夜だけ介護施設を利用することはできる?それぞれに合った夜間ケアの選び方を解説!
介護家族にとって、夜中の介護は特に負担が大きいものです。
日中は何とか対応できても、夜間になると介護者自身の睡眠が十分に取れず、身体的・精神的な疲労が蓄積していきます。
特に認知症の方に対応するのは、家族だけでは限界があることも少なくありません。
そんな悩みを抱える方々のために、「夜だけ介護施設を利用する」という選択肢があることをご存知でしょうか。
日中はいつも通り自宅で過ごし、夜の間だけ専門の施設やサービスを利用することで、介護の負担を軽減しながら、高齢者の生活の質を保つことができます。
この記事では、夜間だけ利用できる介護施設やサービスの種類、そのメリット、選び方について詳しく解説します。夜間介護の悩みを抱えるご家族の方々や、介護従事者の方々にとって参考になる情報をまとめました。
夜間だけ利用できる介護施設の種類と特徴
夜間に限定して利用できる介護施設やサービスには、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご家族の状況や要介護者のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。
ショートステイ(短期入所生活介護)
ショートステイは、一般的に数日から数週間の短期間、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに宿泊して介護サービスを受けられる制度です。
しかし、近年では「夜間のみのショートステイ」というサービスを提供する施設も増えてきました。
施設によりますが、夜間のみのショートステイでは、夕方に施設に入り、翌朝に帰宅するというパターンが一般的です。食事・入浴・排泄など日常生活全般の介護サービスを受けることができます。
このサービスは、日中は自宅で過ごし、夜間だけ施設で過ごすことで、慣れ親しんだ自宅で過ごす時間を大切にしたい方や、完全な施設入所に抵抗がある方でも受け入れやすいのがメリットです。
利用できる施設としては、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホームなどがあります。
ただし、すべての施設が夜間のみの利用を受け入れているわけではないため、事前に確認が必要です。
費用面では、介護保険を利用することで負担を軽減できます。要介護度や所得に応じて自己負担額は変わるため、利用前に施設に確認しておくことをおすすめします。
小規模多機能型居宅介護の夜だけプラン
小規模多機能型居宅介護は、「通い」「泊まり」「訪問」を組み合わせた柔軟なサービスを提供する介護施設です。この中の「泊まり」のサービスを夜間だけ利用することも可能です。
小規模多機能型居宅介護の最大の特徴は、利用者のニーズに合わせて柔軟にサービスを組み合わせられる点です。例えば、週に数日だけ夜間利用したり、状況に応じて通いサービスと夜間の宿泊を組み合わせたりすることが可能です。
定員が小規模なため、馴染みの関係ができやすく、きめ細かなケアが受けられるのも魅力です。
また、地域密着型サービスなので、住み慣れた地域で介護を受けられるという点も高齢者にとって安心感につながります。
利用料金は月額定額制となっているところが多いのが特徴で、要介護度と所得に応じて自己負担額が決まります。都合によって「通い」「泊まり」「訪問」複数のサービスを利用したい方に適しています。
ナイトデイサービス・夜間対応型訪問介護
ナイトデイサービスは、夜間型の通所介護サービスで、主に都市部を中心に広がっています。一方、夜間対応型訪問介護は、夜間に自宅を訪問してケアを行うサービスです。
ナイトデイサービスでは、夕方から夜の時間帯に、食事・入浴・レクリエーションなどのサービスを提供します。
通常のデイサービスよりも遅い時間帯(例えば16時から22時頃まで)に運営されているため、日中は家族が介護できるが夕方以降が難しい、という家庭に適しています。
一方、夜間対応型訪問介護は、夜間に定期的な巡回や必要に応じて随時対応を行うサービスです。オペレーションセンターが24時間体制で対応し、必要に応じてヘルパーが自宅を訪問します。
このサービスは、自宅で過ごしたいが夜間に突発的な対応が必要になる可能性がある高齢者に適しています。
特に認知症の方の場合、自宅ではない場所に不安を感じて状態が不安定になってしまう場合も考えられるため、自宅にいながらサポートを受けられるサービスの利用が有効な場合もあります。
利用料金については、ナイトデイサービスは通常のデイサービスと同様に介護保険を適用でき、要介護度に応じた自己負担となります。夜間対応型訪問介護は、基本料金に加え、訪問回数に応じた従量制の料金体系となっている場合があります。
ただし、料金に関しては地域差があり、夜間・深夜・早朝などの加算により料金が変動する可能性があるため事前に調べておくことが大事です。
