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【Made in KYOTO 京都の匠と創り手】〜伝統とポップの融合〜京の老舗[宮脇賣扇庵]が[バナナとイエロう]で切り開く扇子の新たな世界

Leaf

千年の都・京都には時を超えて受け継がれる職人の技が息づき、美しい手仕事と独自の感性が融合した伝統工芸は、ただの「もの」ではなく、暮らしに溶け込む芸術品としてわたしたちの生活に溶け込んでいる。連載【Made in KYOTO 京都の匠と創り手】では、そんな京都ならではの工芸品にスポットを当て、その魅力と新たな挑戦を紹介。
平安時代に京都で生まれ、1000年以上の歴史が刻まれた「京扇子」もその一つ。江戸時代の創業以来、京扇子の伝統と品格を守ってきた老舗扇子店[宮脇賣扇庵(みやわきばいせんあん)](京都府京都市中京区)が、扇子の未知の可能性を追求して2021年に立ち上げたのが[バナナとイエロう]。これまで扇子の枠を超えアートピースやファッションアイテムとして、扇子の新しいあり方を提案している。変化を恐れず時代に合わせて進化する老舗の挑戦、伝統とポップが交差して生まれる新時代のカルチャーに迫る。

この記事の目次

1. 江戸時代からの伝統の職人技で京扇子の誇りを継ぐ 2. 今までの扇子デザインとは一線を画す、京扇子の老舗が始めた革新的な挑戦 3. アートピースとして自己表現ツールとして、広がる扇子の可能性

1.江戸時代からの伝統の職人技で京扇子の誇りを継ぐ

京都の街中、六角通に佇む町家の建物に風格が漂う[宮脇賣扇庵]は美濃国出身の初代が文政6(1823)年に創業したことに始まる。工芸品としての飾り扇を考案した三代目の時代に、日本画家・富岡鉄斎が賣扇桜という京の銘木にちなんで現在の屋号をつけた。当初からほぼすべての商品を自社で製造販売しており、その技法は現在に至るまで受け継がれている。

扇子の製造は扇骨作りと扇面作り、両者を組み合わせる仕上げ作業の3つに大別され、総じて20以上の工程があるという。「分業で行われる扇子作りは『完成までに87回職人の手を通る』という言葉があるほど、多くの人が携わっています。絵師や折り加工の職人、扇の骨をまとめる要(かなめ)を打つ専門の要職人もいて、熟練の職人たちの手で一つずつの工程を丁寧に仕上げていきます」と店長の小林聡さん。分業によって磨かれた高い技術力があってこそ、京扇子は京都が誇る工芸品として継承されてきたのだ。

絵師が地紙に上絵を施す作業。持ち歩ける美術品とも呼ばれる扇子は、植物や虫といった四季を感じられるもの、宝尽くしなどの縁起物の絵柄が定番

湿らせた美濃和紙の地紙を型紙の間に挟み、手早く折りたたんで蛇腹の形にする折り加工。貼り合わせた地紙の枚数やその日の湿度によって最適な湿り具合が変わるため、それを見極めるのも熟練の職人がなせる技

竹の中骨に糊をつけ、息を吹き込んで開けた穴に差し込み接着する仕上げ加工。多いときは50本近くあるという中骨を正しい位置に差し込む繊細さが求められる

京趣扇 ひょうたん8800円(左)と京凛扇 兎1万6500円(右)

2.今までの扇子デザインとは一線を画す、京扇子の老舗が始めた革新的な挑戦

[宮脇賣扇庵]の創業から200年の節目を目前とした2021年、本店の隣に新ブランド[バナナとイエロう]が誕生した。町家の落ち着いた佇まいの[宮脇賣扇庵]とは180度雰囲気が異なり、ビビッドな色味が溢れるポップな見た目に驚いた人も多いのではないだろうか。この話題のブランドを立ち上げたのは、[宮脇賣扇庵]の八代目・南忠政さんだ。「[バナナとイエロう]は京都が発祥の扇子を国内外の方にもっと広く知ってもらいたいとデザインを開発していくなかで、新たな展開として生まれたブランドです。[宮脇賣扇庵]とは異なる世界観を楽しんでもらえればと思っています」。

