南米アマゾン川流域に生息! 巨大発電生物<デンキウナギ>の高い発電能力の秘密
デンキウナギという名前は誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。しかし、その実態については意外と知られていません。
南米アマゾン川流域に生息するこの魚は、カエルを一撃で気絶させるほどの電気を放出することができる、まさに自然が生み出した“泳ぐ発電機”なのです。
デンキウナギは巨大な発電ウナギ
デンキウナギは、デンキウナギ目に分類される魚です。
“ウナギ”という名前がついていますが、実はナマズ目に近い分類群です。
体長は平均で1.5メートル程、最大で2メートルを超える個体も存在し、大きいと体重は20キロにもなるとか。その姿は細長く、暗い水中を滑るように泳ぎます。
電気を生み出す仕組み
デンキウナギが電気を生み出せるのは何故でしょうか。
その秘密は特殊な「発電器官」にあります。デンキウナギの体の後方約80%を占める尾部には、筋肉細胞が変化した特殊な「発電細胞」がびっしりと並んでおり、電池を直列につないだような構造になっています。
これらの細胞はまるで心臓の鼓動のように、電気的な信号を一斉に放ち、瞬間的な電気のパルスを生み出しているのです。
その電圧は最大600ボルトに達し、流れる電流は数アンペアに及ぶこともあります。
何のために発電する?
では、この電気はどのような目的で使われるのでしょうか。
1つ目は狩りをするためです。デンキウナギは肉食性で、小魚やカエル、甲殻類などを捕食します。獲物に電気を放つことで一瞬で麻痺させ、逃げられないでいるうちに捕食するのです。
2つ目は、周囲を探知する「生体レーダー」としての利用です。弱い電流を発して、その反応で周囲の物体を感知することができるわけです。暗く濁ったアマゾン川の中でも、獲物や障害物の位置を正確に把握することができます。
デンキウナギの電気は連続的に流れるのではなく、短いパルス状で放出されるため、獲物や敵には瞬間的な衝撃だけを与えることができます。そのため、必要以上に相手を傷つけることなく、防御や狩りを効率的に行うことが可能です。
そして3つ目が防御。自分を襲ってくる敵に向けて放電することで、身を守ることができます。
デンキウナギからヒントを得た電池開発
さらに、デンキウナギは成長するにつれて発電能力は変化し、体の大きな個体ほど強力な電気を放つことができることも知られています。
電気の強さやリズムを使い分けることで、周囲の状況に応じた柔軟な対応ができるのがデンキウナギの凄いところ。実験によると、デンキウナギが発する電気で小型のLEDを点灯させることができるとわかっています。
それにヒントを得て、研究者たちはハイドロゲル素材を使った新しい電池の開発に取り組みました。生き物のしくみを応用した技術が、未来のエネルギー源になるかもしれません。
空気呼吸にも適応
デンキウナギが一定の間隔で水面に浮上して呼吸を行うことも知られています。もちろんデンキウナギはエラも持っていますが、定期的に水面に顔を出して呼吸をしているのです。
これにより酸素の少ない水域においても生存することが可能になりました。
水面から顔を出して呼吸している姿を想像するとかわいらしいですね。
様々な能力を持つデンキウナギ
このようにデンキウナギは発電に空気呼吸と様々な能力を持っているのです。特に発電においては非常に優れた能力を持ち、捕食や防御様々な用途に電気を利用しています。
デンキウナギからヒントを得た電池も開発されていることから将来、この魚が我々にとって身近な存在になるかもしれませんね。
(サカナトライター:こやまゆう)