夜だけ介護施設を利用するメリット
夜間だけ介護施設を利用することには、要介護者と介護者の双方にとって多くのメリットがあります。ここでは、その主なメリットについて解説します。
認知症の夜間徘徊・不穏症状に対応する
認知症の方によく見られる症状として、夜間徘徊があります。日が暮れてくると不安や混乱が強まり、落ち着きがなくなったり、家の中や外をさまよい歩いたりする症状です。
この夜間徘徊は、転倒や行方不明などのリスクを伴う危険なもので、いつ起こるか分からないものであるため家族だけで対応するのは非常に困難です。
夜だけ介護施設を利用する場合であれば、専門的な知識と経験を持ったスタッフが夜間の対応を行ってくれます。施設内は安全に配慮された環境で、センサーや見守りシステムを導入している場所も多く、徘徊による事故のリスクを減らすことができます。
認知症の方が夜間に不安を感じる原因として「場所の見当識障害」があります。これは暗くなると自分がどこにいるのかわからなくなり、不安や混乱が生じる症状のことです。
施設では、間接照明やナイトライトを適切に配置し、視覚的に今どこにいるかを分かりやすくすることで、こうした不安を軽減する工夫がなされている場所も多いです。
介護者の睡眠確保とメンタルヘルス維持
介護者にとって、夜間介護による睡眠不足は深刻な問題です。
家族を介護している方の中には睡眠不足を訴える方も多く、その結果として慢性的な疲労やうつ症状などの健康問題を抱えていることがよく知られています。
夜だけ介護施設を利用することで、介護者は夜間しっかりと睡眠をとることができ、身体的・精神的な健康を維持することができます。
介護者がきちんと休息をとるための時間を確保するという観点からも、夜間の施設利用は有効です。
介護者の疲労やストレスが限界に達し、心身を壊してしまうことを防ぐためにも、計画的な休息は不可欠です。
特に、日中は仕事をしながら介護をしている介護者にとって、夜間の介護の負担は日中の仕事にも影響してしまう場合があります。夜間の施設利用は仕事と介護の両立をサポートするための有効な手段のひとつとなるでしょう。
高齢者の生活にメリハリをつける
高齢者にとって、規則正しい生活リズムを保つことは非常に重要です。日中に活動し、夜になったらしっかり休息するというメリハリがある生活は、認知機能の維持や睡眠の質の向上につながります。
夜だけ介護施設を利用することで、日中は自宅で家族と過ごし、夜は施設で専門的なケアを受けるという生活パターンをつくることができます。この「場所による切り替え」によって生活にメリハリをつけることができます。
また、施設では同年代の方々との交流の機会も生まれます。高齢者の社会的交流は認知機能の維持に良い影響を与えることが期待できます。
夜間のみの利用でも、夕食時や就寝前のひとときに他の利用者と交流することで、社会性の維持につながります。
加えて、施設では専門スタッフに睡眠環境の整備(室温・湿度の管理、快適な寝具の準備など)を行ってもらえる場合が多いです。良質な睡眠は日中の活動力の源になり、ひいては生活全体の質の向上につながります。
ただし、施設によって一部自分で寝具を準備する必要がある場合もあるため、事前の確認が必要となります。
利用する施設の選び方と利用開始までの流れ・注意点
介護施設を選ぶ際には、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。また、利用開始までの流れや費用面についても事前に理解しておくことで、スムーズな利用につなげることができます。
夜だけ利用する介護施設選びのポイント
介護施設を選ぶ際には、以下のポイントを確認することをおすすめします。
立地とアクセス
夜間の送迎が必要になるため、自宅からのアクセスのしやすさは重要な要素です。特に公共交通機関が限られる夜間には、施設の送迎サービスがあるかどうかも確認しましょう。
夜間の人員体制
夜間のスタッフ配置は日中と比べて少なくなる傾向がありますが、適切なケアが提供できる人員体制になっているかを確認することが重要です。
特に認知症がある高齢者の場合は、夜間帯のケアの経験がある職員がいるかどうかも確認しましょう。
緊急時の対応体制
夜間の急な体調変化や緊急事態に対する対応方針や、協力医療機関との連携体制を確認しておくことが大切です。24時間対応の看護師がいる施設や、オンコール体制(呼び出し対応)がある施設だと安心です。
施設の設備
高齢者の場合、安全面への配慮が十分かどうかを確認しましょう。センサー付きのベッドや見守りカメラの設置、バリアフリー構造などの安全対策が整っているかどうかも重要なポイントです。
夜間のケア内容
就寝前の過ごし方や、夜間の排泄ケア、不眠時の対応など、具体的なケア内容について事前に確認しておくことをおすすめします。
口コミや評判
