「岡本太郎記念館」の見どころガイド!生命力に溢れる芸術の世界へ
戦前から前衛的な芸術運動を行い、日本を代表するアーティストとして活躍した岡本太郎。 彼が追求した独自の表現は、1996年に亡くなった後も、現代のアートシーンに影響を与え続けています。 岡本太郎と言えば、「芸術は爆発だ!」という有名なフレーズに象徴されるように、エネルギー溢れる人物というイメージがあります。そんな根源的なパワーに触れられる場所が、東京都の南青山にあるのをご存知でしょうか? 「岡本太郎記念館」は、彼が40年以上の間住まい、作品を制作し続けたアトリエを公開している施設です。当時のままの姿で残されたアトリエを眺めていると、今もここに住んでいるのではないかと思えるほど、エネルギーに溢れた空間です。
この記事では、筆者が「岡本太郎記念館」を訪れた様子をレポートし、見どころをたっぷりとお届けします。また、2025年11月3日(月・祝)まで開催中の「太陽の塔」に関連する展覧会と、ミュージアムショップのおすすめグッズや書籍もピックアップしてご紹介します。
今なお息づく岡本太郎の力強い表現を、ぜひ体感してみてください。
見どころ① 岡本太郎の表現が凝縮された空間
「岡本太郎記念館」は、もともと、彼が幼い頃から両親と暮らしていた場所に新築されたアトリエでした。1954年に建設され、以降の絵画作品は、すべてここで生まれました。パートナーの岡本敏子とともに仕事に励んだスペースであり、芸術運動の拠点としても機能していたのが特徴です。
1996年に彼が亡くなった後、敏子がその遺志を継ぎ、「岡本太郎を次の時代に伝えたい」という思いから、わずか2年で記念館が創設されました。実際に使用していた部屋と、新築された展示空間の2つの棟で構成されており、作品とその源泉から満ち溢れるパワーを感じられるスポットです。
また、現代建築の巨匠ル・コルビュジエの弟子である坂倉準三が設計を手がけたことでも知られています。
パリで岡本と学び合った同志である坂倉は、資金が乏しかった彼のために、ローコストの建築を提案しました。コンクリートブロックを積み上げた建物は、シンプルでありながら斬新なアイデアに満ちており、昭和の名建築のひとつと言われています。
まずは、日々の制作を行っていたアトリエをはじめ、サロンや庭をめぐり、その世界観を味わってみましょう。
アトリエ—数々の名作が誕生した部屋
筆者が最初に訪れたのは、メインスポットのひとつであるアトリエ。部屋の中央には、企画展のテーマに合わせた絵画が設置され、展覧会ごとに異なる作品を見ることができます。
小さなサイズから大型のものまで、多くの絵画が収蔵されており、中には制作途中のまま残されたものもあるそうです。岡本は、同じモチーフを何度も描いたり、下描きをくり返したりしていたため、アトリエの棚には数々の絵が保管されています。
「太郎さんが、今もここで制作しているのでは」と多くの来場者が口にするのは、テーブルの上の道具や床に飛び散った絵の具が、当時のままの姿で残されているからでしょう。
アトリエには彫刻作品も設置されているため、独自の世界観にたっぷりと浸れること間違いなしです。
サロン—部屋中に溢れる岡本太郎のインテリア
絵画アトリエの手前にあるのが、「サロン」と呼ばれるリビングスペースです。もともとは、応接や打ち合わせのために使用されていましたが、現在は、岡本がデザインしたインテリアを楽しめる空間となっています。
窓際に立っているのは、本人と見間違うほど精巧なマネキン。彼自身がシリコンに埋まって型を取ったため、顔のシワまで正確に再現されています。実際に着ていた衣服を身につけており、季節ごとにファッションを変えているそうです。
筆者は何度か「岡本太郎記念館」を訪れていますが、「今回はどんな服装だろう」と毎度ワクワクしながら足を運んでいます。
