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​【静岡市美術館の「うつりゆく自然を描く 小野竹喬の世界」展】 西洋への憧憬がにじみ出る1910年代の作品群に注目。「西洋画っぽい」日本画は軽薄なスタイル模倣ではない

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の静岡市美術館で4月12日に開幕した「笠岡市立竹喬美術館名品展 うつりゆく自然を描く 小野竹喬の世界」を題材に。

1~3月に静岡県立美術館で開かれた「生誕140年記念 石崎光瑤」展に続き、京都画壇の「ドン」竹内栖鳳(1864~1942年)の弟子筋に当たる人物の回顧展。年初から日本画の優品に触れられる静岡市民、静岡県民は幸せだ。

二つの展覧会の年譜を読み比べた。1884年富山県生まれの石崎が京都に出て竹内に師事したのは1903年。1889年岡山県生まれの小野も1903年に竹内門下に入った。全く同じ年である。

年譜にはこうある。石崎の1903年。「夏 内畠暁園の紹介で、竹内栖鳳に入門する」。小野の1903年。「十一月二日、義兄に連れられて京都に上り竹内栖鳳の門に入る」。19歳の石崎の方が14歳の小野より数カ月早かったようだ。この時期の竹内門下の先輩には橋本関雪や上村松園、後に秋野不矩の師匠となる西山翠嶂らがいた。近代日本画のスターが切磋琢磨する、虎の穴のような場所だったようだ。

20歳を過ぎた小野は同輩の土田麦僊らと西洋近代絵画に傾倒していく。今回の回顧展の見どころの一つは、西洋絵画への憧憬がにじみ出る1910年代の作品群だ。日本画の技法とマナーを守りながら独自の表現をあれこれ試行錯誤している姿が浮かぶ。

こちらは最晩年の作品。「伊豆の海」(1977年)

人によって見え方は違うだろうが、「内海陽春」(1918年頃)は図録に「セザンヌの風景表現を瀬戸内の海景に取り入れた」とあるし、「夏の五箇山」(1919年)はどこかゴーギャンっぽい。「神島早春」(1913年)や「春日図」(1914年)はピサロやスーラを思わせる点描を駆使している。光の捉え方について、一生懸命研究したのだろう。

小野や土田らが1918年に設立した「国画創作協会」は当時の美術界に対する強烈なアンチテーゼだった。そのための探求がもたらした「西洋画っぽい日本画」。軽薄にスタイルを模倣しているのはない。その過程は自分と若い世代の新しい表現技法を手に入れるための、壮大な思考実験だったのではないか。

(は)

<DATA>
■静岡市美術館「笠岡市立竹喬美術館名品展 うつりゆく自然を描く 小野竹喬の世界」
住所:静岡市葵区紺屋町17-1葵タワー3階 
開館:午前10時~午後7時
休館日:毎週月曜 、5月7日(水)。4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館
観覧料(当日):一般1400円、高校・大学生、70歳以上1000円、中学生以下無料
会期:5月25日(日)まで

「あかあかと日は難面もあきの風(習作)」(1976年)

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