実際に利用している方々の評判や口コミは、施設選びの参考になります。地域の介護相談窓口、包括支援センターやケアマネージャーから情報を得ることも効果的です。
全国の介護サービス事業所の情報を公開しているウェブサイトもありますので、そうしたツールを活用して、施設のスタッフ数や資格保有者の割合、サービス内容などを比較検討することができます。
費用と介護保険・助成金の活用法
夜だけ介護施設を利用する際の費用は、サービスの種類や要介護度、所得などによって異なります。ここでは、主な費用と介護保険の活用方法について解説します。
介護施設の多くは介護保険が適用されます。介護保険では、原則としてサービス費用の1割から3割を自己負担します(所得に応じて変動する場合があります)。
月々の介護保険サービスの利用者負担には上限があり、上限を超えた分は「高額介護サービス費」として後から払い戻されます。世帯の所得に応じて上限額は異なりますが、この制度を活用することで負担を軽減できる場合があります。
自治体によっては、家族介護者支援として、ショートステイの利用料を助成する制度を設けているところもあります。
各自治体で独自の支援事業を行っている場合がありますので、お住まいの市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに問い合わせて確認することをおすすめします。
また、施設によっては医療費控除や障害者控除を利用できる場合があります。
特に要介護認定を受けている方は、市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」を取得することで、確定申告の際に障害者控除を受けられる可能性があります。
週に数回程度、夜間のみショートステイを利用する場合や、小規模多機能型居宅介護を利用する場合の月額自己負担額は、要介護度や利用頻度によって変動します。
どんな補助を活用する場合でも、事前に施設やケアマネージャーに相談して、具体的な費用を確認することをおすすめします。
準備と「お試し利用」で確認すべきこと
介護施設を実際に利用する前に、適切な準備と「お試し利用」を行うことで、スムーズな利用開始につなげることができます。
実際に施設を訪問し、環境や雰囲気を確認することは非常に重要です。
可能であれば、利用予定の時間帯(夕方から夜にかけて)に見学することで、実際のケアの様子や夜間の雰囲気を把握することができます。見学の際は、スタッフの対応の丁寧さも観察しましょう。
多くの施設では、本格的な利用を始める前に「お試し利用」や「体験利用」の制度を設けています。このお試し利用を通じて、要介護者が施設の環境に適応できるかどうかを確認することができます。
認知症の方の場合、環境の変化に順応するのに時間がかかることがあるため、最初は短時間から始め、本人の状態を見ながら徐々に利用時間を伸ばしていく方法が効果的です。
お試し利用の際に確認すること
夜間利用に必要な持ち物リストを事前に施設から受け取り、必要なものを準備しましょう。パジャマ、洗面用具、常用薬、おむつ(必要な場合)、お気に入りの物など本人の必要に合わせて用意していきましょう。すべての持ち物には必ず名前を記入しておきましょう。
要介護者の生活習慣や好み、特に夜間の習慣(就寝時間、排泄のタイミング、不眠時の対応方法など)について、施設のスタッフに詳しく伝えておくことが重要です。
また、緊急時の連絡先や持病の情報、服用している薬の情報なども正確に伝えておきましょう。
ケアマネージャーと相談しながら、週何回利用するか、どのような目的で利用するかなど、具体的な利用計画を立てることをおすすめします。
定期的な利用パターンを作ることで、要介護者も介護者も心理的に準備ができ、生活リズムが整いやすくなります。
利用開始後も、施設での様子や気になる点について定期的に情報交換を行いましょう。施設側からの報告だけでなく、自宅での様子も伝えることで、より安心感のあるケアにつながります。
地域包括支援センターやケアマネージャーといった専門家に相談しながら、要介護者と介護者の双方にとって最適な利用方法を見つけていきましょう。
まとめ
夜だけ介護施設を利用することは、介護の負担を軽減しながら、要介護者の生活の質を維持するための有効な選択肢です。
日中は自宅で過ごし、夜間だけ専門的なケアを受けることで、高齢者が安心して過ごすことができるだけでなく、介護者が休養する時間を確保することができます。
施設選びの際には、立地やスタッフ体制、夜間のケア内容などを十分に確認し、お試し利用を活用しながら徐々に環境に慣れていくことが大切です。
介護保険や各種助成制度を活用することで、経済的な負担も軽減できます。
無理せず介護を続けるためにも、まずは地域包括支援センターやケアマネージャーに相談し、自分たちの状況に合ったサービスを探してみることをおすすめします。