企業の5割超が「正社員不足」と回答 猛暑による労働環境悪化、熱中症対策の義務化なども影響か
帝国データバンク(東京都港区)は8月19日、「雇用過不足」に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表した。発表によると、正社員の不足を感じている企業は半数以上に上り、企業の人手不足の実態が浮き彫りとなった。
正社員不足の企業は50.8%、労働力不足の深刻さ浮き彫り
調査によると、正社員の不足を感じている企業は7月時点で50.8%に上った。7月としては3年連続で半数超となり、前年同月の51.0%から0.2ポイント低下したものの変動幅は小さく、引き続き高水準で推移。依然として「高止まり」状態が続いており、労働力不足の深刻さがうかがえる。
正社員の人手不足「建設」が68.1%でトップ 猛暑の影響も
正社員の人手不足割合を業種別にみると、「建設」が68.1%で最も高い結果となった。企業からは、以下のように出口の見えない人手不足を心配する声や、夏の猛暑が影響しているとする声があった。
・人手不足などを背景に契約不成立となるケースが増加している。求人活動は続けているものの、今後が心配(冷暖房設備工事、北海道)
・残業規制などで社員の労働時間が短縮された上に、猛暑の影響で作業効率も低下している(塗装工事、山梨県)
業種2023年7月2024年7月2025年7月建設68.3↑ 69.5↓ 68.1情報サービス74.0↓ 71.9↓ 67.6メンテナンス・警備・検査68.2↓ 65.9↑ 66.7運輸・倉庫64.3↓ 63.4↑ 63.9金融60.9↑ 61.2↓ 60.7人材派遣・紹介58.9↓ 49.4↑ 60.5家電・情報機器小売44.4↑ 52.8↑ 59.7精密機械、医療機械・器具製造56.1↓ 46.5↑ 58.6自動車・同部品小売59.5↑ 62.6↓ 56.8飲食店66.3↓ 59.8↓ 55.9
次いで「情報サービス」が67.6%。前年同月比-4.3ptと、高水準ながらやや人手不足感が和らいだ。トランプ関税の先行き不透明感から、顧客の投資意欲が低下しているとみている。
そのほか、慢性的な人手不足を背景とした倒産が相次ぐ「メンテナンス・警備・検査」(66.7%、同+0.8pt)、ドライバー不足が顕著な「運輸・倉庫」(63.9%、同+0.5pt)など、6業種が6割を上回る結果が示された。
非正社員の人手不足「人材派遣・紹介」がトップ、正社員とともに6割超
非正社員では「人材派遣・紹介」が63.3%(同+4.7pt)でトップという結果となった。これは、全国的に人手不足が深刻化する状況のなかで、派遣人材を活用して労働力を補う動きが広がっていることが要因のひとつだという。
業種2023年7月2024年7月2025年7月人材派遣・紹介65.8↓ 58.6↑ 63.3飲食店83.5↓ 67.5↓ 61.8各種商品小売56.6↑ 65.1↓ 59.7メンテナンス・警備・検査50.3↑ 55.3↓ 55.1旅館・ホテル68.1↓ 51.6↑ 51.7娯楽サービス50.0↓ 40.5↑ 47.1飲食料品小売53.6↑ 53.8↓ 42.7繊維・繊維製品・服飾品小売40.9↓ 37.1↑ 40.8運輸・倉庫38.5↓ 37.8↑ 40.4農・林・水産52.1↓ 36.9↑ 38.8
出口の見えない人手不足、スポットワークを活用する企業が増加
公共工事、都市再開発といった需要が安定している建設業界では、人手不足を感じている企業が特に多い結果となった。同社によると、これは猛暑による労働環境の悪化や、熱中症対策の義務化に伴う作業手順の見直しなどが影響していると分析している。
また、就業人口の回復に加え、「スポットワーク」の普及が、人手不足解消の鍵となるとし、スポットワークは主に小売・サービス業で拡大しており、より一層の効果が期待されるという。
同調査は7月17~31日にインターネット上で実施された。全国2万6196社を対象とし、1万626社から有効回答を得た。調査結果の詳細は公式リリースより確認できる。