が聞き取りやすくなった実感がありましたね。スタートしてしばらくは、ひたすらリスニングと音読を繰り返していて。1年後には、当時の進学先で行われていた、すべて英語で展開される授業もかなり聞き取れるようになりました。少しずつ自分で発言もできるくらいになっていたと思います。
私の場合、いつも同じ時間にラジオを聞くのが難しかったので、CDを購入していました。振り返ってみると、それがよかった気がしています。CDなら同じ内容が何度も聞ける! そこがポイントだったと思うんです。
NHKの英語講座は1日の学習量がそれほど多くないし、シンプルで基本的な表現が多く使われているので、最初は「こんなの楽勝!」と思っていました。でもじつは、そのシンプルな内容ですら、100%覚えて「本当に自分で使えるもの」にしようと思うと大変で。だから私はCDを何度も聞いて音読して……自分の中に1つ1つの表現が染み込むまで、とにかく繰り返していました。地味なやり方ですが、結果的に近道だったと思います。
――リスニングや音読の繰り返しが効果大だったんですね! 講座を聞いて、そういった地道な練習を続けるのは大変だと思いますが、長く続けるコツがあれば、ぜひ教えてください。
私の場合、やっぱり祖父との「約束」が大きかったです。独りでブツブツ言って練習しているとき、「祖父もこんなふうに勉強したんだ」と思うと、モチベーションが上がりました。「自分を応援してくれる誰かがいる」というのは、大きな力になりますよね。
一方で、「自分との約束」を守りたい!という思いも、私にとってはパワーの源でした。くやしさの中から「今度こそ!」と立ち上がった自分を裏切りたくない! そんな思いが心を支えてくれた気がします。
「自分との約束」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、ほんの小さなことでもいいと思うんです。例えば、毎日「テキストを開く」とか。ディアローグを聞いて音読までできる日もあれば、チラッと見て閉じてしまう日もあっていい。まず「テキストを開く」という自分との約束を守ってみると、そのうち小さな自信が蓄えられて、もう少しがんばろうかな? と思えてくる。そんなやり方も、長続きのコツの1つだと思います。
私自身も、「今日やること」を必ず事前に決めておいて、「自分と約束したんだから守ろう」と、そんな気持ちで続けていました。今は、学習計画や学習記録が簡単につけられるアプリなどもあるので、そういうものを活用してみるのもいいかもしれませんね。記録に残していくことで「これだけやった」という自信にもつながると思います。
あと一歩先へ!「少しだけ高いハードル」が充実感をくれた
――身近な誰かや自分自身との約束があると、たしかに続けやすそうですね! とはいえ、そういう約束があっても、うまくいかなくてモヤモヤするタイミングはありませんでしたか?
もちろんありました。大きな壁にぶち当たったのは、大学2年目のときです。聞き取る力がついて、英語での授業も理解できるようになった頃、「もっとアウトプットをしなきゃ」と思ったんです。でも、英語を話す機会は限られていて、なかなか上達しないまま悶々としていました。
そのとき思い切って挑戦してみたのが、外国人旅行者や留学生などをサポートする通訳ボランティアでした。当時はまだまだ拙い英語でしたが、それでも目の前の相手が喜んでくれるとうれしくて。案内する場所に関連する表現を調べたり、生活に必要な語彙を覚えたり……誰かの役に立ちたい! と思って必死になっているうちに、話す力がついてきました。
そしてもう1つ取り組んだのが、英検準1級への挑戦でした。英検合格を目標にする人は多いですが、ポイントは、それが当時の私にとって少しハードな挑戦だったというところです。ボランティアにしても英検にしても、あえて自分にとって「少しだけ高いハードル」を用意して、負荷をかけてみたんです。そうすると大変さよりも充実感が得られて、モヤモヤは晴れていきました。無理せずコツコツ! が基本ですが、殻を破ってもう一歩成長したいときには、ラクな方法を探すよりも、心地よいくらいの負荷をかけてみる方がかえって楽しめるものだと、そのとき実感しました。
――モヤモヤを突破するには、少し負荷をかけてみるのも一案なんですね!
【前編】は、武智さんご自身のお話を中心にうかがいました。【後編】では、英語力を底上げする「リスニング」のやり方や、武智さん独自の英語学習のアイデアなどを具体的にうかがっていきます。
武智さやか(たけち・さやか)
香川県生まれ。2005年に大学卒業後、地方銀行、英会話スクールにて勤務。その間に英検1級、全国通訳案内士資格等を取得し、2016年に英語指導、通訳案内、翻訳業で独立。2021年からせとうち観光専門職短期大学にて教べんを執り、同時に大人向けの英会話オンラインスクールを運営。その後、英語を仕事に生かしたい方に向けたビジネススクールも開講し、現在はカリフォルニアを拠点に活動中。著書に『語学書ベストセラー100冊を研究して「最強の英会話本」を作ってみました。』(Gakken)がある。
取材・文 安倍 まり子
写真 原田 翔太