就学まであと1年!療育園に通う自閉症息子の小学校は?「3つの選択肢」、公立私立…夫婦で話し合った結果
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
知的障害を伴う自閉症息子の就学先には、3つの選択肢が
知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の長男りーは幼稚園に通っていましたが、年長から療育園に通うことになりました。
そして転園してすぐの頃、とある案内が届きます。
それは小学校入学の案内でした……。
知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)と診断されているりーが行ける小学校は3種類ありました。地域の小学校の通常学級か特別支援学級、そして特別支援学校の小学部です。私たちが住んでいる地域の就学担当の方が、りーの様子を見たうえで、就学先についてアドバイスしてくれるとのことでしたが、まずは夫婦で入学先について話し合うことにしました。
とはいえ、私たち夫婦二人の考えは特別支援学校小学部一択でした。
特別支援学校がいいと考えていた理由
まず、地域の小学校の通常学級は難しいだろうと考えていました。りーは身辺自立ができていないこと、集団での指示が通らないこと、授業中椅子に座っているのが難しいこと、また危険予測もできないので休み時間が不安ということがありました。そして、りーは人数が多いところが苦手です。
次に特別支援学級ですが、通っている療育園では先生がほぼマンツーマンでりーの対応をしてくれていること、私の住んでいる地域では特別支援学級の先生によって指導内容の差が大きいこと(先生の転勤に合わせて転校する子もいるほどだと知り合いから聞いていました)から、特別支援学級も違うのかなあということになりました。
私自身、地域の小学校に就学するとなると、幼稚園に通っていた時と同じように周囲の目が気になるという不安もありました。
そこで、特別支援教育にくわしい先生方が多く、個別や少人数の対応ができる特別支援学校の小学部を希望先としました。
検討した特別支援学校は2つ。決め手になったのは?
早速療育園へ希望を伝えたところ、私たちの住んでいる地域には公立と私立の特別支援学校が1校ずつあるということが分かりました。そのため、今度はどちらの特別支援学校がりーにとって良いのか検討することになりました。
調べてみると、どちらの特別支援学校でも、朝の準備や身支度をする時間、国語や図工などの教科学習の時間のほかに、個別の課題に取り組む時間や買い物体験に行く時間は共通してありました。
違いとしては、私立の特別支援学校は制服登校(将来仕事で制服に着替えるのに慣れるため)、自宅からは近いのですが朝は保護者が送迎する必要がありました。また、保護者の手伝いが多く、地域交流がさかんであるほか、入学や中学への進学の際には面接とテストによる試験があることを聞きました。
一方、公立の特別支援学校は私服登校、自宅からは遠いのですがバス送迎あり(中高校生と一緒)、入学・進学の時に特に面接もなし。
面談時には夫が説明会に行ったことを覚えていてくれ、「せっかくなら皆さんで校内を見てみませんか」というお誘いを受け、家族で校内を見学させてもらいました。先生や上級生の子も温かく、りーを受け入れてくれました。そうしてもらうことで人見知り、場所見知りのりーがうれしそうにあちこちの教室を探索する、ということがありました。
どちらも見学して良いところがありましたが、りーがより楽しそうに過ごす様子が見られた公立の特別支援学校が良いなという結論になりました。
私たち家族の方針もかたまり、療育園へ希望を伝えると同時に地域の教育センターへ就学相談の予約をして、就学相談の日を待つことになりました。
その後の就学相談については、また別の機会に書いていきたいと思います。
執筆/かしりりあ
(監修:鈴木先生より)
知的な遅れの程度によりますが、療育手帳を持っているならば、特別支援学校のほうが学習面や生活面のきめ細やかな指導が期待できます。多くの先生方が「特別支援学校教諭」という免許状を持っているほか、地域の公立小学校に比べ生徒一人に対する先生の割合も高いので、生徒一人ひとりに密に関わることができるからです。
一方、特別支援学校では、さまざまな地域から集まったお子さんと共に学ぶため、近所に住む同年代の子どもとの交流が少なくなる場合があります。地域の公立小学校に進学すれば、近所の子と一緒に遊んだり学んだりするので、顔を覚えてもらいやすいと言えるでしょう。また、特別支援学校へ進学すると、地域の公立小学校に転籍することが難しくなるという面もあります。
このように、それぞれにメリット・デメリットがありますが、特別支援学校には特別支援教育を専門とする先生方がたくさんいらっしゃいますので、親子共に安心して過ごせる環境であると思います。特別支援学校で社会性を身につけ「生きる力」をはぐくむことで、将来の就職などにも役立つかもしれませんね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。