写真中央のピンク色の造形物は、岡本がメキシコから持ち帰った〝生命の樹〞です。メキシコの民芸品である〝生命の樹〞を一目見て気に入り、はるばる日本まで船便で送って、自宅に飾っていたと言います。
ぜひ部屋の隅々まで眺めて、細部のこだわりを発見してみてください。
庭—彫刻と植物が一体となる空間
サロンの大きな窓から見えるのは、彫刻と植物が一体となった庭です。「岡本太郎記念館」の入り口から庭に足を踏み入れると、驚きの光景が広がっています。バショウやシダ類が生い茂る中に、大小さまざまな彫刻作品が設置されているのです。
岡本は、この庭で多数の彫刻を作っていたそうです。絵画アトリエから庭に出入りできる設計になっており、絵と彫刻を行ったり来たりしながら制作していたと言います。同時並行で複数の作品を制作するスタイルに合わせて、それぞれの空間がデザインされていることが分かるエピソードです。
アトリエの前に置かれた《坐ることを拒否する椅子》に腰かけて、じっくりと庭を眺めてみてくださいね。
見どころ② 岡本太郎の作品を味わえる展示室
「岡本太郎記念館」では、アトリエなど常設の部屋に加えて、展示室でさまざまな作品を見ることができます。定期的に企画展が開催され、多彩な切り口で岡本の創作活動を紹介しています。
この日、筆者が鑑賞したのは、2025年11月3日(月・祝)まで開催中の「生命の樹―もうひとつの太陽の塔―」。
1970年の大阪万博のシンボルとして有名な「太陽の塔」ですが、その内部には、40億年にわたる生物の進化を一望できる《生命の樹》があります。そこには、単細胞生物から旧石器時代のヒトに至るまで、33種の生き物が存在していました。
岡本太郎がプロデュースしたテーマ館は、地下→塔内→空中→地上をめぐるという壮大な構想で、地下から大屋根内部までの空間に展示されたのが、41mの高さを誇る《生命の樹》でした。
岡本は、「《生命の樹》は太陽の塔の“血流”だ」と語っています。太陽の塔は“内臓”を持つ“いきもの”でもあったのです。
実は、大阪万博の閉幕後、「太陽の塔」は長らく放置され、内部は廃墟と化していました。
それからおよそ半世紀が経過した2012年、「<太陽の塔>再生プロジェクト」が立ち上がり、修復・復元の作業がスタート。耐震補強と展示物の再生という2つのフェーズを同時に進行し、常設公開を目指して動き出しました。
本展では、復元された《生命の樹》の模型に加えて、「<太陽の塔>再生プロジェクト」の過程を、資料や映像で知ることができます。
1970年当時の写真を参考に、生物の粘土原型を作ったり、木の幹にどのように設置されていたのか模型を使って検証したりと、入念に準備を進めた様子がうかがえます。
さらに、岡本が1970年の大阪万博に向けて、どのようにプロジェクトを展開したのかを紹介する資料や、関連する作品も展示。彼の頭の中をのぞいているような感覚で、「太陽の塔」が完成するまでのプロセスをめぐっていると、当時の高揚感が伝わってくるようです。
写真の中央にあるのは、《石と樹》(1977年)という絵画。岡本は、「樹」をモチーフにした作品をいくつも描いています。エネルギーを循環させながら生命を実らせる樹木は、重要なテーマのひとつだったのです。
このように、「岡本太郎記念館」では、作品を体感しその背景を知ることで、彼の思想や情熱の源に触れられます。岡本太郎が放つエネルギーを、展示を通して全身で味わってみましょう。
見どころ③ 岡本太郎を日常で楽しむミュージアムショップ
それぞれの部屋と展示室をめぐった後に必ず訪れたいのが、ミュージアムショップです。多彩なグッズと岡本太郎に関連する書籍を手に取ることができます。
筆者も、来館した際にショップに立ち寄るのが、楽しみのひとつです。
ここでは、筆者がおすすめするミュージアムグッズと書籍をいくつかご紹介します。
