まるで和風プリン。天神様お膝元の老舗が生み出した、シュワふわ食感の大人菓子
この「宝満山(ほうまんざん)」というお菓子を初めていただいた時、カスタードを思わせるまろやかな風味と、しっとりして、舌の上でシュワシュワと空気がほどけていくような不思議な食感に驚かされました。
それまで、“淡雪羹”と呼ばれる、砂糖と寒天と泡立てた卵白を合わせて固めた和風のムースのようなお菓子は食べたことがありましたが、より濃厚なコクのある卵黄の味わいで、まるでふわふわのプリンのような不思議な印象なのです。
そんなお菓子を作っているのは、福岡県の名刹・太宰府天満宮の参道に昭和23年(1948年)よりお店を構える「梅園菓子処(ばいえんかししょ)」。
「宝満山」とは太宰府にある霊峰の名で、この地には人々の信仰を集める「宝満宮竈門神社(ほうまんぐうかまどじんじゃ)」もあります。菓銘の由来については諸説伝わるそうですが、地元を愛する思いと結び付いた、店の創業期からの看板商品です。
このお菓子を愛した1人が、明治末期から昭和にかけて電力業界を中心に活躍した実業家・松永安左エ門でした。
近代三茶人の1人・松永耳庵として知られる人物であり、縁あって「梅園」創業者の藤丸正氏が「宝満山」を差し上げたところ、「宝満の山より高き上味、誠に申し分なし」と高く評価する手紙が届いたそう。その直筆の手紙は「梅園菓子処」店内に展示してあるので、大宰府天満宮参拝の折にはぜひ立ち寄ってみくてださい。
ある時、店主がこの「宝満山」を知人宅で召し上がり、ブランデーやデザートワインなどの洋酒をかけて食すと、芳醇な香りと甘さがより引き立つことを知りました。そこで、数年かけて試作を繰り返し完成させたのが、このラムレーズン入りの「宝満山」。程よい大きさに刻まれたレーズンが所々で顔を出し、甘酸っぱさとラム酒のキレが生地の甘さと相まって、実に贅沢な味わいです。
お酒のあてにもよく、父の日などの贈り物として用意して、ご家族で一緒に味わうのもいいですね。もちろん、お抹茶に合わせて味わえば、何とも言えず贅沢で豊かな心持ちになれます。
特に夏場は冷やしていただくと、ひんやりと口当たりのよい大人向けのデザートに。卵を使っているため日持ちは長くないですが、冷凍保存すれば1ヶ月程度もち、糖分や抱き込んだ空気のおかげでガチッと固く凍りません。口の中でふわりととろけ出す、一味違った食感が楽しめます。
商品名:ラムレーズン宝満山(1棹)
販売:梅園菓子処(ばいえんかししょ)
文:お取り寄せの達人:平岩理緒さん(スイーツジャーナリスト)