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【インタビュー】小曽根真の最新プロジェクトが一夜限りのスペシャル編成で公演─ MJFJ 2024 は「安全ベルトが必要かも…」

ARBAN

小曽根真02

ピアニストの小曽根真が新たなユニットTRiNFiNiTY(トリンフィニティ)を発足。同名のアルバムも発表し、好評を博している。メンバーは小曽根真(ピアノ)、小川晋平(ベース)、きたいくにと(ドラム) の三者。ベテランの小曽根と、才気あふれる二人の若手音楽家によるトリオである。

小曽根 真『Trinfinity』(ユニバーサルミュージック)

次代を担う俊才たちと

アルバムタイトルでありプロジェクト名でもあるTRiNFiNiTYは「Trio」と「Infinity(=無限)」を組み合わせた造語。「若い彼らは、変化を恐れず進化し続ける存在。無限の可能性を秘めています」と、小曽根は若い二人を立てるが、小曽根真という磁場を中心にした三者のインタープレイそのものが、無限の可能性を備えているのである。メンバーの小川晋平(ベース)、きたいくにと(ドラム)について、小曽根はこう続ける。

二人ともそれぞれの楽器のマスターであると言っても過言ではないほど素晴らしい技術を持っています。そしてそれよりも大切な “音楽を聴く力” を確実に持っているというのが僕にとっては一番の魅力です

ここで言う「音楽を聴く力」とは、すなわち「相手(共演者)の言葉(演奏)を聴き、きちんと会話が成立するように(演奏で)返答ができる能力」と捉えてもいいだろう。ジャズの演奏において、この反応センスは最も重要な資質のひとつ。プレイヤー同士の一瞬のひらめきとその呼応によって、楽曲はいかようにも展開していく。さらに両者は、クリエイティブ面でも素晴らしい才を秘めているという。

創造力と想像力の両方を二人とも持っています。これはジャズに限らず、音楽を奏でる上で何よりも大切なもの。せっかく素晴らしい技術を持っていても、その技術の使い道がずれていると音楽の本質が変わってしまう。特に90%以上アドリブで創られるジャズを演奏した時には雲泥の差がついてしまいます。この二人は見事にその感性を備え持っていて、常にそれを磨き続けている音楽家です

一夜限り?の特別編成を披露

そんな “TRiNFiNiTY” を発足して約1年が経とうとしている今、ユニットをバージョン・アップ、あるいはアナザー・バージョンとも言えるような布陣での上演が予定されている。この12月に開催されるモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2024(以下:MJFJ 2024)のステージに、小曽根真トリオTRiNFiNiTY+」として出演するのだ。この名義で重要なのは、グループ名の末尾についている「+(プラス)」だ。

前出の小川晋平(ベース)、きたいくにと(ドラム)とも同世代の新鋭、トランペットの松井秀太郎と、サックスの陸悠(くが ゆう)を“プラス”して出演するのだ。

先ほど小川君ときたい君の話をしましたが、この二人のホーンプレイヤー(松井秀太郎と陸悠)も同じビジョンを見ることのできる素晴らしい音楽家です。特に管楽器は、基本は単音しか出ない楽器ですが、その音色の中に隠れている倍音を含む “音色”の大切さを体で知っている音楽家だと僕は感じています。なので、ソロで吹いている時とアンサンブルで吹いている時に実はとても鋭い感性で周りの音を聞いて、その音楽にとって一番良いであろう自分の居場所にサッと行くことのできる技術を持っています。これもなかなか出会えない素晴らしい才能です

この布陣による公演は過去になく、一体どんなサウンドが展開されるのか、どんなシフトで臨むつもりなのか予想もつかない。ちなみに小曽根自身はこれまでの長いキャリアの中で、世界各国の大小さまざまなステージをを経験してきた。今回のステージ(ぴあアリーナMM)は、比較的大きな会場だが、何か指針のようなものは設けているのだろうか。

以前に、1万5000人ほどのキャパのハリウッドボールで演奏した時はとても気持ちよかったです。屋外だったから残響もそんなになくて。ただし(巨大会場では)情報量の多い会話は避けます。聞いてくださっているみなさんに、自分たちのメッセージが可能な限りクリアに届くように心掛けて演奏します。でも熱くなってしまうんですよね…特にこういうフェスティバルは。そうなった時にお客さんから来るエネルギーは半端なく素晴らしいです

忘れられないモントルーのステージ

ちなみに今回の公演の “本家”とも言える、スイスのモントルー・ジャズ・フェスティバルにも小曽根は複数の出演歴がある。なかでも思い出ぶかい出来事は何か? と問うと、ハービー・ハンコックの名を挙げる。

ハービー・ハンコックとの特別ステージということで、ピアノのデュエットをやったことがありました。30分ほどの短いセットでしたが…。演奏曲を決めたのも直前で、ハービーと二人、曲を決めながらその曲のアレンジもやっていく中、どんどんそのアレンジがチャレンジングなものになってドキドキのステージになったのを今でもクリアに覚えています。その30分は言うまでもなく“至福”の時間でした

じつは今回、ハービー・ハンコックも同イベントに出演する(12月6日、8日に出演)。しかもハービーのバンドも“活きのいい若手”を含んだ5人編成で臨む模様。ハービー・ハンコックとの再会や、彼のバンドを観るのも楽しみであろうが、やはり小曽根の心が躍るのは、自分のグループ「TRiNFiNiTY+」である。ライブ当日は一体どんな「会話」の応酬が繰り広げられるのか。想像するだけで小曽根自身にも思わず笑みが漏れる。

これはやってみないと!! とんでもない愛と喜び満ちたエネルギーのスパイラルになるのではないかな? 安全ベルト必要かも…

昂ぶる自分を制御するためにベルトが必要なのか、それともメンバーたちに着用させるべきか、はたまた客席に必要なのか…。いずれにせよ、スリリングでエキサイティングなステージであることは間違いない。

小曽根真 コンサート情報

●小曽根真ブラジリアン・ジャズナイト
日時:2024年12月12日(木) 開演19:00(開場18:15)
出演:小曽根 真(pf.) アンドレ・メマーリ(pf.) チアーゴ・エスピリト・サント(b.) エドゥ・ヒベイロ(Dr.) KAN(Perc.)
会場:芸術文化センター KOBELCO 大ホール

●小曽根真クリスマス・ジャズナイト2024
日時:2024年12月14日(土)18:00開演 12月15日(日)15:00開演
出演:小曽根 真(pf.) アンドレ・メマーリ(pf.) チアーゴ・エスピリト・サント(b.) エドゥ・ヒベイロ(Dr.) KAN(Perc.)
会場:Bunkamuraオーチャードホール

●Christmas Special Piano Duo 小曽根真&アンドレ・メマーリ
日時:2024年12月20日(金) 19:00開演
会場:グランシップ静岡 中ホール・大地

●小曽根真×アンドレ・メマーリ ピアノデュエット
日時:2024年12月21日(土) 17:00開演
出演:小曽根真(ピアノ)アンドレ・メマーリ(ピアノ)
会場:高崎芸術劇場 スタジオシアター

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