おすすめグッズ3選
①「太陽の塔」グッズ
まずおすすめしたいのが、「太陽の塔」グッズです。ご自宅に飾れるフィギュアをはじめ、ハンドタオルやTシャツなど、日常で使用できる商品が揃っています。
フィギュアは、手のひらサイズのソフトビニール製(税込2,800円)と、新発売の「太陽の塔 1/300スケール」(税込11,000円)の2種類から選べます。
同じく新商品のマグカップ(税込3,300円)は、総柄のおしゃれなデザイン。スープボウルやサラダボウル、おかず鉢としても使える茶碗(税込3,850円)も人気です。
岡本太郎の代表作を、さまざまな形で日常に取り入れられるのが魅力です。
②Tシャツ
Tシャツも人気商品で、25種類ものラインナップを取り揃えています。作品の大きなカットからワンポイントのデザインまで、さまざまな種類があります。
海外から来たお客様は、「コラージュ TARO」(S/M/L/XL 税込8,500円)など、とくに鮮やかなものを好まれる方が多いそうです。ぜひ、お気に入りの一枚を見つけてみてくださいね。
③バッグ
日々の買い物やお出かけにおすすめしたいのが、オリジナルデザインのバッグ。写真上の黄・青・黒の商品は、《坐ることを拒否する椅子》のエコバッグ(各700円)。
下段には、トートバッグ(税込2,200円)やサコッシュ(税込1,450円〜)など、色々なサイズがあります。お気に入りの作品を、普段の生活で持ち歩いてみてはいかがでしょうか?
おすすめ書籍2選
①『岡本太郎記念館の20年』
「この本を読めば、『岡本太郎記念館』のすべてが分かる」という一冊。館長を務める平野暁臣氏が編集・執筆した書籍です。
岡本が暮らしていた当時の様子や、近年の若手作家とのコラボレーションまで、写真付きで詳しく知ることができます。
岡本敏子が抱いていた「岡本太郎を次の時代に伝えたい」という思いが丁寧に綴られており、彼の表現が現代まで継承されてきたプロセスを実感できるでしょう。
②岡本太郎の著作シリーズ
青春出版社から刊行されている、岡本太郎の著作『自分の中に毒を持て』『自分の運命に楯を突け』『自分の中に孤独を抱け』の3冊。
「行きづまったほうが面白い」「マイナスの面に賭けたほうが人生はおもしろくなる」といった名言が詰まっています。「太郎さんの言葉を読むと、元気が出てくる」と励まされる読者が多く、若い世代のお客様も購入されているそうです。
あらゆる困難に立ち向かった彼の生き方は、現代の私たちに希望を与えてくれます。
気になった一冊を、ぜひ手に取ってみてくださいね。
岡本太郎の世界を体感できる記念館
この記事では、筆者が「岡本太郎記念館」を訪れた様子を、写真を交えて詳しくレポートしました。実際に使用していたアトリエや、作品の展示を見ることで、ほとばしる生命力に触れられます。
岡本の作品が好きな方はもちろん、「アートを通じて元気をもらいたい」という方にもおすすめのスポットです。あなた自身の感性で、岡本太郎の世界を体感できるでしょう。
(取材協力:岡本太郎記念館)
施設情報
名称:岡本太郎記念館
開館時間:10:00~18:00(最終入館17:30)
休館日:火曜日(祝日の場合は開館)、年末年始(12/28~1/4)及び保守点検日
観覧料:一般 650円(550円)、小学生 300円(200円)
※( )内は15人以上の団体料金
交通アクセス:東京メトロ 銀座線・千代田線・半蔵門線『表参道』駅より徒歩8分、
都営バス(渋88系統)「新橋駅前行」「渋谷駅前行」に乗車し、『南青山六丁目』下車 徒歩2分
公式ホームページ:岡本太郎記念館
【参考書籍】
編著 平野暁臣『岡本太郎記念館の20年』小学館、2019年
https://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b378337.html