介護以外でお年寄りと関わる仕事とはどんなもの?専門職からヘルスケア産業に関わる職種まで徹底解説!
介護以外でお年寄りをサポートする仕事はある?
介護以外の専門職には何がある?
高齢者を支える仕事は、直接的な身体介護だけではありません。
日本の高齢者支援の基盤となる地域包括ケアシステムは、医療や介護の専門職だけでなく、地域住民や家族など、多様な関係者が協力し合うことで成り立っています。このシステムを機能させるためには、「介護以外」の専門職が不可欠なのです。
地域包括ケアシステムの推進において、医療・介護関係者だけでなく、地域住民や他分野の専門職との連携が不可欠であり、事業者や行政による積極的な関わりが求められています。
具体的には、利用者とサービス提供者をつなぐ橋渡し役として、ケアマネジャー(介護支援専門員)や福祉用具専門相談員などが活躍しています。
また、リハビリ専門職や医療職も、高齢者の生活を支える重要な役割を担っています。さらに最近では、介護ロボットやAIを活用した介護テック分野でも、新しい職種が生まれています。
これらの専門職は、身体介護を行わないものの、高齢者の生活の質を向上させるために欠かせない存在です。
地域のインフォーマルな資源(地域のボランティアやサークル活動など)とフォーマルなサービス(介護保険サービスなど)を組み合わせ、より包括的で持続可能な高齢者支援を実現しています。
介護サービス職市場の安定性
介護サービス職の市場は、キャリアを考える上で極めて安定した環境にあります。日本の急速な高齢化により、介護人材の需要は構造的に高い状態が続いており、これは今後も変わらないと予測されています。
職業別の有効求人倍率を見ると、介護サービス職の需要の高さが明確に表れています。令和6年時点では全職種の約3倍まで上昇しています。
これは、介護業界全体で慢性的な人手不足の状態が続いていることを示しており、求職者にとっては非常に有利な市場であると言えます。
この高い求人倍率は、介護の現場経験を持つ人材が、専門性の高い職種へキャリアを移行する際の大きな安心材料となります。
介護サービス職市場のこうした安定性は、経済的な持続可能性と専門職としての成長の両面で、非常に有望な環境を提供しています。専門性を磨き、キャリアの深化を図る上で、有望な分野といえるでしょう。
高齢者と関わる仕事に求められる能力・心構え
介護以外の専門職として高齢者と関わる仕事では、専門知識に加えて、円滑なコミュニケーション能力と協調性が特に重要です。多職種連携の目的は、医療や介護の質を向上させ、利用者一人ひとりのニーズや目標達成に近づくことにあります。
そのためには、まず各職種の役割と専門性を深く理解し、相互に尊重できる関係性を築く姿勢が求められます。相手の専門性を信頼し、敬意を持って接することが、質の高い連携の第一歩となります。
自己の専門性を明確に認識し、他職種に対してその役割を自信を持って伝えられる自律性が大切でしょう。
他業種との連携は、自身の専門知識や視野が広がる成長の機会として捉えることもできます。高齢者支援の現場では、こうした柔軟な姿勢と協調性が、専門職としての価値を高める重要な要素となるのです。
高度な専門性でお年寄りと関わる仕事
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、身体介護から離れ、マネジメントとコーディネートに特化した高度な専門職です。主な仕事は、要介護者や要支援者からの相談を受け、自立した日常生活を営むことを目的としたケアプラン(介護サービス等の提供計画)を作成することです。
また、施設や居宅サービス事業者との連絡調整も担当します。利用者と各サービス提供機関をつなぐ橋渡し役として機能し、地域包括ケアシステムの中核を担う存在といえるでしょう。
医療、リハビリ、福祉用具など、さまざまな専門機関と適切に連携できるかどうかが、利用者へのケアの質を大きく左右します。各専門職の強みを理解し、最適なサービスの組み合わせを提案する力が求められるのです。
介護職からのキャリアアップも目指しやすいのがこの職種の特徴です。ケアマネジャーになるためには、保健医療福祉分野(医師、看護師、社会福祉士、介護福祉士など)での実務経験が5年以上必要とされています。
これは現場のリアリティや利用者のニーズを深く理解していることが、マネジメント層へ移行するために必要な要素となるからです。要件を満たした後、実務研修受講試験に合格し、研修を修了することで専門員証が交付されます。
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リハビリ専門職(PT/OT/ST)
リハビリ専門職は、身体機能の回復や日常生活への適応支援を通じて、高齢者の自立と生活の質向上に直接貢献する職種です。主な職種は、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の三つです。
理学療法士(PT) 主に運動機能の維持・回復を担います。寝返り、起き上がり、歩行といった基本的な動作能力の改善を目指したリハビリテーションプログラムを考案・実施し、介護老人保健施設などで活躍しています。 作業療法士(OT) 身体機能だけでなく、精神機能の維持・回復にも関わる専門職です。特に、食事、入浴、着替え、家事といった具体的な日常生活活動(ADL)の自立を支援します。 言語聴覚士(ST) 言語や聴覚を用いたコミュニケーション障害に加え、高齢者に多く見られる嚥下(飲み込み)障害に対する治療や訓練を行います。
これらの専門職は、国家試験に合格し、免許を取得することで医療機関や福祉施設で働くことができます。
