【データで考える静岡県の現在地】川勝平太前県知事在任中の変化を振り返る。人口減と高齢化が進む一方、県民所得と医師数は増加
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「データで考える静岡県の現在地」です。先生役は静岡新聞の山本淳樹生活報道部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年5月23日放送)
(山田)現在、静岡県知事選が行われていますけど、今日は改めて全国から見て静岡県の立ち位置のようなところを数字から見ていこうということですね。
(山本)そうですね。県や市町のあらゆる選挙は、その自治体が置かれている状況を改めて確かめることができるチャンスだと捉えています。静岡県知事選に合わせて静岡新聞では連日、静岡県の現状を振り返る企画などを展開しています。5月16日には、川勝平太前知事が県政を担った2009年からのおよそ15年間に、どのような変化があったのかを数字で見る「データで考える静岡県」という特集を掲載しました。
(山田)われわれが思っている静岡県の姿とのギャップもあったりするんでしょうか。
(山本)改めて見ると、私にとっては驚きを感じた数字がいくつかあったので、少し紹介したいと思います。
(山田)さあ、どこから行きましょうか?
人口は379万人から353万人に、高齢化率は3割超
(山本)全国的に人口減少が問題だと言われています。これにはさまざまな原因があるんですが、静岡県の人口が15年前の2009年はどうだったかというと、379万人でした。
(山田)よく370万人と言ってましたよね。
(山本)そうですね。370万人という数字が頭の中に刷り込まれていたんですけども、2024年現在の推計値は353万人になっています。
(山田)もう少しで350万人を割ってしまいそうじゃないですか。
(山本)国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年には282万9000人まで減るとされています。そういう状況に置かれているということです。
全国的に見ると、静岡県の人口は47都道府県の中で10番目。日本の全人口1億2393万人のうちの約3%を占めています。
(山田)悪くない方なのかなと思ったりするんですが、全体的に減少しているということなんですね。他に気になるデータはありますか。
(山本)総人口に占める65歳以上の割合を示す高齢化率が2009年は22.4%でした。なので、高齢者の割合は2割ぐらいだなという頭でいたところ、2023年には実は30.4%と3割を超えていて、人数ベースでは110万2000人ほどの方が65歳以上という状況になっていました。
(山田)10人に3人が高齢者ということですか。
(山本)急速に高齢化が進んでいます。70代、80代でも元気な方はたくさんいますが、65歳以上を高齢者として考えると、現役世代が支えていくには大変になっていくというところが数字からも読み取れます。この15年近くで8ポイント増えているという進行の度合いがすごいですね。
(山田)結構深刻ですね。
(山本)知らぬ間にそういう数字になっていたという感じですね。
(山田)市町別でも数字が出ているんですね。
(山本)2023年の数字では、静岡県内の35市町の中で最も高齢化が進んでいるのが西伊豆町で52.6%でした。逆に最も低いのは長泉町で22.6%。10市町が40%以上になっています。
(山田)なるほど。他にはどうでしょうか。
(山本)静岡県はお茶の県と言われていますよね。確かに47都道府県の中では荒茶の生産量は最も多いですが、2010年には3万3400トンあったのが、2020年には2万5200トンまで減っています。
(山田)茶農家数の方も驚きですね。
(山本)これも2010年に1万3933戸だったのが、2020年は5827戸になっています。
(山田)茶農家が減っているということは聞いてはいたものの、この数字はちょっと衝撃的ですね。
(山本)急激に減ってきていますよね。荒茶の生産量は今から50年前に比べると半減しています。お茶の県だと言っていますが、一大産地ではあっても、茶農家の減少に歯止めがかかりません。これは消費の変化に伴ってお茶の価格がどんどん下がってきていて、寂しいことですが農家も茶の栽培をやめてしまうという形になっているということです。
1人当たりの県民所得は288万円→358万円
(山田)僕が気になった数字を上げてもいいですか。1人当たりの県民所得。年収ということですか?
(山本)県民所得なので年収とは若干違う考え方になります。1人当たりの県民所得というのは、県民が得た給与や利子、配当などに企業の所得を加えた総額を総人口で割って算出する指標のことを言います。基準の改定もあって単純に比較はできないのですが、2009年度が288万円、2022年度は358万円と増えています。
(山田)2020年度は全国でも6位なんですね。
(山音)そうですね。ただ、過去には3位や4位だった時期もあったので若干下がっています。それでも6位というのは、大小さまざまな企業が立地しているということがあります。
(山田)あとは…、小中学校の数が減ってますね。
(山本)そうですね。これも特に小学校が減っています。小学校は2009年度は538校あったのが、2023年度は493校ということで、15年前と比べると45校減少しました。
(山田)少子化の影響ですよね。
(山本)特に山間部で減っていますし、都市部でも効率的に教育を行おうということで統廃合が進みました。最近は春になると、歴史のある小学校が閉校したというニュースを聞くようになりましたね。
(山田)一方、お医者さんの数はすごい増えてますね。
(山本)厚生労働省の調査で、県内の医師の数は2008年度が6702人でしたが、2022年には8242人になっています。ただ、これは全国的に増加傾向にあるようです。
(山田)そうなんですね。高齢化に伴い必要だからということですかね。
(山本)その通りだと思います。ただ、問題になっているのは、増えた医師がどういう病院や地域にいるのかということです。偏在が進んでいるところが一つの課題になっています。特に東部、中部、西部で比べると、西部には多いけれども東部は少ないとかですね。全国的にどこの地域もお医者さんはほしいでしょうから、どのように静岡県に集めてくるかというのは政策的な課題だと思っています。
(山田)あと気になるところで言うと、防波堤の整備ですね。
(山本)この15年間を振り返って考えてみると、2011年に東日本大震災がありましたよね。大きな津波被害が発生して、新たな対策をしなければならなくなりました。静岡県は2013年に地震被害想定を見直しました。南海トラフ地震が起きた時にどのくらいの津波が来るのかを計算し直して、防潮堤の整備に着手してきました。対策が必要な箇所のうち、2022年度までに過去の整備分を含む73%が完了しています。
(山田)これは良い数字なんですか。
(山本)だいぶ進んだとは思います。それでもまだ課題があります。どのような防潮堤を造るかというところで地元合意ができていないなど、個別に見ていくといろいろあります。
データから見える課題を県知事選投票の参考に!
(山田)僕は長く静岡に住んでいて、大阪や東京に行ったこともありますけど、自分の出身地だからという思いも含めて、静岡はバランスが取れた良い街だなと感じています。だけど、こうやって人口減少や高齢化率などの数字を見ると、自分の街を見直す良いデータになりますね。
(山本)数字が変わったりするたびにわれわれも報じてきてはいますが、普段、普通に生活している中では皆さんはあまり意識することはないと思うので、変化に気づかないことがあると思います。しかし、実は蓋を開けてみると、こんなに人口減が進んでいるというようなことを改めて見つめる機会になると思います。
(山田)そうですね。他にも放課後児童クラブの待機児童数や空き家の数が増えていたりということもありますからね。ぜひ皆さん一度チェックしてもらって、今回の県知事選の投票にあたってデータを参考にしてもらいたいと思います。
(山本)この15年間の成績表とまでは言いませんが、何が足りていなくて、静岡県にとって何が問題なのか。個人によっても見方は違うと思いますが、課題だと感じるところに目を向けてくれる政治家を選びたいなと思いますね。
(山田)今日はデータで考える静岡県の現在地ということでした。今日の勉強はこれでおしまい!