能登半島地震受け津波の車避難も検証 上越市総合防災訓練 直江津区で2100人参加
新潟県上越市は2024年10月12日、能登半島地震で津波被害があった直江津区を会場に、地震による津波を想定した総合防災訓練を行った。29町内会から住民約1900人が車を使った避難や見直した避難行動計画の実効性を確認したほか、市や関係機関から約200人も参加し、避難所開設や被害状況の把握など、連携して取り組んだ。
《画像:車で指定避難所まで避難した住民(旧市立古城小学校)》
能登半島地震を受け、沿岸部の町内会で見直した津波避難行動計画や、避難行動要支援者などに限り可能とした車避難の実効性を検証するため、直江津区で実施した。内閣府の「地震・津波防災訓練」に採択され、内閣府の防災担当者も参加した。
想定は午前8時に上中越沖を震源とする地震が発生し、同市では震度6強を観測。3分後に大津波警報が発表され、地震発生から15分後に津波が到達するとした。大津波警報が防災行政無線などで知らされると、各町内が指定避難所や高台などへそれぞれ避難し、市職員や施設管理者らが避難所の開設、受け入れなど運営の手順を確認した。参加した住民1874人のうち、1818人が徒歩で、56人が車で避難し、約6割が15分以内に避難を完了した。
《画像:大津波警報を受け避難所に歩いて向かう家族(同)》
このうち津波による浸水被害があった港町1・2丁目町内会の指定避難所、旧市立古城小学校では約60人が避難し、車が5台12人だった。車と人が交わらないよう、道幅の広さや交通量を考慮して決めた経路を通り、目立った混乱は見られなかった。
《画像:中川市長(左)も車の動きなどを確認した(同)》
《画像:屋上や高層階に移動し避難を完了した(同)》
港町防災対策委員会の泉秀夫委員長(82)は「計画と違うルートを通ってきた人もいたので、周知を徹底していきたい。車の乗り降りなどで時間を縮められれば、途中で人を拾うなど助けられる人数が増えるので、今後検証して訓練を重ねたい」と話した。
陸上自衛隊高田駐屯地や上越警察署などが周辺の被害状況を確認する情報収集、海上保安庁のヘリコプターによる負傷者救助、民間企業によるドローンを使った物資運搬などの訓練も行われた。
《画像:消波ブロックで負傷した釣り人をヘリで救助した》
《画像:最大30kgを運べるドローンで物資の運搬を実演》
訓練後には住民避難訓練に参加した町内会の役員らが集まるワークショップが開かれ、新たに見つかった課題などを共有した。結果を踏まえ、必要な町内会は年度内にさらに避難計画の修正を行うとしている。
《画像:訓練で明らかになった課題などを共有したワークショップ》
中川幹太市長は「地元の皆さんの意識が高く頼もしい。これまで解消できなかった避難の仕方など、関係者で確認できて良い訓練だったと思う」と講評。また初めて取り入れた車避難については「渋滞が起こらないよう、津波が及ばない地域でも訓練して対応を学び直し、市内全域の皆さんにも知ってもらわないといけない」と述べた。