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高級魚・クエにそっくりな<ミナミクエ>を新種記載 学名をめぐる混乱を明らかに?

サカナト

クエ(提供:PhotoAC)

水産研究・教育機構と神奈川県立生命の星・地球博物館、ベトナム科学技術アカデミーはクエの学名の混乱を明らかにし、南シナ海からクエによく似たミナミクエ(Epinephelus randalli)を新種記載しました(Taxonomic status of the commercially important grouper, Epinephelus bruneus and E. moara (Osteichthys: Perciformes: Epinephelidae), with the redescription of E. bruneus and the description of a new species.)。

本研究はクエとミナミクエの学名を確定させることにより、養殖技術や資源管理への貢献のほか、異なる種の魚の混用を防ぐことに貢献しています。

クエとミナミクエ

クエ(提供:PhotoAC)

クエはスズキ目ハタ科に属する大型魚で、日本、中国、韓国、台湾に分布しています。

本種はEpinephelus bruneusとして知られているものの、中国ではクエに似た異なる魚(この研究でミナミクエと命名)が同じ学名で呼ばれていたのです。

同じ魚に異なる学名が2つ存在することになってしまうと、あらゆる分野で混乱が生じます。そこでEpinephelus bruneusがクエなのかミナミクエなのか、はっきりとさせるために担名タイプの調査が行われました。

標本のスケッチから種を同定

Epinephelus bruneusは1739年にドイツのブロッホ(Bloch)が記載した魚で、当時、使われた担名タイプ(種・亜種の学名を決定する根拠になった標本)はベルリン自然史博物館に収蔵されています。

担名タイプは約230年前の標本であり色彩の多くは失われていたものの、担名タイプのスケッチから種を特定。えら蓋のトゲの形質や体の模様から、Epinephelus bruneusはクエにあたることが明らかになったのです。

中国でE. bruneusと呼ばれていた魚の正体

クエ(提供:PhotoAC)

これによりEpinephelus bruneusはクエであることが示されましたが、中国でEpinephelus bruneusと呼ばれていた魚はどうなのか。

本研究では中国でEpinephelus bruneusとされていた魚が、過去に学名が与えられていないか調査を実施しました。その結果、この魚にはまだ学名がない(=未記載種)ことが判明し、著名な魚類学者であるJ.E.Randall博士に献名し、Epinephelus randalliと命名されました。

Epinephelus bruneusとEpinephelus randalliはえら蓋前部の骨の棘(E.bruneusでは小さくて多いが、E.randalliでは大きくて少ない)ことや、胸びれ上方の模様の違いにより識別が可能です。

また、本種は南シナ海に分布する魚で日本には分布しないものの、本研究で「ミナミクエ」という和名が与えられています。

クエの学名はどっち?

クエの学名の混乱はこれだけではありません。

日本でクエとされている魚は中国では別の学名が与えられており、Epinephelus moaraと呼ばれていました。

Epinephelus moaraは1843年に長崎県で得られた標本で基づき記載された魚ですが、本種の担名スケッチを調べたところ、Epinephelus bruneus(クエ)と同様の特徴が確認されました。

この場合、国際動物命名規約の「先取権の原理」に基づき、先に命名された学名が優先されます。そのため、1793年に記載されたEpinephelus bruneusの学名が有効であり、1843年に記載されたEpinephelus moaraは無効となったのです。

身近な魚にも謎がある

今回の研究はクエの分類学的混乱を解消し、資源管理や養殖技術への貢献が期待される成果となりました。

また、ミナミクエが新種として記載されたことは、食用として利用されている魚の中にも未知の魚がいることを示しています。

分類学的な混乱が見られる魚はまだたくさんいるので、今後の研究が楽しみですね。

(サカナト編集部)

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