[バナナとイエロう]で販売している扇子は、鮮やかでカラフルだったりアルファベットが描かれたり、従来の扇子のイメージとはかけ離れたものが多い。オリジナル商品は扇子にとどまらず、Tシャツやバッグといったファッションアイテムから、キーホルダーやステッカーなどの雑貨類も充実している。「[バナナとイエロう]は、扇子を日常的にファッション感覚で使ってもらえるように提案するのがコンセプト。伝統的な扇子というアイテムを時計やアクセサリーと同じように、おしゃれをする感覚で身に着けてもらえたらと思っています」。

3.アートピースとして自己表現ツールとして、広がる扇子の可能性

アートや音楽、ファッションなどジャンルの垣根を超えて、さまざまなアーティストやスペシャリストとコラボレーションするのも[バナナとイエロう]の大きな特徴。[GRAPH]の北川一成さんと共同製作した扇子に始まり、これまでアーティストのFantasista Utamaroさんや[ミナペルホネン]の皆川明さん、[ANREALAGE]の森永邦彦さんなどとの数々のコラボ商品が誕生した。「私の感性でかっこいいと感じた作品を生み出すアーティストの方に、コラボをお願いすることもあります。きれいだったりかわいかったりするデザインの扇子にも、かっこいいと感じられる要素を入れたいと意識しています」と南さん。独特の世界が表現された商品はアーティストやブランドのファンを中心に、幅広い世代から注目を集めている。

ニューヨークを中心に活躍するアーティスト・Fantasista Utamaroさんとのコラボ扇子 商品のなかには[宮脇賣扇庵]の昔の扇子面デザインをアレンジしたものもあるという。「色やデザインがポップではありますが、それらを描く刷毛使いや折り加工、扇骨と扇面を付ける仕上げの工程などにも、伝統的な扇子づくりの技術が活かされています」と南さん。
現代的なデザインで一見違う物のような[バナナとイエロう]の扇子だが、[宮脇賣扇庵]の長い歴史と技術があってこそ生まれたものなのだ。

【八代目当主 南忠政さん】
1976年、五代目宮脇新兵衞の孫として大阪府に生まれる。2001年に母親の実家である[宮脇賣扇庵]に入社し、2020年代表取締役に就任。京都扇子団扇商工協同組合理事長として京扇子の職人の育成、技術を伝承する傍ら、2021年にはファッションブランド[バナナとイエロう]を立ち上げ、新しい感覚を取り入れた若い世代向けの扇子の創作を通じ、扇子の裾野を広げるべく尽力している 「現代では主に涼を取る道具として用いられている扇子ですが、そのルーツをたどれば平安貴族の正装の必需品であったり品格を表す服飾品であったり、“煽がなくても、携えていたいもの”としての歴史があります。[バナナとイエロう]ではこれからもその原点を見つめ、現代のライフスタイルにふさわしい新しい扇子のあり方を発信していけたらと思っています。さまざまな形で扇子の文化をこの先の未来に残していけたら嬉しいですね」。

バナナとイエロう

京都府京都市中京区六角通富小路東入ル大黒町80-3 阪急「京都河原町駅」出口12から徒歩6分 Tel.075-213-0877 11:00〜18:00 水曜休 https://banana-to-yellow.jp/

宮脇賣扇庵

みやわきばいせんあん 京都府京都市中京区六角通富小路東入ル大黒町80-3 阪急「京都河原町駅」出口12から徒歩6分 Tel.075-221-0181 10:00~18:00 年末年始休 駐車場無 http://www.baisenan.co.jp ※予告なく記載されている事項が変更されることがありますので、予めご了承ください。
※本サイトは自動翻訳を導入しているため、翻訳文によって本来の日本語の内容と異なる場合があります。

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