介護の現場経験がある方は、連携を通じてリハビリテーションの専門的視点を深く学び、利用者への支援スキルを向上させることが可能です。高度な専門性を身につけることで、身体介護以外の分野で、利用者の生活の質そのものに深く関わることができます。
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医療職
地域包括ケアシステムが推進される現代において、医療職、特に看護師や薬剤師の役割は、従来の病院中心の治療から、高齢者が住み慣れた地域での健康維持・予防支援へと大きく変化しています。
薬剤師 地域連携薬局や在宅訪問を通じて、高齢者の服薬情報を一元的・継続的に把握し、それに基づく薬学的管理・指導を行います。複数の医療機関から処方される薬の飲み合わせチェックや、服薬のタイミング調整など、生活に密着した支援が可能です。 看護師 介護現場では、在宅やサービス付き高齢者向け住宅などにおいて、日常の医療ニーズへの対応や、利用者への相談業務、サービスのコーディネートを行う重要な職種です。介護施設内では、かかりつけ医や地域の連携病院と密に連携し、日常の健康管理や急変時の対応を担います。
医療職は、介護職から提供される生活上の詳細な情報を治療や服薬管理に活かし、介護職は、医療職から提供される症状や薬剤に関する専門知識を日々のケアに活かすことができるのです。
このように、互いの専門性を尊重し合いながら協力することで、利用者にとってより質の高い、継ぎ目のない包括的なサービス提供が可能となります。
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身体介護なしでお年寄りと接する仕事
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は、身体介護を伴わずに、高齢者の自立支援と安全性の向上を担う専門職です。この職種の主な役割は、利用者の身体状況や生活環境に合わせて、車いすや特殊寝台などの福祉用具(貸与・販売)を選定し、その利用計画を作成することにあります。
具体的な業務には、福祉用具選定のアドバイス、利用計画の作成、用具の調整、使用方法の説明、そして利用開始後の状況を確認する点検・モニタリングが含まれます。
たとえば、車いすを選ぶ際には、単にサイズを合わせるだけでなく、自宅内の段差や廊下の幅、利用者の移動パターンなど、生活全体を見渡した提案が求められます。特殊寝台であれば、起き上がりの動作や介助者の負担軽減も考慮に入れる必要があるのです。
福祉用具専門相談員は、福祉用具貸与事業所や販売事業所、メーカーなどで活躍します。資格取得には、高齢者と介護・医療に関する基礎知識や、リハビリテーション、住環境と住宅改修など、50時間の研修カリキュラムを修了する必要があります。
また、福祉用具専門相談員は、収入面でも安定性が見込まれます。正職員の場合、月給の下限平均は22万6,803円、総平均は26万2,895円、上限平均は29万8,988円となっています。年収の総平均は約396万円と、他の介護系職種と同様の水準にあるといえるでしょう。
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ヘルスケア産業に関するその他の仕事
ヘルスケア産業は、高齢者支援市場の未来を担う、成長性の高い分野です。特にテクノロジーと予防に特化した分野が、この成長を牽引しています。
経済産業省では、高成長が見込まれるヘルスケア産業市場は、2050年には現在のおよそ倍以上に成長すると予測されています。
ヘルスケア産業の内訳として、以下の2種類の項目に分けられます。
健康保持・増進に働きかけるもの 健康経営関連、食、運動、予防、睡眠などの分野が該当します。具体的には、健康運動指導士や管理栄養士、企業の健康経営を支援するコンサルタントなどの職種が挙げられます。これらの職種は、予防医療の観点から注目が高まっています。 患者/要支援・要介護者の生活を支援するもの 生活機能維持・療養支援、介護関連機器、患者向け商品・サービスなどが該当します。具体的には、介護ロボットや見守りシステムの導入を支援する営業職や、介護テックのコンサルタントなどが挙げられます。また、入居相談員や施設に属する営業職もここに含まれます。
これらの職種は、身体的負担を避けつつ、イノベーションを通じて日本の高齢者支援の構造改革に貢献できる、将来性の高い職種といえるでしょう。
介護施設での補助・事務・送迎の仕事
介護施設における補助・事務・送迎の仕事は、直接的な身体介護を伴うことなく、施設運営を支える不可欠な役割を担います。
送迎ドライバー 身体的負担を軽減したい方や、現場経験を活かしつつ組織運営の側面に関わりたい方に適しているでしょう。主にデイサービスなどで、利用者の自宅と施設間の送迎を中心とした業務を担当します。重要なのは、単なる運転技術だけでなく、利用者の安全確保です。 福祉車両(車いす昇降機能付きなど)の適切な操作や、利用者の乗降時のサポート、送迎ルートの提案、送迎記録の作成といった業務が含まれます。 事務・補助職 施設の請求業務、経理、備品管理、来客・電話対応といった運営に不可欠な間接業務を担います。
これらの仕事は、利用者やその家族、そして現場の介護職員が安心してサービスを提供・利用できる環境を維持するための、縁の下の力持ちとしての役割を担っているのです。これらは、身体的な負担を軽減しながら、高齢者支援の現場に関わり続けることができる職種といえるでしょう。
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